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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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お雪と大嶽丸

外に出て最初に出会った妖怪を捕まえると言って、外に出たものの……

鬼神といえども、人間と同様になんの目的も無く徘徊するという行為は、意外に難しい

気配探知が得意でない大嶽丸に探知されるような妖怪は、下位の妖怪か半妖であろう

上位の妖怪であれば、大嶽丸が探知するよりも前に相手が探知するので逃げられる……

もしも逃げない妖怪がいたとするならば、大嶽丸に勝つ自信のある実力者ということになる

つまりこの作戦は、気配を消す事も得意ではない大嶽丸にとっては、とてつもなく難しいのだ

それに気づかない大嶽丸は、鈴鹿城を中心にして輪を描くように飛んでみる 

ここに近づいてくる妖怪など居るはずもないので、森に住む動物たちの気配のみを捉える


“ふんっ”と鼻を鳴らし、さらに捜索範囲を広げて飛んでみる


鈴鹿山脈の紅葉は、その色を失い 山の斜面は茶色や灰色が目立つようになっている

冷たい空気が頬をなで、大気は透きとおり遠くの山の稜線までがくっきりと見える

このくらいの温度差を肌で感じることの無い大嶽丸だが、冬の到来を感じることは出来た


“バッチンーッ” そこに猛烈な速度で石礫が大嶽丸の臀部に直撃する

大型の鳥でも当たったのかと、自分の尻を撫で、下を見るが落ちていく鳥など居ない

はて?高空を飛ぶ、大嶽丸に何かを当てられる者など居るはずもない……などと考えていると

真下から、拳ほどの石が大嶽丸の顔面に向けて飛んでくるではないか!

慌ててそれを避け、戦闘態勢にはいった大嶽丸は、石の発射地点に向け頭から急降下していく

「これは、人間の仕業などではない、上位の妖怪が俺様の気配を察知して攻撃してきたに違いない! 悪いが贄となってもらうぞ!! がっはっはっはっは〜」

このような真似が出来るのは、天狗か? あるいは鬼か? まぁどちらでもよい!


“ど~~んっ”山の斜面に勢いよく着地するとそこには、人間の小柄な巫女の女が立っているではないか……


「お久しぶりです 大嶽丸様」


「ん? 確かお前はお雪だったな?なぜこんな所に?誰か物の怪でも連れてきているのか?」

自分の尻に石をぶつけた犯人を探して“キョロキョロッ”と辺りを見渡す


「いえ 一人ですけど? もしかしてお尻、痛かったですか? すいません!いくら呼んでも気づいてくれないので」


「いやいや お雪よ、お前のその細っこい腕で、あそこを飛んでいる俺様の尻に石をぶつけたというのか? その前にどうやって俺様を見つけた?」


「それは気配探知で……大嶽丸様の気配はダダ漏れですから国境からでも分かりますよ 

あとわたし、こう見えても強いんです ふっふっふっ」

そう言いながら、傍らにある岩を拳を当て、気を流し込むだけで粉砕してみせる


「お雪よ!お前は人間ではなかったのか!?」

目を丸くして、お雪の拳を見る


「人間ですよっ! わたしは天女様に直々に力を授けて頂いたのです!! それが年々、力が増している気がして……これでは益々お嫁にいけません……」


「そうなのか……あの連中の中で目立たなかったので気づかなかったが、お前もとんでも無い

力を持っていたのだな」

お雪の頭から爪先まで、じっくりと魔力の探知をしてみる大嶽丸


「そんな事よりも、おりん様は大丈夫なのですか?この辺りで不吉な瘴気を感じて、おりん様に何かあったのかと飛んできたのですが!」


「おりんは今、少々厄介な事になっていてな……ん? お雪、飛んできたと言ったが、奴が現れたのは3,4時間前だぞ? どこから飛んできたのだ?」


「えっ? 京の都からですが、急いで来ましたから…… 飛んでと言っても、空を飛んだわけでは無いですよ」


「もういい お雪よ、お前も人間を捨てたわけだな……」

腕を組み、感慨深げに言い捨てる 大嶽丸


「いえ 捨ててなどいません まだお嫁にも行ってませんし」

半べそをかきながら抗議する お雪



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