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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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瘴気の雲 再び

羽衣がなびく、九尾に風魔法を纏わせる、緋袴の緋色が夕日を強烈に反射させ

玉龍を手に猛烈な速度で結界を蹴り上がっていく エヴァ

「旦那様!駄目です!!待って下さい!!」

しかし、未だ風魔法に乗せたエヴァの声は、忠勝には届かない



上空に居るはずのナーダを、これ以上自由にさせてはいけない!

再び極大の息吹を放たれるのでは? そんな焦りを覚える 忠勝

自分とナーダの間にいる魏頭魔を一掃しようと羽団扇を握る手に力を込める

一瞬、魏頭魔達の隙間から、上空に居るナーダの姿を捉える

顔前で極大の息吹を練っている姿に戦慄を覚えた 忠勝

最大の風力を得るために、羽団扇の面を最大にまで広げ 螺旋を描くように扇ぐ!

忠勝から上空に向けて、自然界では決して起こりえない風速の竜巻が、その勢力を上方へと拡大しながら魏頭魔を巻き込み ぐんぐんと上昇していく

巻き込まれた数百、数千の魏頭魔は四肢がもげ、頭部までもげながら肉塊へと変わり果て

黒い瘴気だけを残し、竜巻の中を彷徨う 下方に居た魏頭魔も吸い込まれるように竜巻へと飛び込み 肉塊へと変わり果てる


さらに扇ぎ続ける 忠勝の耳にエヴァの声が聞こえた気がした

「旦那様〜!!駄目です〜!!!」

羽団扇を扇ぐ手を止め 足元を見ると、竜巻に引き込まれるように上昇してくる魏頭魔の

背を蹴りながら 忠勝を目指し昇ってくるエヴァの姿に手を伸ばす 忠勝

「旦那様!再び瘴気の雲を生み出してしまうかもしれません。。。」

「瘴気の雲??」



ナーダの眼下、無数の魏頭魔を巻き込みながら迫りくる 忠勝の羽団扇で創り出した

巨大な竜巻 その中心に照準を合わせる

練りに練った瘴気の息吹を、全身の無限の魔力とともに竜巻の中心に向け狙いを定め

吐き出し続ける 忠勝の竜巻に拮抗するように 風力とエネルギー量を計算し尽くし

忠勝の創り出した竜巻が、下からすべてを巻き込みながら、天へと向けて駆ける

ナーダの放つ極大の瘴気の息吹が、すべてを切り裂き、地へと降る


2つの神をも超える、生物の強大なエネルギーがぶつかり合う

“どおぉぉっぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃんんんんんんんんーーーーー!!!!!!!”

凄まじい破裂音が、新岐阜城のみならず 遠くは岩村城、鳴海城、大垣城、御嶽山にまで

鳴り響いたという

拮抗する竜巻と息吹が、その場で押し合い巨大な気圧と気圧の狭間に閉じ込められ

瘴気の閉じ込められた楕円形の黒い積乱雲を創り出し 薄闇の迫る空に鎮座する

内部には下降流と上昇気流、乱気流が吹き荒れ 黒い雲の内部に雷が自然発生する

空を覆い尽くしていた魏頭魔が次々とその雲に飛び込み 瘴気を撒き散らす


頭上でどんどんと拡がっていき、厚みまで増していく瘴気の雲を見上げる 忠勝とエヴァ

「旦那様 あれが、瘴気の雲です。。。あれに触れたすべての生物は死にます

人間も動物も昆虫も植物まで、すべてです。。。」

「そんな事は、させません すべて浄化します」

エヴァを守るように腰に手を回す忠勝が、胸元から風袋を取り出す なんの変哲もない

白い麻袋

「旦那様!?それは?」

「風神の風袋です 先ほど使った雷神の雷大鼓と対で借りてきました これであの雲を

すべて吸い尽くします」

「そんな事をしたら。。。」



“どおぉぉっごおおおおおおおおぉぉぉぉんんんんんんんんーーーーー!!!!!!!” 

2人の会話を遮り、爆音が耳をつんざく 咄嗟に蒼い巨体でエヴァを包み込む 忠勝

黒い積乱雲がナーダのエネルギーを維持する許容量を遥かに超え、なんの前触れも無く爆ぜる!!

薄闇の迫っていた空に、黒い雲が四方に猛烈な速度で広がり 一瞬にして闇に包まれる

なおも音速を超える速度で拡大していく 瘴気の雲









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