本多忠勝 駆ける!
[うむ あの星は任せたぞ、正直に言うが、お前の元いた世界を脅かしている生命体だが本来この宇宙に存在するはずの無い者なのだ。。。魔王と名乗っているようだが、そんな称号を許可した覚えなど無いのでな、奴の力は未知数ではあるが、死ぬでないぞ]
「魔王。。。?」
[こことは異なる宇宙、異なる次元から紛れ込んだ異物と言うことだ おそらく奴の居た世界の称号なのだろう この宇宙にその存在を許すわけにはいかんのだ 頼んだぞ]
「承知しました! では、これにて」
[ふむ 達者でな。。。]
踵を返し、走り去る 本多忠勝を見送る
しかしすぐに立ち止まり、天を仰ぐ
「どのように行けば、帰れるのでしょう〜?」
大声で天に向かい叫ぶ 忠勝
[聞かずに走り出すから、知っているのかと思ったぞ その天の川沿いをずっと下って行けば帰れるぞ 決して飛んではならん、それと振り返ってもならん よいな!]
再び走り出すと川を飲み込むように黒い円がぽっかりと口を開けている
躊躇せず、その円に飛び込むと春のように穏やかだった気候から 極寒の深夜の冬山のような寒さに身を震わせる 脇を流れていた川も水の流れではなく、細かな星々の流れる
川に変わっていた どのような仕組みなのかと振り返りたい衝動に駆られるが、決して
振り返るなという天の声を思い出し前だけを見つめ、天の川の光を頼りにひた走る
暗闇に目が慣れてくると、自分の上下左右すべての方位に星が散らばっており
正面から、火竜よりもさらに巨大な蜥蜴のような生き物が忠勝の横を流れ去っていく
一瞬の出来事にまた振り返りたい衝動に駆られるが、正面を見据えていると
今度は巨大な蜥蜴に翼の生えた翼竜が生気の感じられない目を見開き通り過ぎる
ー『ここは一体、何なのだろう?』ー
その後も大陸の書物で見た象と呼ばれる生き物や、人の背丈ほどもある猿などが流れ去っていく
この時、本多忠勝が見ていた物は、この星の生物の歴史であり もしも振り返っていたら
同じ星でも、違う時代に放り出される事になっていた
素直で実直な忠勝の性格が功を奏したわけである
「天女様!天女様!天女様!天女様!天女様!天女様!天女様!天女様!」
振り返りたいという誘惑と戦うために、愛する者の名を掛け声にひた走る 忠勝であった
悲痛な人々の叫びに、目を覚ます 茶々と真田幸村
半分までもいかないが回復した魔力を確認し、みんなが喰い入るように見つめている壁面の映像に目を遣る
氷壁の北側が崩れ落ち、地上階の床面も所々に大穴が開き、地下1階が露出している
撃ち漏らし上空から降下してくる魏頭魔が大穴から内部に入り込み自爆する衝撃が大食堂を震わせる
「天武のみんなは?」
数人づつが集まり、背中を預け侵攻してくる怒愚魔を押し返し あちらこちらで巻き起こる爆風に耐えながら 障壁を展開し上空の魏頭魔を敷地外へと追いやる
「茶々ちゃん!僕は行くよ 魔力の切れたみんなをここに戻すからね怪我の治療を頼む」
「幸村君 今から行っても。。。もう駄目かもしれない。。。」
青い顔で唇を震わせ、幸村の手を引く 茶々
「茶々ちゃん!諦めたら駄目だ!まだ誰も諦めてなど居ない 行ってくる!!」
茶々の手を優しく解き 駆け出す 幸村
「「幸村!!死ぬなよ!!」」
その背を見送る 茶々と真田幸隆と昌幸
地上階へと飛び出ると、回復したばかりの魔力の大半を使って、氷の精霊フラウを呼び
氷壁を補修し、瞬時に屋根を掛け 氷のドームを完成させる
急激な魔力の放出に片膝をつく 真田幸村
「僕だけ休ませてもらって、ごめんなさい みんなもちょっとでも休んで下さい」
へなへなと腰から砕け落ちる 天武の面々
ブックマーク&星で評価などして頂けると嬉しいですm(_ _)m




