表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
387/521

迷いの森の戦い 2

「それは、天女様が持っていた物ですよね?」

お雪が握る独鈷杵を、見つめる おりん


「そうです天女様が授かった物を、今はわたしが、お預かりしています 青龍が宿っていると聞きました……」


「それは、とても心強いですね お雪ちゃん守ってくれてありがとうございます」


「はい 力が漲ってくるのが分かります天女様が守ってくださっているのですね……」


「でもね 1つわかったことがある、あの怨霊は幻覚を使うのではなく、空間を裂いて瞬間移動をしているんだね……これは厄介だね」

再び姿を消した夜叉を警戒し、忙しなく周囲に目を向ける 雪女


「はい、あの夜叉は前の戦いでも瞬間移動を使っていました でもあの時は、憑依したネボアという魔獣の能力だと聞いていたのですが……」

お雪が不思議そうに首を傾げる


「一度憑依した者の能力を取り込めるとか、そんなところだろうね〜」



「うおおぉぉぉっっ!!」

上空からの叫び声に、同時に見上げる3人

滞空していた大嶽丸が背中から蒸気をあげながら、3人のもとへ滑空してくる

地面に片膝をついた大嶽丸の背中の皮膚が焼け溶け、肉の焦げた匂いが辺りに漂う

その背中に手の平を当て、急速に冷やす事で未だに侵食している液体を凍らせる


「急に背後に現れたと思ったら、おかしな液体を吐きつけやがった!」


「これは強酸だね ただの強酸ではないよ、あんたの肉をここまで溶かすんだから、あたしらが浴びたら骨まで溶かされるね」


「叔父上、今のわたしでは、治癒魔法が使えません しばらく我慢してくださいね」


「心配するなおりん、この程度の傷など、すぐに再生してみせる」



「ふっはっはっはっ そこの女には、少々驚かされたが、我の【呪詛の滴】の味はどうだ?」

姿を見せずに、低く重厚な声だけが迷いの森に響く


「ちょうど、背中が痒かったからな 搔く手間が省けた いい加減に姿を見せたらどうだ?」


「お前たち3人が相手では、今の我では分が悪いようだ しかし約束通り呪詛を刻んだ女だけは

貰っていくとしよう」

おりんの首の黒い呪詛が蠢き、白目を剥いて苦しみだす おりん


「おりん様! しっかりして下さい!!」

おりんを奪われないようにと、背中から抱きしめる お雪


「おりんを、あんたなんかに絶対に渡さない!!」

夜叉を、おりんに近づけさせまいと、霊氷の吹雪がおりんを護る


「おりんは、俺様が守る!」

おゆきとおりんの前に立ちはだかり 大剣を構える 大嶽丸


ふいに吹き荒れていた吹雪が止み、一瞬の静寂が訪れる

何事かと雪女を見ると、地面にうずくまり立ち上がろうと必死にもがいている姿が見え

それを見た大嶽丸が助け出そうと、一歩を踏み出す


「こっちに来るんじゃない! 重力を操っているようだ……」

圧迫された肺から、必死に声を絞り出す 雪女


上空の空間が歪み、その亀裂に指を掛けた夜叉が顔を覗かせると、雪女を目掛け【呪詛の滴】を

吐きつける それと同時に大嶽丸が駆け 雪女に覆い被さるように飛ぶ

歯をくいしばり、痛みに備える大嶽丸 

“バシャッバシャッ”と大嶽丸の背中を液体が、容赦なく打ちつける


「んっ!?水!?」


「大嶽丸!狙いは、おりんだよ!」

重力から解放された雪女が、大嶽丸を払いのけようともがく


おりんとお雪の頭上の空間が割れ、枯れ木のような腕が伸びたかと思うとがっしりとおりんの腕を掴む 咄嗟に空間の裂け目に独鈷杵を突き立てようと右手を振り上げる お雪

しかし夜叉の左手が、その腕を掴み 振り上げた反動を利用して裂け目へと引き上げられる

あっという間もなく、上半身を引きずり込まれたお雪の足に必死にすがりつく おりん

助けようと、駆け寄る大嶽丸と雪女


「その手を離さねば、閉じた空間でこの娘が切断されることになるぞ 良いのか?」

その言葉を聞き、咄嗟に手を離す おりん

音もなく閉じる 空間の裂け目…… 迷いの森に、いつもの静寂が戻る

地の底から聞こえてくるような声 “我の狙いは、はじめからこの娘の方だったのだ この国に地獄を見せてやろう!”


「お雪ちゃんーーーー!!!!!」

おりんの絶叫がこだまする



いいね!やブックマーク&評価などして下さると嬉しいですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ