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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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信玄と家康 1

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一夜明けた 天守曲輪の一室 上座に武田信玄 

右に真田幸隆 左に山県昌景 下座に徳川家康


「さて徳川殿 久しいな 積もる話もある 2人で話したかったのだが 小奴らがどうしても同席するとうるさくてな」

「お久しぶりで御座います 武田信玄公 敗軍の将に縄も打たずに話をさせる臣下も居りますまい」

多少汚れてはいるが凛とした佇まいを見せ 肌艶も良い

「初めに言っておくが、お主が投降した後 誰一人として傷つけてはおらぬぞ 百姓共は郷に帰し、榊原、酒井を筆頭とした家臣たちは、近くの寺で待機しておる 

十分に食わせているので案ずるな」驚いた面持ちで信玄を見る 家康

「この上なき、ご配慮いたみいります」本心より頭を下げる

当たり障りのない近況、世間話に静かな時が流れる


「徳川殿 お主の目には、わしがどう見える?」

「はい 体調を崩されたと聞いておりましたが 肌艶もよく

 まるで10歳も若返ったかのように見えまする」実際に3年ぶりに会った信玄は、生気に満ち溢れているように見える

「天は、わしを選んだようじゃ 織田信長ではなく、わしをな」

「。。。。もとより、そうだったのでしょう」

「わしも、そう思っておったが そうではなかった」

含みのある笑いではなく、まるで子供のような笑みを浮かべる

「正直なところ、わしの寿命は、そう長くはなかった 春まで保たなかったじゃろうな 己の身体じゃ 自分でよくわかっておった」

黙って信玄の話に聞き入る 家康

「しかしじゃ 天は、わしに最強の槍と鉾を使わされた」

「槍。。。」家康の顔が、わずかに青に染まる

「槍じゃ お主もこの場でルイを見たそうじゃな?」

言葉もなく、肩を震わせる家康

「あれが、最強の槍じゃ」

「あの者が、天より使わされたと!?」唇を震わせ声を荒げる

「その目で見たのじゃろう? 信じぬのか?」双眸で家康を射る

「信じるより有りませぬな あの忠勝が一瞬で。。。」

「付き人じゃそうじゃ あのルイなる者は、天女殿の付き人じゃそうじゃ わしは、その天女殿に命を掬っていただいた」

両の手で水でも掬うような仕草を見せる

「な なにを!?」瞬きもせずに家康を見続ける 信玄

思考を巡らす 家康 しばしの沈黙が。。。


「何故 信長に付いた? 同じ源氏の子孫として お主には期待しておったのに」家康から視線を外し 両の手に視線を落とす

「信長殿には、今川より救っていただいた恩義があります故に」

「それは、結果論であって、お主を救うために動いたわけでは無かろう」

家康を見て、さらに言葉を続ける

「わしは、100まで生きるぞ 信長がわしに勝てると思うか?」

「この日の本で、武田に。。。いや武田信玄公に勝てる武将は

 居りませぬ 此度の戦で思い知りました」

なにかが、ふっ切れたような笑みを浮かべる 

「わしはな、源氏を再興したいと思っておる 鎌倉いや東国に

 本当の強い幕府を興す」

「夢でございますか? 叶うのであれば 見てみたいものです」

「夢に聞こえるか? この源信玄が戯言を申すと?」

両脇に控える真田幸隆、山県昌景が両の手を握りしめ、顔を紅潮させる 家康自身も紅潮させ この部屋の温度が上がったようにさえ感じさせる

「信玄公が言われますと。。。造作もない事のように聞こえますな」その言葉を聞き まるで子供のように嬉しそうに笑う 信玄

「お主は、何を望む?」

「私は、この首と引き換えに我が家臣の助命を。。。」

畳に額を擦り付け もう一度繰り返し嘆願する

「何卒!」頭を下げつづける

「頭を上げよ わしはな、この日の本の武士、百姓に到るまで これ以上の無駄死にを出したくはない 強い幕府を興すためにもな」

ようやく頭を上げた家康に、説くように言葉を続ける

「これまでのわしはな、甘かったのじゃ 盾突く気も起きぬくらいの力を見せつけておれば これほどにこの国が乱れることもなかっただろうに」部屋の温度が更に上がる


「徳川殿 後ろを見られよ」家康が後ろを振替えると

次の間の襖がゆっくりと開く


そこには、布団がひかれ面布を掛けられた 何者かの遺体

布団の向こうには、白い着物を着た 美しい女が座っている



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