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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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お雪の憂鬱

京の堀川通りから、西に入ると陰陽道の象徴的な存在、安倍晴明を祀る晴明神社が楼門を構える

今日も朝から宮司の安部清親が、竹箒を手に鳥居から表参道を清める


「宮司様、そんな事はわたしがしますから お勤めの方をお願いしますと、いつも言ってますよね?」


「おはようございます お雪さん お気遣いありがとうございます。しかしわたしは、こうして道行く人々を眺めるのが好きなのです」

人の良さそうな笑みを浮かべる 安倍清親


「それでしたら、掃除はわたしがしますから、宮司様は座って道行く人を眺めていてください」

竹箒を取り上げようと、手を伸ばす お雪


「お雪さんには、力仕事をやってもらっていますからね 男10人でも動かせなかった庭石を移動してもらったり、台風で崩れた石段も1日で直してくださいましたし、裏山の倒木まですべて薪にしていただいて、本当に助かっています ですから、こんな誰にでもできる仕事は我々にお任せください」


「これほど長い間、居候させていただいているのですから当然です」

お雪は、エヴァたちが異世界へと戻ってから、天武のみんなや武田信玄らの誘いを断り

日の本の隅々を旅して回り、3年ほど前からエヴァと縁のある、この晴明神社に身を寄せていた

なぜなら、エヴァたちが居なくなると同時に天武の子供たちみんなの魔力も精霊も消えてしまったのだ ところがお雪の精霊ヴァルキュリアは消えてしまったのだが、エヴァから直接授かった

眷属の契りで得た力と、常時発動スキル[戦乙女]の効果はそのまま残ってしまったのだ

自分だけが力を失っていないと言い出しにくくなったお雪は、エヴァを失った喪失感もあり

日の本を巡る旅をしようと思い立ったわけである


「この国は、天女様やお雪さん達に救われたのですよ なんの遠慮などする必要もありません 好きなだけ居てくださって結構なのですよ そうだ天女様が戻られるまで居てください」


「宮司様……天女様が居なくなって、もうすぐ10年になるんですよ おそらく何か事情があって戻れないのでしょう、わたしは今まで天女様を待ち続けていましたが、そろそろ自分のこれからを考えなければいけませんよね?もう遅い気もしますが……お嫁に行ったり、子を授かったり」

深い溜息をつく お雪


「ここで巫女になるというのは如何ですか?」


「有り難いのですが、わたしは天女様に出会うまで女忍者をしていた卑しい身なのです 神事に関わるわけには参りません」


お雪と安倍清親が鳥居の前で話していると、権宮司である安倍晴治が近付いて来る


「宮司様、昨日話した神輿庫しんよこの掃除なのですが、神輿を出すのに男手が足りないものですから門前町で若い方を募ろうと思うのですが、よろしいでしょうか?」


「そうですね それでしたら酒屋の山本屋さんが棚卸しで大勢集まっていますから ちょっと手を貸していただけるようにお願いしたらどうでしょう?」

山本屋の方角を指差す 安倍清親


「あぁ それでしたら、わたしが出しますから 大丈夫ですよ」

すたすたと拝殿横にある神輿庫に向けて歩き出す お雪



「じゃあ わたしが持ち上げますから、その隙に神輿下駄を外に出してもらえますか」

そう言うと、神輿の下に潜り込み 軽々と肩に担ぐ 4人の男衆が慌てて2つの神輿下駄を順番に出し、神輿庫の前に組み立てると、傷などつけないように慎重に神輿を下駄に乗せる

“男6人でやっと持ち上がる神輿を!?” “おおぉっ”とどよめきが起こる


「本当にお雪様は、1人で神輿を担いでしまうのですね~」

権宮司の安倍清治が目を丸くする


「天女様にいただいた加護のおかげなんですけど……こんな馬鹿力女じゃあ嫁の貰い手があるわけないですよね〜」

再び深い溜息をつく お雪





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