バハムート語る
氏直の目に、フォゴの口から放たれた獄炎の息吹が、ゆっくりと砦へと突き刺さる
「やめろーー!!!やめてくれーーー!!!!」
すべてが、現実感を伴わない、ゆっくりとした時の中で起きている出来事のような
自分の身体さえも、脳からの指示どおりに動かすことが出来ずに眼球だけが忙しなく
上下左右に動き回る
“ドッゴーーーーンンンンッ!!!!!!!”
爆音が氏直の耳をつんざき 氏直の目と脳に、色と現実をつきつける
「信勝っ〜!!!幸村っ〜!!!!!逃げるんだ〜〜〜!!!!!!」
血の涙を流しながら、氏直が叫ぶ “グッシャッ!!!”
2発目の“黒き竜の覇気”を至近距離でまともに受け、巨大な脚で床に踏みつけられたように、フーカーのフルアーマープレートがひしゃげ、鉄屑のように転がる 氏直
肺の中に、わずかに残った空気を押し出し この世で最も信頼をおく人の名を叫ぶ!
「天女様っーーーー!!!!」
天蓋のほとんどを失ったドーム 瓦礫と舞い散る砂埃に陽光がきらきらっと反射する
久方ぶりに訪れた静寂 2匹の神にも等しい竜の“グルルルルルルルッ”息づかいが響く
“ガッシャャャャャャャャンンンンンンっっ!!!!!!!!”
静寂を引き裂く破壊の音 地下へと続く扉が吹き飛び 人外の者の目から見ても
あまりにも美しく、あまりにも恐ろしい天女が降臨する
「お雪ちゃん、ここで待っていて下さい 3人を連れてきます」
「はい 天女様、気を付けてください」
ドーム中央から、ただ一点、東壁に転がる北条氏直を見つめ、ゆっくりと歩き出すエヴァ
その進路上で腕を組み 立ち塞がるナーダ
ナーダには、目もくれずに横を通り過ぎようとするエヴァを黙って見下ろす ナーダ
氏直の横に膝をつき、そっと結界の上に乗せる
「ごめんなさい 痛かったでしょう。。。私が、もう少し早く戻れていれば。。。」
そのまま壁沿いを歩き、砦のあった場所を目指す 焼け焦げた茨を掻き分け
2人をそれぞれ、結界の上に乗せると、3つの結界を浮遊させ フォゴの横を抜け
ドーム中央のお雪へと歩みを進める
「お雪ちゃん、3人をおりんちゃんの所まで連れて行ってください 政宗君のように
間もなく蘇ると思います」
「天女様は?。。。」
「すぐには無理でしょうが、必ず戻りますので待っていて下さい」
「必ず戻って来て下さいね みんなで待っています」
お雪を見送り 地下への階段を結界で塞ぎ、2匹のバハムートと向き合う
「理由はわかりませんが、待ってくれた事には感謝します しかし貴方達は、私の大事な人達を傷つけ過ぎました 全力で葬ります」
“女よ。。。”
エヴァの脳内に念話が飛び込んでくる
「驚きました!?話せるのですか??」
“我が名は。。。ナーダ あそこに居る炎を操る。。。兄がフォゴだ 我等の末弟ネボアを返せ。。。”
「貴方達にも兄弟を思う気持ちがあったのですね? 断ったらどうします?」
“言うまでもない お前を滅し。。。その後で階下に逃げた人間共を皆殺しにするだけだ”
「そんな事は、させません!!」
“お前一人で我等を止める事が出来ると本当に思っているのか?
言っておくが我等の魔力は、ここまでの戦いで1割も減ってはいないぞ”
「出来る、出来ないでは無いのです やらねばならないのです!」
無数の不可視の結界を、空中に放り ナーダへと向かい結界を蹴る エヴァ
「ルイ、大丈夫か!?少し速度を落とそうか?」
「大丈夫だ、ブルート 新岐阜城まで後どのくらいだろう?」
「まだ半分も進んじゃいない エヴァが無事だといいのだが。。。」
「ブルート、俺たち情けないよな、昔から肝心なところで、いつもエヴァに頼りっきりで あの2匹のバハムートを相手にして、無事なわけが無いだろう!?」
「そうか? エヴァなら大丈夫な気がするがな。。。根拠は無いんだけど。。。昔からそうだろ?」
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