京の闇に触れる ネボア
床の間で丸まっていた妖狐が、むくりと起き上がる
「お玉様、お茶でもいかがですか?」
おりんが、妖狐の分の湯呑を用意すると、フンッと鼻を鳴らし、人型へと変幻する
「いつも不思議に思っていたのですが、狐から人に変幻するのに どうして着物を着ているのですか? いつも裸なのでは?とドキドキするのですが。。。」
「俺もそれが不思議だった!」
うんうんと頷きあう ルイとお雪
「この世の理が、あたしに通じると思うかい? そもそも狐が人になるってのに驚く
ところが着物の有る無しとは、あんた等には、呆れるよ
あたしにとっちゃー この世界がすべて夢幻なんだよ!」
「うん!? それもそうか!!はっはっはっはっ!!」
床に伏せてはいるが、久し振りに楽しそうに笑う ルイ
「ルイや、あたしはすっかり回復したから 天女の所に先に行ってるよ
あんたは、しっかりと治してから岐阜城に来るんだよ いいね!?」
ルイの枕元へ腰を下ろすと、ルイの手を握る 妖狐
「あんた達も、ルイが無茶をしないように、しっかりと見張っておいておくれ
いいね?」
「はい お玉様、私達もこの城下の、復興作業が終わり次第、岐阜城に向かいます」
「ああ 頼んだよ」
そう言うと、身を翻し妖狐の姿へと戻り 風のように部屋を出ていく 妖狐
「お玉様、なんだか元気がなかったですね?」
お雪が、独り言のように呟く
「ここ数日は、何か考え込まれていたような、お玉様にも、色々と思うところがあるのでしょう。。。」
ネボアは、京の上空を漂っていた
様々な身分の人間共に憑依を繰り返し、民の暮らしや、人間の生態、この国の有り様や
歴史、宗教等など ネボアの知的好奇心を大いに満足させていた
相変わらず、内裏や下鴨神社、二条城と呼ばれる区画には、結界が張られており
侵入することが、叶わずにいる事がもどかしくはあったが
いずれ自分が、もう少し力を付ければ、この結界を破れるという確信があった
そしてもう一つ、この都に到着してから半日の間 ネボアにちりちりっとした視線を
向け続けている者の居所を突き止める
都の西 小高く盛り上がった山々の一角 鬱蒼と生い茂る竹林にそれは居た
吸い寄せられるように竹林へと近づく ネボア
“なるほど、京の都のあちらこちらに結界が、改に張られたのは貴様のせいか”
ネボアの脳に直接語りかけてくる存在!? 人間では無く、ましてや生物でもない
憑依し正体を突き止めたいが、本能が危険だと警鐘を鳴らす
“話せぬのか? 数ヶ月も前に、京の町を焼き払った竜の縁の者であろう?
あの時は、久方ぶりに痛快であったぞ”
母竜ベヒーモスの事を、言っているようだ
目を凝らすと竹林の中 地上から5mほどの所に、まるで質量を感じさせない
曖昧な輪郭の存在を発見する
気配は感じていたが、凝視しなければ見つける事もできない
あるいは、相手が、見つけられるように姿を現したのかもしれない。。。
“ああ お前に興味を持ったのでな 数百年ぶりに顕現してみたが 久し振りで
どうにも霊力が不安定でな ちょっと待っておれ”
考えたただけで伝わっているというのか?
“ああ そう言う事になるな”
ネボアは、憑依した人間の話し言葉の中から、身分の高い者の言語を選んで頭の中で
話してみる と言っても頭の中に思い浮かべるだけだが
“貴方様は、誰なのでしょう?”
“この国に深い憎しみ、恨みを持つものじゃよ ある意味でお前と似た存在ではあるな”
ぼやけていた輪郭が少しずつ実体を持ち始める
“そう言う事でしたら お互い助け合える事もあるかもしれません”
“ほう お前の望みはなんじゃ? 言ってみろ”
“この世界の生物を根絶やしにする事です”
“ふむ それも一興よのう しかし、あの時のように火の海にするというのか?
余は、恐怖にうち震え、絶望の中で息絶えていく姿が、見たいのだがな”
より輪郭が鮮明になり 人間たちの言う夜叉を思わせる姿が現れてくる
“我等ならば、それも可能かと。。。お名前をお聞かせ願いますでしょうか?”
“余は、400以上も昔 この国の帝だった。。。”
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