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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
367/519

越前の未来

遅くなりましたm(_ _)m

それからのネボアは、生母へのこだわりも捨て 父·朝倉義景のために生きる事に執着する

父上の望む強く豊かな国、朝倉家を朝廷に認めさせる事 それだけが信景とネボアの望みとなる


それからのネボアは、領内の要職に就く人物、農村集落の長、技術職の親方などに憑依をし

これまで様々な職種の人間に憑依してきて得た、莫大な知識を惜しげもなく分け与える事により

朝倉家への忠誠心を持つ家臣が増え、汚職に走る役人を駆逐し、農業の生産量は増え、鉄鋼や造船の技術も飛躍的に向上した

それに伴い朝廷への献金も大幅に増え、朝倉家の権威も増すことになる


そんな領内の変化に、朝倉義景も少なからず刺激を受け始めていく 幕府や朝廷への恨み言も徐々に減っていき精力的に内政をこなすようになる 無駄な祭事や華族の真似事に出費する事もなく 家臣や領民の言葉にも耳を傾けるようになり、もともと堅調であった越前の経済もさらに潤いだしていく

これには、相変わらず毎晩のように信景の元に通う朝倉義景が、信景との会話の中で自分でも気づかぬうちに執政の手解きを受けていたのだ、憑依することなく父·義景との会話の中で刷り込むように繰り返してきた結果が実を結ぼうとしていた


そして信景が9歳の誕生日を迎えた夜 いつものように信景と膝を突き合わせ 盃を傾ける

「信景 お前の兄たち、阿君丸も愛王丸も9歳を迎える事なく、この世を去った 我家の呪いかと思った時もあったが、無事に9歳を迎えてくれて父は感無量だ 今夜は久しぶりに飲むぞ!」

ネボアと融合した信景は生まれてから、ただの一度も病気をした事もなく 打撲や切り傷程度であれば、誰にも気付かれることなく瞬時に治癒していた


「そうじゃ大事な事を忘れていた 静岡から文が届いてな 来年の四月に徳川家康の十回忌を

行うそうだ わしは奴らの顔など見たくもないからな お前がわしの名代として行ってみるか? 信景、お前ならどこに出しても恥ずかしくない教養も身に着けている、顔を売っておくのも損にはならんだろう」

信景が一つ歳を取るたびに、父·義景の話し方がまるで友達と話しているかのように崩れていく

信景を大人だと認めてのことなのか? あるいは単に父が老いてきたという事なのだろうか?

何を成すにしても急がねばならないだろう 心に刻むネボアだった


「喜んで 朝倉家の嫡男として恥ずかしくないよう父上の名代を立派に務めて参ります」

この時、ネボアの中である秘め事が芽生え始めた

ー『徳川家康の十回忌となれば、国中の主要な人物が集まるであろう』ー


「うんうん 立派になったな 父はお前のことは何も心配していないぞ」

酒に弱くなってきた義景が、何度も頷きながら うっすらと涙さえ浮かべる


「父上、一つお願いがございます」


「なんだ、なんでも言ってみろ」


「武芸と兵法の勉強をしたいと思っております 9歳の祝いにわたしに家来を持たせては頂けないでしょうか?」


「武芸と兵法か……しかし信景よ これからは武力の時代ではないぞ 頭の時代だ」

そう言い、自分の頭をコツコツっと指で叩く 義景


「はい それは心得ております ただ自衛を怠るわけには参りませんし、他国の情報収集のためにも影で動ける者は必要かと」


「忍びか…… お前がそこまで言うのであれば、確か景鏡のところに忍びの者を預けてあったな、名は確か猿飛仁助といったかな、その者らで良ければ一度あってみればよい」


「ありがとうございます 叔父上の所ですね さっそく近日中に会ってみたいと思います」



そして数日後 11月に入り雪が積もり始めた一乗谷を数名の供とお里を連れた信景が、景鏡の屋敷へと向かい、あらかじめ呼び出していた猿飛仁助という人物と対面する



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