夢屋
老婆の息子に先導され、宿の2階にある南側の角の部屋に案内される
木製の引き戸には、部屋番号だろうか木札に[与夢·弍号]と書かれている
なんとなく気になったエヴァが木札を指差し聞いてみる
「あのこれは、どういう意味なのでしょう?」
「ああ これですか、この宿屋は〔夢屋〕と言いまして先代つまり、あっしのお父が始めたんですが お客さんに良い夢を与えられるようにって各部屋に[与夢]って、この部屋が2号室って意味です」
「なるほど、“よむ”ですか。。。良い名付けですね ねぇ忠勝殿?」
「。。。。天女様と。。。。同室。。。。。」まだ壊れているようだ。。。
部屋へと入ると、8畳ほどの部屋に座卓が備えられ、部屋の西側の窓からは、月明かりに照らされた琵琶湖が見える
「食事は、間もなくお持ちしますので、その前に当宿自慢の風呂で汗をお流しください 離れに御座いますので、どうぞごゆっくり」
座卓を挟み、ぽつねんと残された2人
「たまには、ゆっくりするのも良いですよね 越後の事は、気になりますが 今は、忘れましょう」
「はい 天女様。。。」どこか上の空で応える 本多忠勝
『まだ、壊れているようですね。。。?会話が続かないです。。。』
「夢屋とは、良い名前の宿ですね。。。忠勝殿の夢は、なんですか?」
「私の夢は。。。天女様に好きだと伝える事です。。。」
「「えっ!!!!?????」」同時に座ったまま飛び上がる 2人
「あわわわわっ 拙者 今 何を言いましたでしょう!!??」
「えっ!?えっと。。。私の事が好きだと。。。」
真っ赤になり、見つめ合う2人 気まずい時間が流れる。。。
「あの。。。お風呂頂いてきます 忠勝殿も食事の前に汗を流されたらどうですか?」
部屋に用意されていた、浴衣と手拭いを持ち 離れへと向かう
“湯”と書かれた 青い暖簾を通り過ぎ 赤い暖簾をくぐる
『忠勝殿の夢は、私に好きだと伝える事。。。夢が叶った訳ですね!
私の夢は、何なのでしょう? この国の誰にも犠牲を出さずにベヒーモスを倒す事
それが、私の夢!? これは、夢では無いわね。。。使命?』
そんな事を考えながら、脱衣所を出て浴場へと入る
藁葺の屋根が掛けられ、竹垣で覆われた 思った以上に広い岩風呂は、琵琶湖を望みながら浸かることができる 自慢の風呂だと言うだけはある
湯けむりに霞む岩風呂の奥には、1人先客が居るようで頭だけが、湯船に浮かんでいる
『天女様だ〜!!?? なぜ天女様が!!!???』
ここ数分の記憶を辿ってみる 忠勝
部屋で、天女様に食事の前に風呂に入れと言われた俺は 天女様の後を追うように
離れの“湯”と書かれた青い暖簾をくぐり、脱衣所から出ると湯を浴びて湯船の奥に
肩まで浸かっていると、自分の出てきたのとは別の出入り口から、浴場に入ってくる
人影が。。。湯煙に目を凝らす
『天女様だ〜!!?? なぜ天女様が!!!???』今がここ
『つまり この浴場は、脱衣所は男女で別だが、浴場は中で一緒になっている訳か
などと落ち着いて考えている場合ではない! 声を掛けるべきか!?
しかし、この強化された視力で天女様の一糸纏わぬ姿を見てしまったぞ!?
というか今も凝視し続けているぞ! 視線を逸らそうにも、自分の意志の力では
引き剥がす事が出来ないのだが!?
あ〜 もう思い残す事など無いかもしれん 頭もボーッとしてきているし
これは、お迎えか!? 罰があたって、お迎えが来ているのか。。。!?』
そして天女様が湯船へと入ってくる
「こんばんは、良い湯加減ですね」
ブクブクッブクブクッ 湯船の中に深く沈んでいく 本多忠勝
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