瘴気の雲
遅くなり申し訳ありません
ようやく意識を取り戻したネボアだが、自分の置かれている状況を把握する事が出来ずに
パニックに陥りそうになる精神を必死に抑えつける
あまりにも異常な状況に置かれている事だけは、間違いがなく、体の自由が利かぬことに
変わりはないのだが、視力までも失ったかの様に、完全な闇の中に身を起き
重力魔法とは異なる、身体をすべて包み込むような圧力
覚醒するにしたがい、この夜叉の体が、これ以上使い物にはならないという事を確信する
痛覚までも麻痺させられた事により、酸による攻撃だろうか?
体の末端。。。指や顔の造形をすべて失い
衣服はもちろん表皮までも溶かされ、生物としての生命活動が潰える危機的状況に陥るまで意識が戻る事が無かったようである
この身体を捨て、霧の魔獣ネボアのみの脱出を試みるが、以前に京都の嵐山で崇徳院の
意識が途絶えた時と同様に抜け出すことが出来ずに、焦りを増していくネボアであった
落ち着け!落ち着くんだ!と自分に言い聞かせ 今出来る唯一の行動
兄弟竜達との交信を試みる どのような障害なのか視覚を共有することも出来ずに
ただひたすらに助けを求める 現在自分がいる場所も状況も不明であるが、それでも
ひたすらに助けを求める以外に出来る事などなく、この酸によると思われる攻撃が
自分の身体を侵食してくる状況から考えて、おそらくは3,4日間ほどで消えて無くなるだろうと言う事 そうなった場合に霧の魔獣ネボアとしての自我がどうなるのか不明である
と言う事を、兄弟竜達に届いていると信じてただひたすらに訴える
それ以外に今のネボアに出来る事など無いのだから
荒れ狂う竜巻の中に囚われ続けている 2匹のバハムート
時間にして10分間以上、1000本を超えるルイの童子切安綱が竜巻の中を飛び回り
数える事など不可能なほどのエヴァの風の刃が、舞い飛び
絶えず凍結の魔法が流された 鬼蜘蛛の糸で縛られた フォゴとナーダ
S級モンスターと恐れられたベヒーモスやリバイアサンでも5分も生き残ることが不可能であろう3人の複合技に、この戦いの終わりを期待し 残された魔力を絞り出す
エヴァとブルートとルイ
しかし、その期待もあまりにも儚く、そして呆気なく裏切られる事となる
吹き荒れていた竜巻が、四方へ向けて突風となり爆散する 1000本を超える黒い太刀が吹き飛び、風刃も鬼蜘蛛の糸も霧散し これまでとは、桁違いの赤と黒の竜の覇気で竜巻を消滅させた2匹のバハムートが、まったくの無傷。。。
フォゴに至っては全快した姿でそこに立っていた
「嘘だろう。。。!?」
「こんな化け物をどうやって倒せというんだ!?」
「ルイ!草薙剣を出して下さい!!」
「エヴァ、悪いがそれだけは、駄目だ!!」
「エヴァ、まだ出来る事があるはずだ ルイ渡すんじゃないぞ!」
「ルイもブルートも魔力もあと僅かですよね?草薙剣しか残っていません ルイ早く!」
「こいつ等を倒せたとしても エヴァが死ぬんだろ? 渡せるわけがないじゃないか!」
「それよりも、エヴァ!ルイ!空を見るんだ!!」
竜巻から爆散されたナーダの覇気が、低空でどんどんと広がっていく暗い灰色の雲となり
薄闇の迫っていた付近が、完全な夜へと変わっていく
「奴は、いったい何をしたんだ!?」
「これは。。。まさか瘴気?」
“そうだ腐食の瘴気を上空に放った”
「何をするつもりなのですか!?」
“どうやらお前たちは、自分達の命では、我等の要求を受け入れる気は無いのだろう?
人質を取らせてもらったのだよ お前たちと同じようにな”
ナーダの爬虫類のような顔が、くっくっくっと笑った気がした
「どういうことでしょう。。。?」
“この雲は、ここを中心に2日後には、東西南北に500kmほどの大きさになるだろう
2日以内にネボアを返さなければ、この雲を地上に落とす わかっているとは思うが
すべての生物は死に絶えるだろうな”
「ネボアを返せば、この雲を落とさないという保証はあるのですか?」
“我の言葉を信じるより無いな、このような殺し方は本意では無いのだ 喰えぬしな
恐怖を感じさせながら、いたぶって殺すのが我等の主義だ”
「下劣な!!」
“なんとでも言え 今から2日後この時間、ネボアを迎えに来るぞ”
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