岩村城決戦2
強く降りしきる豪雨の中、突き進む数百本もの槍
荒れ狂う竜巻の中で渦巻く雷撃と、ルイの黒い太刀が3体の竜を切り刻む
《ルイ!しっかり捕まってるんだよ!!》
さらに8尾を大きく振り、上昇すると蛇行しながら、唸りを上げ地上の瓦礫までもを
巻き上げ、まるで生き物の様に、縦横無尽に駆け回る
そこに次々と放たれる、妖狐の風刃 ルイの黒い太刀 大嶽丸の凍える槍
風速を増し、膨れ上がる凶悪なまでの竜巻の中に、ときおり浮かび上がる3体の黒い影
自然界では、決して起こりえない猛威の中で、もみくちゃにされながら雷撃が身を貫き
研ぎ澄まされた刃が、身を削っていく
これで決める!!そんな思いが込められた 妖力が魔力が鬼通力が荒れ狂い吹き荒れる
竜巻の中 時間にして、3分足らず
10秒と生きていられる生物など居るはずもない この世界の歴史を振り返っても
生物を滅するためだけに、これほどの術が行使された事などなかったのだから。。。
少しずつ収束していく。。。まったく視界の効かない竜巻内部で爆ぜる放電
大きく肩で息をしながら、言葉も無く薄れていく暴風に目を凝らす 妖狐、ルイ、大嶽丸
息を呑んで見守る 岩村城の人々 胸の前で手を組み祈りを捧げる おりん
粉塵の晴れていく空間に浮かんでいる3つの影
四肢を尻尾を、力無く垂れ下げ、母竜ベヒーモスを庇うように、その背で守る兄弟竜
全身を刃物で抉られ、表皮が捲れ上がり 雷撃で肉を焼かれ煙が上っている
「落ちていない!? 生きているぞ!!」
魔力を、振り絞り全身を鬼化する ルイ
兄弟竜の双眸が開き、赤い強烈な光を発する
赤と黒のバハムートの咆哮と共に、強大な質量をともなった息吹が放たれる
“ぎゃっああああああああぁぁぁぁぁぁおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!!!”
赤い暴流と黒い暴流 龍のうねりの様に赤と黒が螺旋に絡み合い
一直線に岩村城に牙を向き、唸りを上げながら突き進む
荒れ狂う暴風に身を任せ、全身を削られながらも、この2体は魔力を、練っていたのだ
恐るべき忍耐力に精神力を持って ネボアが融合したからこその僥倖
ありったけの依代が空中を舞う 次々と大嶽丸を模し実体化していく
避けることは出来ない 岩村城をおりんを守らねばならない
隣に居る 妖狐を弾き飛ばし、射線の外へと推しやる
四肢を目一杯まで広げ、後ろには、何者も通さないという覚悟で残った通力を防御に振る
“ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!”
赤と黒の息吹に呑み込まれ、一瞬で燃え尽き、消滅していく依代達
“ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!”
大嶽丸を守るように立つ、最後の依代もじわじわと消滅していく
“くぅおおおおおおぉぉぉぉんんんーーーーー!!!!!” 妖狐の咆哮が大気を切り裂く
そんな妖狐に振り向き 大嶽丸が笑った気がした
息吹を全身で受け止め、身体の全面がブスブスッと焼けただれていく
歯を食いしばり、決して倒れぬ!おりんを守る!それ以外の思考を有さず
ついには、ボロボロと炭となり崩れ落ちていく肉体
赤と黒の息吹が途絶え、力尽き落ちるように地上へと着地する 2体の兄弟竜
頭から地上へと落下する 大嶽丸 狂ったように叫びながら岩村城を飛び出す おりん
「お玉様!ベヒーモスの息の根を止めるのは、今しかない!!」
力無く浮遊しているベヒーモスに一撃を与えるべく、妖狐の背を蹴る ルイ
弾丸のように一直線にベヒーモスの喉元に向け飛ぶルイに、妖狐の風魔法が強烈な追い風となり、さらに加速させる
それに反応した兄弟竜が、赤い息吹を妖狐に、黒い息吹をルイへと放つ
すべての尾で全身を覆い隠した妖狐を豪炎が包む
全身を鬼化したルイが、その両腕をベヒーモスの喉元に喰い込ませたと同時に黒い波動が
ルイの半身をゴリゴリと削っていく
未だ降り続く大粒の雨が、妖狐の燃え盛る炎を鎮火させていく、同時におりんの治癒魔法が傷ついた身体を癒やしていく。。。
《おりん!私は、大丈夫だから。。。大嶽丸を。。。》
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