サウダージ2
御嶽山
まさに命からがらと言った体で、御嶽山の火口に飛び込む 夜叉ことネボア
もしも妖狐が、健在であったならば、妖狐の魔力探知で追跡され、息の根を止められていたであろう
妖狐を失った事は、超広範囲の魔力探知を失ったという事であり
ネボア達は、これまで以上に自由に空を飛び回れるという事になる
思い返せば、ベヒーモスの京への強襲をいち早く感知していたのも、妖狐であるし
岩村城の窮状を救ったのも妖狐の魔力探知である
エヴァ達は、妖狐を失うという戦力的な損失とともに、超広範囲の索敵能力を失うという
戦術的な大きな損失を被る事になった
火口の最深部へと、ゆっくりと降りていく ネボア
首だけを動かし、夜叉の姿となったネボアを迎えるフォゴとナーダ
肉眼を得て、初めて見る兄弟竜達は、弛緩している状態にも関わらず 猛々しく
内から溢れ出す覇気が、神々しくさえ感じられる
魔力を補充する為に、黒い覇気を纏ったナーダに近づき 手首から先を失った右手で
触れようと手を伸ばす
その右手を一瞥したナーダが、むくりと上半身を起こし 匂いでも嗅ぐように鼻を近づけると、右手の切断面が、黒い覇気に包まれ 体中に魔力が、満ちていく感覚と
切断された断面の肉が蠢き、心地の良い痛みを伴いながら 肉が血管が隆起していく
わずか数分の間に肉が血管が絡み合い指先までを形作り、赤黒い皮膚が肉を包み込み
鋭く尖った爪までも再生を終える
改めて、ナーダの視界を通して、夜叉の姿を見てみる
2mほどの体躯に般若の様な面が顔面に貼り付き、額の両側から2本の角が突き出し
山伏のような装束に高下駄を履いている
この体は、一体何ができるのだろうか? 人間の持つ武具を扱えるのだろうか?
都での戦いでは、地上から上空の妖狐の鼻先まで瞬間移動したが 崇徳院の意識のない今でも、同じ事が出来るのだろうか?
色々と検証をしなければならない 新しい玩具を手に入れた幼子の様に、期待に胸を躍らせる ネボア
検証を終えたら 大垣城に集まっている、天女の仲間達を血祭りに上げ 都を焼け野原に
したら この国の北から南まで蹂躙し尽くそう すべての人間どもを殺し尽くしたら
次は、大陸に飛ばねばならん 広大な領土が延々と続くそうだ そして滅しよう
人間の居ない国 さぞや美しい国となるだろう
もう何度殺されたのだろう? 50を超えてから、数えるのを止めてしまったが
自分の首が、胴から切り離され 地面へと落下していく わずかな時間で地面にある
小石を見つめながら そんな事を考えている 本多忠勝
絶命してから、蘇るまで どれほどの時間が、経過しているのか知る由もなく
気がつけば蜻蛉切りを手に大天狗と対峙している 自分が居る
初めこそ、大天狗の槍の動きどころか、身体の動きさえまったく見えなかったが
徐々にではあるが、動きを見るのではなく、察する事が出来るようになってきた
その証拠に、一撃で絶命することが無くなり 2振り3振り目で息の根を絶たれるようになったのだから
そして最大の発見は、絶命してから、1秒の半分にも満たぬ時間だが 先程のように
地面の小石が見えたように 意識が残っている事に気づいた
1秒の半分にも満たぬ時間。。。大天狗の気が抜けているであろう時間に体を動かすことが出来れば 大天狗に一矢を報いる事ができるのではないか!?
何度も何度も殺され、激痛を味わされながらも、嬉々として大天狗に飛び掛かっていく
一合も切り結ぶ事も無く 切伏せられるが、蜘蛛の糸よりもまだ細い
わずかなわずかな可能性を手繰り寄せようと 必死に体を動かす 本多忠勝
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