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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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大嶽丸の憂鬱

人型に変幻している大嶽丸が、鈴鹿城内の居間を、まるで熊のように“のっしのっし”と歩き回る

腕を組み、自分の爪先だけを凝視するように見つめ

籘を編んで作った、大型の椅子に“ドサリッ”と座る 両膝に肘をつき 握った拳骨の上に顎を置く


「どうしたものか……」

そう一言呟き深い物思いへと入る

ー『俺様には、父や母と呼べるものは居ない 人間でいう家族という者が、もしも居るのならば それは、おりんとおりんの母親である鈴鹿御前に、あとは姉さんだけだろう 

おりんの父親である田村丸は断じて家族ではないが、俺様の知り合いの末席くらいには置いてやる おりんが産まれてしばらくすると田村丸は死んだ 人間の寿命というものは、あまりに短く儚いものだと、あの時に初めて知った それまで数々の人間の命をまるで、蟻を踏み潰すように奪ってきた俺様だが、鈴鹿御前に出会い、田村丸とおりんの側に居たせいか人間の命を奪う事が、俺様の中で禁忌となった。

それどころか、旅人の旅の安全を祈り、時には遭難した者を助けもした

ん? 今は昔の事を思い出している場合じゃない!

九尾の姉さんによく言われたもんだ 「あんたは、よく考えてから喋りな!!」とか「よく考えてから動きな!!」と……あの時は、姉さんは何を言っているのだろう?と思ったものだが、どうやら俺様は考えるという事が苦手なようだ』ー


両の手の平で、両頬を“パチンッ”と叩き 気合を入れる


ー『苦手などと言っている場合ではない! 鈴鹿御前が天界に帰った時以上の危機に直面しているのだ そう……あの時は、下界での務めを終え 天界に戻らなければ鈴鹿御前の存在そのものが消滅するというギリギリの時期だというのに、人間の血が混じっているために天界に昇れないおりんを連れて帰れないのならば、自分は天界には帰らないと言い続ける鈴鹿御前に俺様は数年を掛けて説得し続けたのだ。

「この地の平穏は、俺様とおりんで守り続ける」 「何があっても、おりんは俺様が必ず守るから心配するな」と……鈴鹿御前の存在が半分消えかかった頃、人間の子供で言うと5歳ほどになったおりんが母親である鈴鹿御前に言った「おりんは、お母さんが大好きだよ でも叔父ちゃんの事も大好きだから……お母さんが天界に帰っても大丈夫だよ」必死に涙をこらえるおりん

存在が消えるという事は、おりんや俺様の記憶からも鈴鹿御前が存在したという記憶が消える

その事を幼いおりんは理解しており、おりんから母親の記憶が無くなるよりも、おりんを置いて天界へ帰ることをようやく決心した 鈴鹿御前……

ん? また昔の事を思い出している? 俺様の頭は、考えるという事が出来ないのか? 馬鹿なのか?』ー


天井を見上げ、“ぷっはー”と大きく息を吐きだすと、天井に届くほどの伸びをし

「考えるのは、誰かに任した!! 俺様は俺様の出来る事をしよう!!」

大きすぎる独り言を叫ぶ 大嶽丸


「妖怪か〜 長良川辺りで、河童を捕まえてくるか? 最弱の半妖では、満足せずにまたおりんに取り憑かれても困るな……

鞍馬山まで行って、天狗でどうだ? でもあそこの大天狗を怒らせるのは……

そういえば、伊吹山に酒吞童子が住み着いて居るようだな いや酒吞童子にあの怨霊が取り憑いたら俺様の手に負えなくなるぞ? あ~~~」

独り言を言いながら、部屋の中をぐるぐると回り、頭を掻きむしる 大嶽丸


「よし 今から外に出て、一番最初に出会った妖怪か半妖にしよう! うん名案だ!!」

考える事を放棄した大嶽丸は、意気揚々と鈴鹿城を飛び出していくのだった


毎日、リアクションをして下さる 方々 本当にありがとうございますm(_ _)m 励みになります

同時に連載しています「エヴァの事件録·黒猫の呪い」というミステリーですが、あと2話ほどで完結となります

お時間がある時に読んで下さると嬉しいです

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