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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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迷いの森の戦い

夜明け前から降り出した雨が、しとしとと木々を濡らす

おりんを囲むように先頭に大嶽丸、おりんの左右にお雪と雪女こと白馬御前が並ぶ

3日前と同じように迷いの森の中ほどで、崇徳天皇の怨霊を待ち構える


「来ました……」

お雪がぼそりっとつぶやく、と同時に身構える4人


背の高い樹の枝葉を揺らし、瘴気に覆われた夜叉が、4人の頭上で、まるで値踏みでもするかのようにゆらゆらと周回する


「鬼神よ 見直したぞ 下級な妖怪でも連れてくるのではないかと心配していたが、天界を追われ鬼女となり、その後に雪女となった御前を連れて来るとわな 遠慮なく頂くとするか」

輪郭のぼやけた夜叉が、白馬御前の頭上で滞空している


「ずいぶんと詳しいようだけどね あんたの依り代になど死んでもならないよ!!」

雪女の足元から渦を巻き、猛烈な吹雪が上空に向かい、轟々と立ち昇る

周辺の枝葉を巻き込み、螺旋を描きながら夜叉へと襲い掛かる


「どんな霊体だろうが、あたしの霊氷に触れたら、ただでは済まないんだよ」

真っ白な霊氷の竜巻となったうねりが、夜叉の瘴気を凍りつかせ“ぼとぼと”と黒い氷柱つららとなり地表に突き刺さる


「白馬御前様!凄いです!このまま押し切れるのでは?」

吹き付ける強風から、おりんを守りながら、お雪が声を張り上げる


「どうやら、瘴気を払うだけで精一杯のようだね お雪!おりんは任せたよ!」

“ふぅっ”という雪女の吐息が、一瞬で雨粒を凍らせ無数の鋭い氷柱が、夜叉へと突き進む

次々と夜叉の纏った襤褸ぼろを貫いていく


「雪女の本気の攻撃は、これほどのものだとはな……その力を我の物に出来るのだから、妖狐の息の根を止めるのも容易かろう」

にたにたっと笑顔を浮かべた醜悪な顔が、雪女の眼前に一瞬で現れる

咄嗟に背後へと飛び退りながら、吐息をはき夜叉の顔面に霊氷の氷柱を飛ばすが、すでに夜叉の姿はかき消え 虚空へと消えていく氷柱


「幻術? そんな事ができる怨霊は初めて見たよ 岩石鬼!これを受け取りな!!」

自分の手に吐息を吹きかけ創り出した大剣を大嶽丸へ投げ渡す


「奴には、物理攻撃は効かないんだよ! 雷撃も素通りしちまうんだ!」


「それは、あたしの霊氷でできた大剣だよ 葬ることはできなくとも嫌がるはずだから振るってごらん」


「叔父上!その剣にこの護符を貼って攻撃して下さい 鎮魂符です 動きを止めるくらいなら

できるはずです!」


「おおっ!わかった2人とも俺様に任せておけ!!」

両刃の大剣に護符を貼り付け、鬼神の覇気を纏わせた大嶽丸が吠える

“うおおおおぉぉっぉぉぉぉっ!!!” 雨に濡れた木々が震え、雨粒が空中へと投げ出される

雪女の攻撃を警戒しているのか、姿を潜めた夜叉を探し、鬼神の覇気を纏わせたまま飛び立つ


辺りが静まり返る 雨が枝葉を打つ音だけが、やけに大きく聞こえてくる


上空から目を凝らす 大嶽丸


お雪とおりんの前方で、氷の結界を張り隙間無く周囲を警戒する 白馬御前


おりんを背中に隠すように立つお雪の後方で、わずかな空間の揺らぎが見える

その刹那、空間の裂け目から夜叉の痩せ細った腕がするするっと伸びる 

おりんの襟首を掴もうと開いた手の平が、空を切る と同時におりんを引き寄せ、体を入れ替えたお雪が、軽やかな足捌きで体を2回捻り腰を落とすと、空間の裂け目に向かい渾身の裏拳を

“バッチィィィィンンンンッ”と夜叉の鼻先へとめり込ませる


“グホッ” そう叫ぶと裂け目の中へと消えていく 夜叉


「えっと?当たりました?」

自分の拳をまじまじと見つめる お雪


「お雪ちゃん、その手に持っているのは?」

おりんが、お雪の手を指さす


「あっ……これは、晴明神社で預かった独鈷杵です」



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