イノリという幼女
明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
そしてその頃のサランドル·ダンジョン最下層 ボス部屋
「旦那様 ご飯ですよ〜」
「はい すぐに参ります」
ボス部屋の最奥に大天狗である本多忠勝の住居がある 今日のように挑戦者が挑んできた場合は
結界魔法で隠蔽するが、この10年余りで挑戦者はわずか2組であり
実質、直径50mのドームは本多家の庭となっている
2階建ての住居は、日の本に居た時の天女御殿を倣って造られ 魚が泳ぐ池もあり、ダンジョン内だというのに外と同じように太陽が差し込み 雨も降る
これがどういう仕組みなのかを雇用主である古龍様に聞いたのだが「知らぬ」と言うのだから
そうなのだろう……
とにかく ここの元の住人であるベヒーモスを屠った我々に古龍様から依頼された仕事がサランドル·ダンジョンのボス部屋とダンジョンの管理であり 我々には拒否権など無かったのだが
まさに住めば都 転移魔法陣で自由に外出もでき、ダンジョン内のモンスターの肉は食い放題
いつでも新鮮な水が湧き野菜も収穫でき、なんと言っても家賃が無料!
いつでも愛する妻や娘と居る事ができる生活
まぁ それはもう幸せである………忠勝はこの上ない幸せを謳歌していた
大天狗から忠勝へと戻り、食堂のテーブルに着く
「手間取ってしまいました 食事が遅くなってしまい面目ない」
おひつからご飯をよそい、忠勝の前に置く エヴァ
「手間取ってなどは、いなかったではないですか? 楽しそうに稽古をつけていたように見えましたけど? 彼らは見どころがあったようですね…」
「久し振りの挑戦者ということで、少しはしゃいでしまったのかもしれません 5年後にまた来てくれるか 楽しみです」
「女の子も可愛かったですしね?」
忠勝の顎についた飯粒を指で摘み 自分の口に運ぶ エヴァ
「ええ どこか貴女に似ていましたね……でも可愛さでは足元にも及びませんが」
「何を言うのですか 子持ちで2人目がお腹にいるおばさんを捕まえて ふふっ」
「可愛さでも、美しさでも、華麗さでも、お淑やかさでもすべての女性を褒める形容詞で
貴女に勝てる人など居ません」
本多忠勝が10年の間にもっとも成長したのが、恥ずかしがらずに思った事は言うという点だろう
「正直さで、旦那様に勝てる人もいませんわね」
「ところでイノリは、もう寝たのですか?」
「それが、旦那様の戦いを見ていて試したい事があると言って烏天狗の所に行きました……
迷惑を掛けていなければ良いのですが……」
30階の階層ボスが3匹の烏天狗であり、エヴァと忠勝の娘であるイノリの武術の先生でもある
そしてダンジョンの管理というのが、忠勝の有り余った神通力をダンジョン核を通す事により
随時モンスターを生み出し 浅い階層では、初心者のレベル上げ用にゴブリンやスライムや河童などを生み出し そして階層が深くなるにつれモンスターも段々と強くなっていき倒した時の
経験値も大きくなっていく
この世界の人間というのは、この経験値が一定の数値まで達するとレベルアップし
筋力や耐久力、反応速度、魔力の上限、知能までが数値化され上がっていくというのだから
驚きである つまり今いる世界で、唯一レベルアップ出来ないのが忠勝という事になる
ちなみにアラン、ブルート、ルイ、エヴァの4人は、この世界に帰ってすぐに日の本での蓄積されていた経験値が一気に解放され、大幅なレベルアップに伴う魔力酔いで寝込む事となる
サランドル·ダンジョン30階 階層ボス·烏天狗部屋
「イノリ〜 わしら、そろそろ眠いんだがな〜」
「ちょっと待って、もうすぐ何か掴めそうなの!!」
50cmほどに切断した2本の竹を、魔力の鎖で繋ぎ 最初はただ闇雲に振り回していた
ところが、時間の経過とともに敵の機先を制したり、脇に挟むことにより攻撃のタイミングを
ずらしたりと試行錯誤を繰り返すうちに直撃は出来なくとも、烏天狗の攻撃を防いだり
身体を掠めるくらいの攻撃が出来るようになってきていた
「まったく戦闘狂幼女が! 気を抜いたらいいのを食らいそうじゃな」
「うりゃっ!」
イノリは竹の片端を振り上げ、烏天狗の“松”が繰り出した木剣の突きを弾く
力強さだけでなく、振りのスピードと角度が絶妙で、竹が空気を切り裂く音が心地よい
「ほほう、なかなかやるではないか」
烏天狗“竹”はニヤリと笑うと、瞬時にイノリの背後に回り込んだ。
「させませんよ〜!」
だがイノリは振り返らず、魔力で繋がれた竹のもう一端を後方に投げるように振り抜いた
烏天狗“竹”の鼻先を掠め牽制する
「くっ、またそれか……!」
イノリは竹を脇に挟み込み、一瞬で流れるように体勢を整え3人の烏天狗と向き合うと
両手両脇を器用に使い、目にも止まらぬ速度で自分の身体を守るように回転させる
「見たか、これがわたしの“ピュンピュン竹”よ!」
イノリが自信たっぷりに言い放つと、烏天狗たちは思わず顔を見合わせた
「イノリ……そのネーミング酷すぎると思うぞ…その武器が使えるだけに……」
烏天狗“梅”が可哀想な者を見るような目で訴える
「なんでよ!? 耳元を通る時のピュンピュンって音が気持ちいいんだから いい名前でしょ?」
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