織田信長
羽柴秀吉は、もちろん豊臣秀吉ですが 天下人になっての豊臣ですからね
岐阜城 天守閣 西洋の豪奢な椅子に腰掛け 一人佇む
この城の城主 織田信長 話す相手は居ない 目を閉じ
先程からボソボソとなにやら独り言を呟く
「あれは不味かった しかし正月早々 家康めが家臣のいる前で武田信玄に降伏しろは、さすがに看過できんだろ?
こっちは平手汎秀を討たれて日も浅いのに
思わず抜いてしもうたものな。。。
家康の落ち着き払った顔を見たら さらに血が上って
もうどうにでもなれって。。。
光秀も秀吉もすぐ隣りにいたんだから止めるだろ?
もし止めてくれてたら 上手いこと芝居して切らなかったよ
普段から 自分の意に背くものを悉く粛清してきたツケだな
俺に意見するのも命がけじゃあ 止めないよな〜
さらに悪いことに天下布武の旗印に包んで送り返せって!
もう言い訳もできないし。。。本当に包んでたときには、言いたかったよ やっぱ それは、やめようって。。。。
言えないよな〜
一応 念の為くっついてきた従者たちは、それなりの待遇で軟禁して情報を聞き出してはいるが
三方ヶ原では。うちと徳川の死傷者2000に対して武田軍200って、おかしいだろ? しかも負傷者のすべてがその日のうちに回復してピンピンしてるとか
なんの冗談なんだか知らないが、三方ヶ原に天女と龍神殺しが
降臨して武田に助力を約束したとか
徳川の縁故の者たち全てが武田に付くとか あと北条もいるのか
もう 何がなんだか 信玄が重い病だと乱波(ラッパ、忍者)
から聞いていたのに 天女の奇跡に触れ全快だと!?
龍神殺しにいたっては、30分で浜松城の500もの兵を殲滅し
あの本多忠勝を秒殺って 本当なら笑うしかないよな
桶狭間以上の危機なのは、間違いないな
あの時は、2千対2万5千でやけくそで突っ込んで、油断していた今川義元の首を取れたけど 武田信玄は油断しないだろうし
そもそも浅井長政が裏切ったのが痛い おかげで比叡山を焼くことになったのも浅井さえ裏切らなければ、逆上して焼き討ちなどしなかったのに 可愛い妹をやったのに裏切るとか。。。
悪いといえば、将軍義昭公な 京まで連れて行って
誰が将軍に就かせてやったと!? 俺の手のひらで踊っていればいいものを、調子に乗って信長を討てって書状をアチラコチラの 武将に送るか? 領土も兵も居ないのに おかしいだろ?
おとなしく傀儡となって、将軍の座に胡座をかいていれば良いものを 京より追放だな
いかんいかん 愚痴ばかりになっているな
で? 現状は、岡崎城に武田、徳川が集結していると
なになに? その数1万3千と。。。思ったより少ないな?
あそこからだと。。。水野信元のところは、守りきれんか
徳川縁故のものが多くて、何が起こるかわからん
佐久間信盛の鳴海城で迎え撃つのが得策か?
いやいや 築田広正の沓掛城を見殺しにはできんだろう?
佐治の大野城に先に行ってくれたら、時間稼ぎは出来るな。。
おお そうだ対武田に用意していた 鉄砲をすべて持たせよう
練度に少々不安があるが、背に腹は変えられん
さて今日も織田信長を演るか!」
おもむろに立ち上がり 両頬をバシンっと叩いて気合を入れる
ビードロ製の呼び鈴を振りならし
「蘭丸! 蘭丸はおるか!!」階下に向かい叫ぶ
「殿 お呼びでしょうか?」階下で待機していたのだろう
「ふむ 羽柴秀吉と柴田勝家、あと明智光秀を呼べ」
「はっ ただちに」一礼すると脱兎のごとく駆けてゆく
「殿 お待たせ致しました 3人をお連れしました」
「ふむ 柴田よ、お主のところから兵を1万と前田利家を出せ 羽柴秀吉 お主のところも1万
お主が、総大将で前田利家を副大将だ 合わせて2万の兵と岐阜城にいる鉄砲隊を全てをお前に預ける それらを連れて鳴海城へ行き 佐久間信盛と共に武田を迎え撃て それと、すぐに早馬を出し沓掛城の築田広正に城を捨て鳴海城に合流するよう この文と口頭で伝えよ 武田、徳川連合軍で1万3千と見ているが 勝てるか?」
威風堂々 流れるように指示を出す そこには迷いも躊躇も一切が感じられない
「はっ 必ずや殿のご期待に添える働きを! 勝ってみせまする!」卑屈なまでに額を床に擦り付ける 羽柴秀吉
「ふむ 励め!」 「はっは〜」さらに額を擦り付ける
「そして柴田は、朝倉を 光秀は浅井をそれぞれ牽制せよ 決して武田に通じさせぬようにな」
「「はっ 畏まりました」」
「励め!!」それだけを言うと 赤いマントを翻し奥の間へと消える




