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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
309/519

地獄象蟻2

満腹丸の[自爆]という命令が発せられると、ナーダの腰から胸にかけて、まとわりつく全長30cmの甲虫が爆ぜる 背中がきれいに縦に割れ、中からドロッとした白い液体が滴る 

両手を使い器用に払いのけようと叩くのだが 甲虫クロカタゾウムシと自爆蟻との

交雑である【地獄象蟻】は物理的な打撃では、容易に潰されることも、払い落とされる事もなく ナーダの身体の至る所で自爆し 白い液体を付着させる

この白い液体の正体であるが、例えるなら速乾性の接着剤である 物理的なダメージも

毒や麻痺といった効果も何も無いのだが ただ単に動きが阻害される 乾き始めた液体に足を取られた地獄象蟻が自爆し、新たな白い液体が上塗りされる

関節部分が白く固まると、どのような屈強な生物でも歩行さえも困難となるだろう

事実、低空を飛行していたナーダも背中の翼の根本が、白く固まり始め 飛行を断念し

地上へと降り立ち、赤い兄弟竜フォゴにこの虫に絶対に触れないようにと念話を飛ばす


途切れることなく、なおも続々と自分に迫りくる地獄象蟻に雷撃の息吹を放つが、しばらくの間、動きを止めたあと また何事もなかったかの様に動き出す

消滅させようと腐蝕の覇気を使うが、地獄象蟻達は、その場で爆ぜてナーダ自身の動きを阻害するだけで、なんの解決にもならなかった 身体に付着した白い液体には、腐蝕の効果も見られない

“ネボアよ 聞こえるか? 私の姿が見えているか? 少々困っている 人間にはこのような戦い方もあるのだな。。。? フォゴを絶対にこの虫に近づけないでくれ”

“聞こえるぞ ナーダよ 人間の戦い方と言うより、我を捕らえていた獣使いの小僧の

戦い方じゃな そのまま放っておくと身動きが取れなくなりそうじゃな”

上空を飛ぶフォゴの胸に抱えられたネボアが、地上のナーダを見ながら顎に手をやる


「フォゴよ もう大丈夫じゃ、1人で飛べるぞ お前は絶対にあの虫に触れるでないぞ

あのナーダでさえ難儀しているようじゃ 逃れる法を考えてやらねばならんな」

夜叉の眼を見ながら、頷くフォゴ



織田信忠達と合流した、アラン、ブルート、ルイ

「どうなっているのか、よく解らんが  ナーダの動きを封じたようだな!?」

エント·キングの補修をする 武田信勝に問いかける ルイ

「満腹丸の産み出した蟻が、ナーダにまとわりついて爆発するんです するとトリモチのような物が出てきて、ナーダの動きが鈍くなってきたので 急いでエント·キングの改良、補修をしています」

「それは、満腹丸のお手柄だな!? 前回の戦いに参加していなかった満腹丸の戦術に敵も度肝を抜かれたわけだな!! ナーダの動きが鈍くなっている間にフォゴを仕留めるぞ!!」

「ああ そうだなルイ! 戦える者は、全力でフォゴを倒そう!!この好機を逃すわけにはいかない、いくぞっ!!!」


改良を終え、耐熱処理を施したエント·キングが大筒(改)を抱え フォゴへと走る


2体のゴーレムを同時に操作ができるようになった信忠が、1体には巨大な盾を1体には

エント·キングと同じ大筒を肩に担がせフォゴに照準を合わせる


真田幸村は、足場として空中に張り巡らされたブルートの鬼蜘蛛の糸を氷の精霊フラウと鉄の精霊フェローで強化しながら 鬼蜘蛛の糸を駆け上がり、氷の精霊フラウの凍結魔法でフォゴを縛り上げていく


全身の八割を、酒呑童子へと鬼化させたルイが100本を超える、黒い妖刀·童子切安綱を

空中で自在に操り、上下左右あらゆる角度からフォゴを切り刻む


アランは、右腕の虎舞羅に魔力を送り込む 試した事は無いが、虎舞羅の限界ギリギリまでの魔力を溜め、フォゴに撃ち込むために ひたすらに己の魔力を注ぎ込む

次第に黒い銃身が、金色の光をたたえ始める




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