忠勝の煩悩
玉龍の光も収まり、いつの間にかエヴァの耳も尻尾も消えている
幻でも見ていたのかと全員が、自分の目を疑っていると 興奮から冷めたエヴァが
へたり込んでいる信忠に手を差し出す
「大丈夫ですか? 楽しかったですね」 子供のような笑顔を信忠に向ける
「いえ。。。恐ろしかったです。。。この世の者と戦っているとは、とても思えませんでした。。。」顔面を蒼白にして答える 織田信忠
「ルイやアランやブルートは、私よりもっと強いのですよ? 私が最弱です」
『『『『『『『『『『『そんなわけが無いだろう!!!!』』』』』』』』』』』
全員が、心の中で一斉にツッコむ
「では、ブルートも言っていたように信忠君と直政君は合格という事にします
火竜との決戦がいつになるかは、まだわかりませんが 竜の息吹に耐えられるくらい
防御力を高めておいてください 直政君は時間停止や遅延を攻撃にでは無く 回避に
使って欲しいと思います 攻撃には、また別の方法を考えましょう アランもそれで良いですね?」
「ああ。。。」
「「ありがとうございます!! 必ずお役に立ちます!!」」
「氏直君に満腹丸君は、保留ですね いっそうの精進に期待します」
「「はい!頑張ります!!」」
それぞれの課題を見つけ、修練へと散っていく子供達 満腹丸はただ一人 昆虫採集の為に階段を駆け上がっていった
「それにしても、その薙刀。。。玉龍といったか? まるで生きているようだな」
「青龍とお玉様が側にいてくれるような、安心感がありました 玉龍が身体の一部に
なったような 武器を振るう事が、こんなに楽しいと思ったのは、初めてです」
「エヴァ。。。狐のような耳や尻尾が生えた事に気づいていなかったのか?」
自分のお尻を触る エヴァ
「はっ!? 何を馬鹿な冗談を言っているのですか? ブルートらしくもない!」
「いや。。。エヴァ。。。本当だぞ。。。」
「アランまで!いい加減にして下さい!!」
この苦しみ、この痛みが永遠に続くのならば、自分の生を手放したいと何度も考える
しかし。。。あの人の笑顔をもう一度だけでも見るまでは、死ぬわけにはいかない
愛しい我が妻の、白く細い指に触れるまでは、長くしなやかな黒い髪の匂いに
抱きしめれば壊れそうな弱々しい肩に、淡く透き通り真珠のような、その肌に
戦う以外、なんの取り柄もない俺を待ってくれている人が居る 帰らねば!
手の指先、足の爪先から始まった 細胞がひっくり返るような痛みは、この地獄のほんの序章でしかなかった 今になり思い返せば 笑って耐えられるほどの痛み
手の指先から始まった痛みは、肩口で止まり 足の爪先から始まった痛みが
腰にまで達し、今もゆっくりと上がって来ている 自分の生殖器の細胞が、ひっくり返るような痛み 噛み締めた奥歯が割れた。。。 筆舌に尽くし難い痛みもようやく通り過ぎ
今は、はらわたを荒縄を巻いた手で握りつぶされるような 毒手で捏ね回されるような
永遠とも思える 痛みにただ耐える ひたすらに耐える
なんの抗う術も持たぬのだから
大海原を小さな筏で漂流する 手も足も動かす事も叶わず
自分の身体を見下ろす事さえ出来ずに、ただ一点。。。空だけを睨む
自分に出来る事は、ひたすらに痛みに耐えるか、舌を噛み切り、死を選ぶ事のみ
通り過ぎる雲を眺める あの雲は、黒髪をなびかせた天女様の横顔によく似ている
あっちに見える雲は、小振りではあるが、まさに雲のようにシミ一つ無い天女様の双丘に見える
ちょっと待てよ? この痛みが、心の臓まで上がってきた時に俺は、耐える事が出来るのだろうか?
ああ! あの雲は、天女様のしなやかな腰のクビレから、尻にかけての。。。
絶対に耐えて帰らねば! 帰って本物の天女様にあんな事やこんな事を!!
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