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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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アナムネシスとエラド

日の本の庭園を模して作られた庭のベンチに腰掛ける エヴァとブルート、アラン


「エヴァが2人目の子供を妊娠するとわ…エルフ族は子供を授かりにくいと聞いていたが

もしかしたら頻度の問題なのか? エルフ族がそもそも非常に淡白で、その行為を行う事が稀で

子供を授かり難かったのでは?」

この世界に戻ってから習得した空間収納よりペンとメモ帳を取り出し、何やら書きだすブルート

「つまり妊娠し難いのではなく、部族的に例えば獣人のように年に数回しか発情しないとか?

しかもそれが男性主導で女性の排卵日を無視している…これは研究してみる価値がある案件ではあるな」

突然、探究心に火が点いたブルートが1人でブツブツと言い始める

「ところでエヴァ、君と忠勝君との頻度の……モゴモゴッ」

慌ててブルートの口を塞ぐ アラン 


ブルートの話は聞こえていたのだが、聞こえないフリをし、1人頬を染める エヴァ


“カンッ!カンッ!カンッ! バッシ!ドカッ!カンッ!カンッ!痛っ!!ドカッ!カンッ!カンッ!”

ドーム中央より絶え間なく聞こえてくる 剣戟が打ち合わされる鋭い音

両手にクナイを持ったルイとピュンピュン竹を持ったイノリが、ドーム内をところ狭しと

飛び、跳ね、潜り、駆け回る

「アッハッハッハッハ〜ハ〜 ルイ先生! 楽しいですね〜!」

「楽しいけど……イノリ 頭頂部から血が出てるぞ!? クナイを避け損なっただろう?」

頭頂部から流れ出た血で、顔の半分を染めながらもアッハッハッハ〜と高笑いを飛ばしながら

迫ってくるイノリに、久々に恐怖というものを感じる ルイだった

「違います! ピュンピュン竹が直撃しました アッハッハッハ〜 クナイを弾いた時にピュンピュン竹の軌道が変わるのを読みきれませんでした まだまだですね〜」

黙って見守っていた忠勝が、瞬間移動でイノリの背後に現れるとルイに向かって加速している

その背中を抱きかかえる

「母様に治してもらうぞ」

「そうだな イノリ少し休憩だ」

子供が怪我をしたというのに、呑気に思える大人たちの対応だが、このダンジョンに理由がある

どんな大怪我を負っても、致命傷を負っても、戦闘不能に陥っても 忠勝の生み出したモンスター以外の者たちは死なないのだ その理由というのが、この世界に戻ると同時に白魔術師としてのレベルが神域まで達したエヴァのオーラが

ダンジョン全域に影響を及ぼし軽傷であれば瞬時に、重傷であっても数時間で回復してしまう

そのためここが“殺さずのダンジョン”と呼ばれるようになった由縁である

サランドル·ダンジョンを管理するサランジのギルドが王国内でも、レベルの高い冒険者数を誇るようになったのもギルドマスターであるアランの手腕と”殺さずのダンジョン”のおかげであった



「ところでエヴァ、忠勝 俺たちが今日来たのは、イノリの1stアナムネシスの事だ

お前たちから切り出すのを待っていたんだが、その気配もないからな こっちから来た訳だが

それで? エラドはどうするつもりなんだ!?」

詰め寄るように身を乗り出し、聞いてくる ルイ

「アナムネシス? エラド? いったい何の話をしているのでしょう?」

忠勝がエヴァの顔を見て、不思議そうに尋ねる

「この世界の住人は、7歳と15歳になると統一神ルミエル様からジョブを授かるのです

7歳が1stアナムネシス 15歳が2ndアナムネシスといい、わたしの場合ですと1stアナムネシスで魔術師を授かり 2ndアナムネシスで白魔術師を授かったわけです つまり1stアナムネシスで大別されて、2ndアナムネシスで細分化されると思えば解りやすいです」

「ほ〜 神託が降るというわけですか……つまり7歳で料理人と言われ、15歳で菓子職人と言われるようなものですな……ではエラドというのは?」

「エラドというのは、旦那様の世界で言うと後見人や保護者と言えば良いのでしょうか?

両親と共に子供が成人するまでの養育に責任を持つという役割です

極端に言えば、両親が死んだ場合は自分の子供として育てるのは当然ですし 逆に言えば

エラドになった保護者が何らかの理由で困窮していた場合は、その子供が助けねばなりません

そして1stアナムネシスの儀式でエラドになるという事をルミエル様に誓うのです」

「それは重要な儀式なのですね…… なぜ今まで相談してくれなかったのですか?」

「旦那様は敬虔な仏教徒のようですし、なんとなく宗教的な話しは後回しにしてしまい

それに、あちらの世界で身籠ったイノリにもルミエル様のアナムネシスを授かるのか不明なものですから 判明してからでも良いかなと」

「なるほど、理解しました」


「長い説明が終わったようだが、イノリのエラドは、どうするんだ? 俺に任せるのが一番だと思うぞ!」 ドンッと胸を叩く ルイ

「いや そこは、経済的にも余裕のある僕の所のほうが賢明だと思うよ 何でも買ってあげるしね」 イノリの手を取り 買収に掛かる ブルート

「………………………妻帯者の…………………俺が………………適任…………………」

そうアランは5年ほど前に結婚していたのだ、名前はジェニファーというのだが どうやって口説き どうやって結婚までたどり着いたのか ギルドの七不思議の一つと言われている




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