エヴァ対夜叉2
井伊直政だけが、動いていられる世界
新岐阜城で、エヴァと組む事を告げられてから、今のこの時まで、直政が密かに考えている事があった
夜叉とエヴァの戦いの最中にも、何度か時間停止、時間遅延を発動し 時の精霊ハロルに語りかけ、時の止まった世界で自分だけでなくエヴァをも、時間の枠の外に置く事は出来ないのかと。。。つまり時の止まった世界で自分とエヴァが動けないかと模索していた
エヴァが夜叉と戦っている最中に、直政もまた自分と戦っていた訳である
自分だけが、動ける世界で空中を凝視していた直政だが、どれだけ目を凝らそうと
エヴァの周囲にも、夜叉の周辺にも立ち昇る煙を見つける事は出来なかった
直政の体感で、およそ2秒。。。間もなく時間停止の効力が切れようと言うときに
自分の足元に漂う、赤い煙に気付く 歪んだ空間からは、夜叉の鋭い爪のついた腕が
直政を捕らえようと伸びていた
「しまった!ネボアは、僕を人質にするつもりだったのか!? これに攻撃魔法を撃ち込んでも、天女様との距離が遠すぎて、おそらく捕らえる事は出来ないだろう。。。それどころか、時を操る能力に気付かれる可能性もある」
そう判断した直政は、エヴァの真下まで移動しようと瞬歩で駆ける
その時に見上げたエヴァの指先が、時の止まった世界で、微かに動いたような気がした
“時が動き出す”
出口から抜け出した夜叉の腕が空を切る 不思議そうに自分の手の平と直政を見る
『時間を操れる事をネボアに気付かれてはいけない!』
すると、エヴァから伸びた紐が、直政の腰に巻き付いている事に気付き
エヴァが、その紐を操ると直政の体が宙に浮き、夜叉からさらに遠ざける
『なるほど、これなら天女様が僕を引き寄せたように見える ネボアに余計な疑念を抱かれずに済む さすが天女様だ! それにしても、時間が動き出す寸前に天女様の指先が
動いたように見えたのは、やはり僕の見間違いでは無かったのか?
だからこれほど早く、僕の腰に紐を巻くことが出来たのではないか?』
何かを警戒するようにエヴァと直政を睨みつける 夜叉
右手の太刀を腰に収めると、夜叉が右手を突き出す
掲げた右の手の平に黒い瘴気が纏わりつき あふれた瘴気が“ぽたぽたっ”と零れ落ちる
「直政君、あの右手には注意して下さい 以前に見た呪いとは違うようですが。。。
腐食の可能性があります 触れたものを、その名の通り腐食させていく、非常に厄介な代物です 私の後ろから出ないようにして下さいね」
「わかりました 天女様も気をつけて下さい」
『あの天女の後ろに隠れる様に付いている あの小僧から、何とも言えぬ違和感を感じる 戦いに参戦する様子も見せず なんの為に天女は小僧をここに連れているのか?
それに先ほどの動き、あの小僧の足を掴んだと確信していたのに。。。天女が、あの紐で引き寄せたというのか? 試して見ねばならんな』
強く地を蹴り、エヴァと直政よりも高く飛び上がると、右腕を限界まで伸ばし
頭上で回転させ、あふれる黒い瘴気を周囲に撒き散らす
その瘴気を浴びた、地上の木々、岩、砂までもが“ジュッ!ジュッ!”と音と煙を上げる
腕を振り回し、瘴気を撒き散らしながら エヴァと直政へと迫る 夜叉
無数の結界を空中に放ち、それに対抗するが、瘴気に触れるたびにひび割れ砕けていく
「直政君!ここでは、不利です一旦距離を置きます!!」
直政の元まで飛び、手を引き地上へと飛び降りる
「あっ!!足が!?」
直政の脹脛に瘴気が付着し、じゅわっじゅわっと黒い煙を上げながら
直政の足を侵食していく
直政の耳元に顔を寄せ、小声で呟く エヴァ
「すぐに治療します この症状は経験済みですから心配しないで下さい
直政君は、出来るだけ大袈裟に痛がって転げ回って下さい」
痛がり転げ回る直政君の治療をしようと、慌てたエヴァが、この戦いで初めてネボアに
背中を見せる
「そんな子供を戦場に連れてきたのが、お前の敗因だ!!」
瞬間移動を発動する ネボア 夜叉の正面の空間が歪む
「直政君、治療は済みましたよ ネボアは、瞬間移動を使ったのではないですか?
煙玉を使うまでもありません 私の背に出口が開くでしょう 時間を止めて下さい」
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