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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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鳴海城とエヴァ

久方ぶりの鳴海城を、小高くなった丘の上から眺めていると、この地での思い出が浮かぶ

この世界に来て、間もなく1年。。。

あちらこちらと飛び回る日々であったが、ここ鳴海城には、一際の思い入れがある

焼け野原となった鳴海城を、ルイと羽柴組のみんなで再建し、大食堂を作り

日の本中から、腕の立つ板前を募った

学校を作り、地域の民や、天武の子供達が算術やこの国の歴史を学び

練兵所では、みんなと汗を流した そして毎週日曜日には、天女堂といわれる施設に大勢の人が訪れ、家族の健康や、この国の平和を願い祈りを捧げている

私達が、この世界に来てからの歴史の詰まった場所

何があろうと守らねばならない場所 そんな思いを胸に、北曲輪に向かい歩みを進める



天女堂の入り口に、中に入るための人々が、20名ほど列を作り待っている

その最後尾に居る、小さな女の子の手を引いた母親らしき女の後ろに並んでみる

「ここには、よく来られるのですか?」

急に話しかけられ、驚いた様子で振り向く母親

「あっ いえ初めてです この子の病は、天女堂に行けば治るんじゃないかって言われて。。。播磨国からやって参りました」

母親に釣られて、振り向く女の子 顔中から首筋まで湿疹が広がり ひどく痩せこけた

女の子だ

「随分と遠くから来られたのですね お嬢ちゃん、おいくつ?お名前は?」

子供の顔の高さまでしゃがみ込む エヴァ

「お富、7歳です。。。うわ〜っきれいなお姉さん。。。」

エヴァに話しかけられたのが嬉しいのか、パッと瞳を輝かせる

お富ちゃんの頭を撫で、ゆっくりと立ち上がる

「お富ちゃんの病は、もう治りましたよ 酷い雁瘡がんがさ〈皮膚病〉と喘病でした 道中も苦しかったでしょうに、ここまでよく頑張りましたね」

「えっ!?」 しゃがみ込み女の子の顔を両手で挟み、覗き込む母親

「えっ!? ええっ!!??」あれほど酷かった 湿疹が綺麗に無くなり 顔色までが

頬に赤みが指し、良くなっている 腰を抜かし 口をぱくぱくっさせる 母親

親子に微笑むと、天女堂の入り口へと歩きだす エヴァ

その背中に声が掛けられる「ありがとうございます!!」

そして列の人々から「天女様だ!」 「ありがたや〜」 「相変わらず、お美しい」

その騒ぎが天女堂の中にまで伝わり、天女が通るための道が拓かれる

中央の長椅子の間を通り、人々の注目を一身に受けながら、壇上へと登る エヴァ

静まり返る堂内、固唾を呑む音までが聞こえてくる

「みなさん、この国の平和の為に戦ってくれた 大事な仲間が、平和を脅かす邪な者の手に掛かり

命を落としました その邪な者達の力は、強大ですが、私達の、みなさんの平和を願う気持ちはさらに強大です この美しい国を護るために、またしばらく留守にしますが、私達を信じて待っていて下さい

命を落とした 私の大切な仲間のために。。。黙祷を捧げましょう。。。」



鳴海城の中央を横断する 大通りを天女御殿に向かい歩く

日曜日は、極力仕事をせずに体を休めるという通達が出されている為に、普段は賑わっている城内も、閑散としている

それでもときおり、すれ違う者たちから足を止めて挨拶をされ、笑顔で返す

天女御殿の中庭を抜け、縁側に腰を下ろす 植え込みは綺麗に切り揃えられ 縁側にも

埃一つない 留守の間も、毎日掃除をしてくれている姿が目に浮かぶ

「天女様 おかえりなさいませ」

山県昌満が、生け垣の向こうから声を掛ける

「すぐに立たねばなりませんが、ちょっとだけ寄りました どうぞ入ってください」

縁側に遠慮がちにエヴァと並んで座る  山県昌景の嫡男·山県昌満

「教室の方は、いかがですか?」

「はい 城内も城下も算術が、出来る者が増え 読み書きの出来る者も増えましたので

連絡事項なども、立て札や掲示板で済むようになりましたので、文明的といいますか

伝達事項などの効率が非常に良くなっています」

「文明的ですか 昌満殿らしい物言いですね 他に変わったことは?」

文明的という言葉が、よほど面白かったのか くすくすと笑う エヴァ

「そういえば、先月ですが、ルイ殿を訪ねて、それは綺麗な女性が2人いらっしゃいました お玉様とおりん様と言われましたか 天女様と同じ巫女姿に千早を纏われた」

「その2人でしたら ルイと共に、ここから岩村城に向かい 火竜を討ちました

ルイが怪我をして療養していましたが もう大丈夫でしょう」

「おおっ!火竜を討たれましたか!? やはりあのお二人も只者では無かったのですね」

「京を襲った火竜は討たれましたが、まだ子竜が残っています その子竜を討つために

これから岐阜城へ向かいます」

「天女様とみなさんのご武運を祈っています」



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