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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
334/519

井伊直政と草薙剣

「それでしたら、私が行きます!古龍様 力を貸してください!!」

«。。。。。。。。。。。。ふむ。。。。。。。。。。。。»

「古龍様?」

«お前の身体を隅々まで調べたが、無理じゃな ここがお前の居た世界で精霊に護られていたのなら、あるいは可能だったかもしれん。。。お前の精霊は、この世界にまでは着いては、来れなかったようだな»

胸と下腹部を押さえ なぜか頬を染める エヴァ

「それでも行かねば、旦那様が負けてしまうのでは?」

«奴とて尊天の加護を授かった者だ、簡単に負ける事はなかろう 少しでも魔王を弱らせた所で、我がとどめを刺してやろう!»

「それでは、旦那様は犬死にではないですか!?」

«この国の民を守る為に死ねるのだ 奴も本望であろう?»

「死ぬのは、私だけで十分です お願いします!力を貸して下さい!!」

«お前は、大事な贄だ 殺されると解っていて行かせるわけにはいかん!»

黒い瘴気が漂う、不明瞭な壁面の映像に目を凝らす エヴァ



忠勝をいたぶるかの様に、尾を振るい 魏頭魔を生み出す ナーダ

体内に残った神威を放出させぬよう 体内を循環させながら

次から次へと押し寄せる 魏頭魔に蜻蛉切りを振るう 首を胴から切り離し

脳天から唐竹割りに両断する しかし魏頭魔は自爆することなく 

黒い瘴気を残し、消滅していく、忠勝の周囲が濃度の増した瘴気に覆われ

次第に忠勝の体内をも蝕んでいく

「うむ。。。? 息苦しくなってきたな、しかしこれしきの窮地、魔王殿での苦行に

比べれば、ぬるま湯に浸かっているようなものだ! それにしても、なんとかここから脱せねばならんな」

自分を捕らえている、黒い球体の外殻を目指し 魏頭魔を薙ぎ払いながら飛ぶ

しかし忠勝は、常にこの球体の中心に据えられ 上下左右にどれだけ飛ぼうが、外殻に

届く事は無い

そして、球体内での攻防も数時間が経過し、蒼かった大天狗の表皮も徐々に黒ずみはじめ

天を指すような勢いで怒張していた天狗の鼻も、萎れ俯きかけていた。。。



「古龍様!旦那様が!!」

«ふむ あの黒い球は、思っていた以上に厄介なようじゃのう»

「助けに行きます!!」

«落ち着け お前は、ここで待っておれ 草薙剣を、あの時を操る小僧に渡すのだ»

「直政君にですか? あの子だけを危険な戦場に行かせるわけにはいきません」

«案ずるな あの小僧の能力は、戦闘には向いておらん しかし支援に回れば、我の知る限りでも天下一の能力だ お前の旦那を救えるのは、あの小僧しかおらん»



「おい幸隆、さきほどから天女殿が、あの草薙剣と向き合ってゴニョゴニョと話しておるように見えるのじゃが?」

「お館様。。。おそらくは、草薙剣に宿る 八岐大蛇と話をしているのでしょう。。。」

「神話の古龍だぞ??。。。見なかった事にしておこう。。。」

「それが良いかと思います。。。」

大食堂の隅で、何事かを囁き合う 武田信玄と真田幸隆



草薙剣を持って、井伊直虎と共に居る井伊直政に歩み寄る エヴァ

「直政君、お話があります」

「はい なんでしょう 天女様?」

「あの。。。直政君にお願いがあるのですが、旦那様を助けて欲しいのです」

「はい 僕に出来る事でしたら、何でもしますが みんなと比べても攻撃力に乏しい

僕が役に立てるのでしょうか?」

「八岐大蛇が言うには、旦那様を救えるのは、直政君しか居ないというのです」

「「えっ!?あの伝説の古龍様がですか!!??」」

親子揃って驚く 直政と直虎

「それは、とても光栄です と言うことは僕の時を操る能力を買われたという事ですね」

「相変わらず 聡い子ですね 直政君は。。。貴方に初めて会った浜松城の事を思い出します」

「はい あそこに義母上に連れて行って頂き、天女様に治療をして頂かなければ

僕は今こうして生きてはいなかったかも知れません その、恩を少しでも返せるのでしたら 僕に出来る事でしたら、何でも言って下さい」

草薙剣を両手で差し出す エヴァ

「これを受け取って下さい」



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