空中戦
大気を切り裂き、滑空して行く ルイ
山々に囲まれた、美しかったであろう岩村城の城下町も、三方からじわじわと火の手に呑み込まれていき、岩村城周辺の家屋だけが、わずかに無事な事が、上空より確認できる
前方に鳴海城の上空で感じた 魔力と瘴気の入り混じった不快な存在を感じる
空間収納より、童子切安綱を取り出し魔力を通すと、刀身が鞘から剣先に向かって漆黒に染まっていく
「たらふく酒を飲ませただろう?働いてもらうぞ!酒呑童子!!」
ほんのわずかに歪んだ空間の中心に、降下する勢いのままに剣先から突っ込んでいく!!
地上での殺戮の宴に酔いしれていたネボアは、上空より迫るルイの凶刃に気づくことなく
霧散していく
“ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!”
大気を揺るがす悲鳴にも似た咆哮に、地上で暴虐の限りを尽くしていた3匹の竜が一斉に
上空を仰ぎ見る
『あいつだ!一度ならず2度までも!!憎いっ!憎いっ!憎いっ! まさか向こうから現れるとは 殺せっ!殺せっ!殺せっ!』
ネボアの意思に応えるように、3匹の竜が同時に火球を吐く
皮膜を広げ、急制動をかけ、難無く火球を回避すると北側に居る母竜に向けて
殺生石の鏃に風魔法を乗せ、指弾で飛ばす
「久しぶりだなベヒーモス!!好き勝手出来るのも、ここまでだ!!」
地上すれすれを飛び、2匹の兄弟竜の間を注意を引きつけるように飛び
すれ違いざまに左右同時に風刃を飛ばす 妖狐
上空のルイヘ火球を放った姿勢のまま喉元に風刃を受け 一歩後退るが
損傷を受けた様子もなく、ルイから妖狐にと標的を切り替え、2匹同時に翼をはためかせると、追撃の火球を吐く
追撃を避ける為に、そこから垂直に上昇し8本になった尾を誇らしげにくゆらせる
《おりんすまないね あんたを降ろす暇がなかったよ、2匹をルイから引き剥がすよ》
「大丈夫です! 私も戦えます!!」
《じゃあ 行くよ!!しっかりと捕まっているんだよ!!》
8本の尾を大きく広げると、その場で一瞬の間だけ滞空し
迫りくる2つの火球に、更に大きな火球をぶつけ相殺する
ぐんぐんと上昇し迫りくる2匹のバハムート 口を大きく開き、その鼻先で
豪炎が渦を巻きながら、解き放たれる時を待っている
《ちょっと やばいやつだね》
「大丈夫です!任せて下さい!!」
妖狐を守るように、妖狐の足元に2枚の結界障壁が張られる
バハムートの頭部よりも巨大になった豪炎が満を持して放たれる
大気をも焼きながら、迫りくる豪炎球
《まともに受けたら、駄目だ!》
結界障壁に僅かな角度をつけ、その衝撃を右上空へと逸らすことに成功するが
“パリンッ”と音を立てて消滅する 結界障壁
更に迫る もう一つの豪炎球も左上空へと逸らし ほっと息をつく おりん
「確かに、まともに受けていたら危なかったですね」
《安心するのは、早いよ!》
8本の尾を、螺旋を描くように回転させると、突風が2匹のバハムートを襲い
突進してくる勢いを殺す 更に大きく回転させ、大気が渦を巻き巨大な竜巻が円錐状に
唸りを上げながら、バハムートを呑み込む
“ぎゃあああおおおおぁぁぁぉぉぉぉぉっっっ!!!!”
竜巻に抗おうと、必死に風の流れに逆らい翼を動かす バハムート
その渦の中に次々と風刃を放り込んでいく 妖狐
吹き荒れる竜巻に揉みくちゃとされ、数百の風刃が2匹のバハムートの表皮を削っていく
「お玉様!これは凶悪な術ですね!」
《術なんて呼べるものじゃないよ ただの力押しさ、これで倒れてくれるといいんだが》
全身の毛を逆立てる妖狐に、晴天の青空を引裂き巨大な稲妻が幾本も集結する
それを8本の尾で受けると、大きくひと振りし竜巻の中へと放電させる
吹き荒れる風と刃の中、落雷が襲う 堪らず意識を手放しそうになる2匹
“ぎゃあああおおおおぁぁぁぉぉぉぉぉっっっ!!!!”
“ぎゃあああおおおおぁぁぁぉぉぉぉぉっっっ!!!!”
静かに止んでいく竜巻“”どさっ!どさっ!”と山の、中腹に横たわる2匹のバハムート
《おりん あんたを、あの山城に降ろすよ》
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