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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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天界

新岐阜城 大食堂

壁面の映像に固唾を飲んで見守る 人々

「あの天女殿が持っている 古びた剣は、一体何なのだ!?」

「お館様、天女様の背後に浮かんでいる 金色の影。。。八頭八尾の八岐大蛇から察しますに、草薙剣。。。では?」

「幸隆!!なぜ?天皇家の三種の神器の一つを天女殿が持っているのじゃ!?」

「何度か帝と天女様が内密な話をしていたようですが、おそらくはこの件だったのではないでしょうか?」

「正真正銘の神剣ということか! 魔を切るには、これ以上に適した剣はないという事だな」

声をひそめて話す 武田信玄と真田幸隆の元に上杉謙信が近づく

「この壁の絵は、真に今この上空で起こっていることが映し出されているのか?」

上杉謙信が壁面の映像を指差す

「そうじゃ 今現在、現実に起こっている事じゃ! 夢の精霊と言う者の力で、見せてもらえているそうじゃ」

「にわかには信じ難いが、お主らの孫や子供達、時を超えし者らが何人も死んだと言うのに、なぜそのように落ち着いていられるのだ?」

「上杉殿 実は、即死回避と言う術で1度だけ死に戻りが出来るそうなのです 時間はかかるようですが、間もなく全員が戻って参ります」

「今 目にしている天女殿の戦いもだが、聞くもの見るものすべてが、信じられぬ物ばかりだな ところで、尊天の加護を授かりに行ったという 本多忠勝はいつ戻るのだ?」

「私達も天女様と出会って以来、信じられない物を見続けて参りましたので 少々の事では驚かなくなりましたが。。。これほどに苦戦する彼らを初めて見ました

それと本多忠勝殿は、生半可な事では、授かることの出来ない加護だと聞いています

待つよりないかと。。。」



魔王殿から通じる天界


[本多忠勝よ 生まれ変わった その身体にも慣れたてきたようだな]

「慣れるもなにも、いい加減にこの棺桶から出してくれ!!」

[棺桶ではない お前の細胞を安定させるための羊水で満たされた言ってみれば神の子宮内だな それが無ければ、たちまちの内にお前の肉体は崩壊していたのだぞ] 

「それは、有り難い物なのだろうが 俺がここに来てからどれほどの時が過ぎたのかが、まるでわからない。。。一度帰りたいのだが。。。」

[お前は、尊天の加護を受けた者としての、自覚が足りないように思えるのう? お前はもう人間ではないのだぞ、人の身で有りながら3柱もの神々の力を行使できる者だという自覚がな]

「自覚ならある この力は、人間の営みを脅かす者を排除するために使うのだという事もわかっている」

[時は満ちておる 出ても良いぞ]

「えっ?いいのか?」

“にゅるりっ”と巨大な肉芽から吐き出される 全裸の本多忠勝 全身に付着した粘液を拭いながら

自分の身体を見下ろす

「特に変わったように感じられぬのだが。。。?

なにか着るものを頼む、これでは帰れぬ」

[やはりお前には、尊天の加護を授かった者としての自覚が足りんようだな そもそも帰りたいからと言って容易く帰れる場所ではないのだぞ 現世でお前を必要とする者たちの祈りが、お前を現世へと戻すことが出来るのだからな]

「それって。。。みんなが、俺が死んでいると思っていたら、帰れないのでは無いのか?」

[そうなったら永久にここに居ればよい その程度の存在だったということだ、歳もとらんし、腹も減らんぞ]

「愛する妻の元へ帰らねばならないんだ」

[まあ じきに呼ばれるじゃろう、それまで尊天の心得についてみっちりと教えこんでやろう]

「じきって。。。一体いつなんだ?」

不貞腐れて座り込む 忠勝に山伏の装束が与えられる



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