時空を超えし者達3
「いったい。。。さっき見た物は。。。何だったんだ?。。。」
久し振りに口を開いた アラン
「サンドワームにワイバーン。。。古龍様が治めるという世界は、私達が居た世界だとでも言うの?」
「この世界に来てちょうど1年、八岐大蛇の力を借りれば、帰れるんじゃないか!?」
この1年間、考えはしても誰も口にしなかった言葉をルイが叫ぶ
「みんな 今は、この戦いに集中するんだ! 生きてナーダを退ける事が出来たら
考えよう」
「でもブルート! その時には、エヴァは。。。」
「みんな 私の事は、考えないで下さい 今はナーダを倒す事だけを考えて下さい」
何かを言いたそうに口を開きかけたルイが、うつむき口を噤む
「天女様!みんな!!直政君の様子が、何だかおかしいです!!」
茶々の呼び掛けに、慌てて井伊直政の元へと駆け寄る エヴァ
未だ放心したように座り込み 焦点の合わない瞳で上空を見上げている
直政の目を覗き込み 額に手を当てる
«エヴァよ 案ずるでない»
「古龍様!?」
«直政は、暫くすれば元通りに戻る 言わばクールダウン中じゃな、あれだけの術を行使するために我の妖力をこの小さな体に通したのじゃ まったく天晴な子供じゃ»
「そうですか。。。直政君、古龍様ありがとうございます それと古龍様に聞きたい事があります」
直政を胸に抱き寄せる エヴァ
«エヴァよ!さっき見たものへの質問には答えられぬ 我もこの世の理を犯し禁忌である
術を使わせてしまったのだ それなりの天罰が下るやも知れん»
エヴァの言葉を遮り、強く言い切る 古龍
「わかりました。。。」
直政を心配そうに見下ろす ブルート達に“大丈夫”だと、頷いて見せる エヴァ
雲を突き抜け、ナーダへと蜻蛉切りを振り下ろす
竜鱗を飛ばし続けていたナーダは、刃を合わせることなく瞬間移動で忠勝との距離を取り
ナーダの目の動き一つで、空を覆い尽くさんばかりに膨れ上がった魏頭魔が忠勝を一斉に見る 人の丈ほどもある、翼を持つ蜥蜴、ぬめりとした黒い表皮に“ちろちろっ”と舌を出し入れしながら飛ぶ異形が陣形を組み 忠勝を囲むが、その場に滞空しただ見ている
その間にも次々と産み出されていく魏頭魔
「魔王ナーダよ この者らを、どれだけ産み出そうと俺には無力だとまだ解らぬのか?」
上空で忠勝を見下ろす ナーダがにやりっと笑う
黒一色で塗り尽くされた空に、大天狗の蒼い色が神威を纏い輝きを放つ
射られた矢のように上空のナーダへと向かい射放たれると、一直線に天を目指す
蒼い矢の後を無数の黒い魏頭魔が追うナーダを守るように隊列を組んだ魏頭魔が
何重にも忠勝の行く手を阻む 魏頭魔の壁に蜻蛉切りを振り回しながら突っ込んで行く
“斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!”“斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!”
“斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!”“斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!斬る!”
赤い夕焼け空に、忠勝に斬られた魏頭魔の黒い瘴気が漂う
まるで砂糖に群がる蟻のように、忠勝を囲い込むように、群がって来る 魏頭魔
忠勝に傷を負わせる事も無く、四肢を広げ飛び掛かってくる 数万もの異形
ナーダをも見失い、地上への視界も遮られた 忠勝が羽団扇を手に取る
「旦那様は、あの瘴気の雲を知らない!? 旦那様!!駄目です!!」
自分の竜巻で瘴気を拡散させた事を思い出した エヴァは、風魔法に乗せ、忠勝へと叫ぶ
あまりの高空とドームや魏頭魔に阻まれ、その声は届かない
「みんな!旦那様の元まで行ってきます!!」
そう言うと、無数の結界を投げ上げ、ドームの天井へと結界を蹴り駆け上がる エヴァ
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