毘沙門堂
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越後に入り、関川に沿って北上する
春日山城跡を、左手に見ながら上杉景勝に聞いていた通りに、さらに北進し日本海に突き当たる
日本海の荒波に剤られた、切り立った崖に立つ
「あの夫婦岩を正面から見た崖を降ったところに、家臣でも知らない 秘密の毘沙門堂があるそうです 無事で居てくれると良いのですが」
左手の沖に見える夫婦岩と言われる、2つ並んだ奇岩を指差す
「上杉謙信公といえば、この国で武田信玄公に並ぶと言われる豪傑です きっと無事で居られるでしょう」
「では、行ってみましょう」
海岸線を夫婦岩を目印に西に進んで行く 20分ほど進んだところで
「この辺が、ちょうど夫婦岩が正面に見えるようですね 降りてみましょう」
切り立った崖から、30cmほど張り出した岩場を足場にして、海に向かって降りていけるようだ
苔むした崖を左手に、夫婦岩を右手に見ながら降りていくと岩肌に洞窟の入り口が現れる
先を歩いていた 忠勝が足を止め、中を覗き込む
「天女様、どうやらここのようです」
中から、呪文のようなものを唱える男の声が微かに聞こえてくる
「入ってみましょう」
「オン ベイシラ マンダヤ ソワカ オン ベイシラ マンダヤ ソワカ
オン ベイシラ マンダヤ ソワカ オン ベイシラ マンダヤ ソワカ オン ベイシラ マンダヤ ソワカ。。。。。」
上杉謙信が唱えているであろう、毘沙門天の真言が洞窟の奥から聞こえてくる
「忠勝殿、上杉謙信殿は、どうやら無事のようです」
忠勝を先頭に洞窟の奥へと歩みを進める
毘沙門天像が洞窟の最奥に設置され、その両脇の燭台に明かりが灯る
毘沙門天像に対面し座禅を組む、長髪の男の背中にエヴァが声を掛ける
「失礼します 上杉謙信殿とお見受けいたします」
「ふむ。。。待っておったぞ、そなたが“時空を超えた者”か。。。」
振り返りもせず、返答する 上杉謙信
「“時空を超えた者”かは、解りませんが 貴方を救いに来ました 間に合ったようで良かったです」
「毘沙門天より、“時空を超えた者”を待てとお告げがあった」
そう言うと、体ごとゆっくりと振り返り 2人を目を凝らしながら見る
「もしも、お告げがなければ、涅槃へと導く者かと見紛うほどの美しき天女と、それを護る鬼神と思っていたろうな」
そう呟く 上杉謙信の頬は痩せこけ、無造作に伸びた無精髭に落ち窪んだ眼窩が痛々しい
「この洞窟の入り口に結界を張りました 休まれても大丈夫ですよ」
「ほう 陰陽の術か。。。そなた等を信じよう 話したい事もあるが、5日間ほど眠ることも出来ず、飲まず食わずでな。。。気を緩めると、あやつが頭の中に入ってきそうで
真言を唱え続けるより術が無くてな 少し休ませて貰うとしよう」
「安心してお眠り下さい 拙者と天女様でお護りしますので」
本多忠勝が言い終わらぬうちに、横になり寝息を立てている
自分の羽織を脱ぎ 謙信にそっと掛けてやる
洞窟の入り口脇の大きな石に腰を掛け、日本海を眺める エヴァ
その横に何者も通さぬと仁王立ちで腕を組む 本多忠勝
「見て下さい 忠勝殿、あの夫婦岩は、この海の荒波の中で太古より寄り添っているのでしょうね 大きな方の岩が小さな方の岩を守るように、これからもずっと」
「天女様 どのような荒波が押し寄せようとも、どのような強大な敵が立ちはだかろうともこの命が尽きるまで、拙者が貴女をお守りします」
「1つ貴方に言っておかなければならない事があるのですが。。。。火竜達との戦いを もしも生き延びる事が出来ればなのですが。。。あまり面白い話では、ないかもしれませんが聞かれますか?」
「天女様の話でしたら、どのような事でも聞きたいです 聞かせて下さい」
はるか上空より、洞窟の入り口を覗う ネボア
憑依する隙きを5日間に渡り、伺い続けて居たが 毘沙門天の真言の効力が強く
あの人間の体力が尽きるのを待っていたところに、見覚えのある 人間の女が現れる
自分の生みの親であるベヒーモスの尾を切り離した女が、自分の獲物が籠もる洞窟に
強力な結界を張り、こちらを見つめている
実に邪魔な存在だ! しかし今の自分では、敵わないことは本能で理解できている
ならば、次の獲物を探さねば。。。西の空へと消えていく ネボア
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