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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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猿飛仁助 2

「はい わたしは、父·朝倉義景のため、この越前のためにわたしと共に戦ってくれる者を探しています」

その眼を逸らすことなく、見つめ返す 信景


「戦う?何と戦うと申されるのです? この国は、武田が治めるようになって10年あまり戦どころか百姓一揆も起きておりませんぞ」


「はい それは承知しています しかし有事の備えは必要ですし、平和の上に胡座をかいているのは愚か者のする事かと? その証拠に佐助殿も才蔵殿も鍛錬を怠っておりませんね

この山崎長徳とて、いつ起こるかわからぬ有事に備え日々の鍛錬を怠っておりませんから」


「我らは、若様のお父上から港の治安と海運の護衛を任されておりますゆえ、鍛錬は怠りませんし、日々 あらたな技の研究にも抜かりはございません ただ若様の本意は別にあるように見受けますが?」

それまで丸まっていた背をぴんっと伸ばし、信景と対峙する 仁助


「わたしは生まれてから、この越前を出た事がありません 越前の外の人間と話したことさえないのです この日の本を治める武田信玄という人物が、我が父·朝倉義景よりも優れた人物なのか見極めたいと思っております」

まるで戦いに臨むかのように絡み合う 2人の視線


「その結果、大殿様よりも劣っていると判断された場合は、どうされるのですか?」


「我が父の願いを叶えたいと思っております」

その言葉を聞いた 猿飛仁助の双眸が柔らぐ


「我らは、織田がこの世から消滅し、行き場を無くしていた所を若様の父上に拾っていただき

仕事までいただいた身 朝倉が武田に取って代わろうというのは、痛快な話ではありますが

武田は強いですぞ しかも若様はまだ幼い、もし武田信玄が亡き後の天下を取るというのなら

若様の才覚であれば、それも容易いように、この爺の目にも見えますが」


「わたしは、わたしのための天下など欲しくはないのです」


「爺 俺は、この若様が好きだぞ」


「猿は黙っていろ!と言いたいが、この若様は強く賢い 仕えるのならば、異存はない」

佐助と才蔵のこの言葉に胸が熱くなる 信景


「信景様 せっかくこのような所に足を運んで頂いたのですから 少し遊んでいかれますか?」

総髪を後頭部でまとめ紐を取り出し結う 仁助


「そういうことでしたら、拙者がお相手いたしましょう お借りしてもよろしいでしょうか

それでどちらが相手をしてくれるのでしょう?」

信景の後ろに控えていた山崎長徳が立ち上がり、壁に掛けられた木刀を指差す


「わしがお相手いたしましょう その短槍を使っていただいても構いませんが」

杖を床にトンッと突き立て まるで浮き上がるように右脚一本で立つ 猿飛仁助


「御老体 拙者は不器用なもので、加減というものを出来ぬのですが」


「長徳殿 油断してはなりません 仁助殿は怖いですよ」

道場の中央を空けるために立ち上がった信景が、すれ違いざまに長徳に耳打ちをする 


「怖い?強いではなく怖いのですか?」

その問いかけに、頷いて返す 信景


壁から長めの木刀を取り、右手一本で振り下ろしてみる “ブンッ”と風を斬る音が、長徳の

腕前が見せかけだけではない事を物語る


「では、わしはこれでお相手いたそう」

人懐っこい笑みを浮かべ 右手に持つ数本の楊枝を扇のように開いて見せる


「御老体 木刀と言えども怪我ですまない事もありますが?」


「お侍さん その爺を殺せるものなら殺して構わないぞ 俺もいつも殺すつもりで死合うんだけど触れもしないからな」

信景と並んで座り 軽口をたたく佐助に、その横でうんうんと頷く才蔵


「ふおっふおっふぉっ お前たちは少し老人を敬うという事を覚えたほうが良いな」


「では参ります!」

この時の山崎長徳は軽く一本を入れ、早々に終わらせ 佐助か才蔵と立ち会ってみたいと考えていたのだが……




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