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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
302/518

岩村城無情

瘴気の雲が厚く覆い尽くす曇天の空を、赤と黒の巨大なバハムートが翼を羽ばたかせ飛ぶ

それに並走して2匹のバハムートを視界に捉え続ける サンドマンの眼

比較できる物が無いために、その大きさも速度も想像することになるが

その飛行する姿から、あまりにも禍々しく、圧倒的なまでの生命力を感じる事が

この映像からでも容易に想像することができた

「赤いバハムートがフォゴ、黒いバハムートがナーダと言うそうです」

「自分達に名前を付けるほどの知能があると言うのか!?」

「ルイ、ネボアもナーダも会話が出来るのですから、侮ってはいけません」

「エヴァ、どのくらいの速度で飛んでいると思う?」

「そうですね、最高速度はわかりませんが、今まで飛んでいる姿を見た限りでは

巡航速度で200kmまでは届かないと思うのですが。。。」


ブルートが顎に手を当てて、考え込む素振りを見せている

「そうなると、ここまで1時間足らずで到着する事になるが、奴らの言った時間よりも

2時間も早く来る事になるな」

「所詮、魔獣だ時間も適当なんだろう!?」

「そうだろうか?あの黒いバハムート、ナーダから感じられた知性はもしかしたら人間

以上にも感じられたがな。。。」

「嫌な。。。感じが。。。するな。。。」

「迎え撃つ準備をしたほうがいいだろ!?」

「そうなんだが。。。本当に、ここに向かっているのだろうか?千代、サンドマンの視線を地表に向ける事は出来ないだろうか?」

「はい ブルート先生、サンドマンに聞いてみます」

ほぼ空と2匹のバハムートしか映っていない映像から、進路を特定するのは困難であった

「ちょっと良いでしょうか? あそこに見える稜線は、御嶽山から西のここを目指しているのではなく 南に向かっている様に見えますが。。。」

真田幸隆が遠慮がちに、会話に入ってくる

「幸隆よ 本当なのか? わしにはまったくわからんが?」

「何度も行軍で見ていますので、間違いありません あの遠くに見えているる稜線は甲斐駒ヶ岳、木曽の辺りを飛んでいるものと思われます」

全員の視線が壁面の映像に釘付けになる


「確かに、そう言われてみれば。。。見覚えがあるな!」

「木曽の辺りと言うと、どこに向かっているんだ!?」

「俺は秋山虎繁殿との行軍で、あの峰を越えたぞ!」

「「「「「「「「「「「「岩村城!!!!?????」」」」」」」」」」」」


「「助けに行かなければ!!」」

「エヴァ!ルイ!落ち着くんだ!!」

今にも駆け出しそうな勢いのエヴァとルイを制する ブルート

「ブルート!なぜ止めるんだ!? 早く行かないと皆殺しになるぞ!!」

「まだ岩村城だと確定したわけではないし 例え岩村城だとしてもルイ、お前はバハムートよりも早く飛べるのか? 間に合うはずが無いし、ここを手薄にする訳にもいかないだろう!?」

「避難してくれていることを願うばかりです。。。」


壁面の映像を固唾を呑んで見守る

重苦しい空気が、大食堂内に満ち溢れ ときおり誰かが吐く溜息が、やけに大きく感じられる

どれほどの時間が経過したのだろうか?

2匹のバハムートがゆっくりと下降をはじめ 黒いバハムート·ナーダの顎が落ち 雷撃を纏った竜の息吹が吸い込まれるように見覚えのある山城に直撃する

天守より火が上がり、2発目の息吹きが二の丸を直撃する 音声の無い映像のみが、どこか現実感を伴わず

燃え上がる城郭と逃げ惑う人々を映し出す

「秋山〜逃げるんじゃああああぁぁぁ!!!!」

武田信玄が叫ぶ

「岩村城には、僕の弟である御坊丸が!!!!」

信忠が悲痛な悲鳴を上げる


本丸を挟むように降り立つ フォゴとナーダ

恐怖で立ちすくむ女を片手で掴み上げ、腹に齧り付き

はらわたを引きずり出す 足元をすり抜けようと駆ける男を尻尾で弾き飛ばし、石垣に叩きつけると頭部が柘榴ざくろのように潰れ、石垣にしみを残す

刀を持った侍達が、フォゴを取り囲むと四方から一斉に切り掛かるが、赤き竜の覇気で一瞬で燃え上がりながら弾け飛ぶ男達 遠巻きに見守っていた者たちまでが、倒れ伏し卒倒しているところを次々と頭を踏みつけられ脳漿を地面に染み込ませる 

音声の無いはずの映像から人々の悲鳴、無念の呻きが聞こえ

その壁面から人のはらわたのむせる様な血の匂いが立ち昇る気がした



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