天女の目覚め
首元から、胸にかけて温かな何かが、肌を伝う
鳥たちが朝を告げ囀る声、窓から差し込む陽光 衣擦れの音。。。
「えっと。。。ここは?」魔力切れを起こした、とき特有の頭痛に顔をしかめながら
上半身を起こそうと試みるが、胸の上に乗った、細く白い腕に思い留まり
右側に横たわる、腕の持ち主を見る 『お雪ちゃん?。。。じゃない。。。わね』
「あの。。。おりん様」自分に寄り添うように眠る おりんの腕を叩いてみる
寝ぼけているのか、いっそう強く足を絡めてくる おりん
頭だけを起こし、置かれている状況を確認してみる 白い薄手の襦袢の胸元がはだけ
おりんの右手が左の胸を包み込むように乗っている 首を右に向け おりんの顔を覗く
産まれたての赤子のような、汚れなど微塵もない美しく白い頬に、あまりにも可愛く
あまりにも愛おしく 唇を寄せたい衝動に襲われる 『これは、いけない!?』
「おりん様! 朝です!!」思いの外、声が大きくなった事に驚く エヴァ
「あっ おはようございます 天女様 ようやくお目覚めになられましたね」
心の底から、安心したと言うように微笑む おりん
「はい えっ? 私は、そんなに眠っていたのでしょうか?」
「はい 叔父上の治療を終えてから 丸2日間も眠られていました それで心配になりまして。。。私の通力を少しづつ天女様に、お渡ししていたのですが、そのまま私まで眠ってしまったようです」
「2日もですか。。。皆が心配していますね あの、この着物は誰が着替えさせてくださったのでしょう?」
「はい私が。。。お体も拭かせて頂きました、汗をかかれていたようなので」
俯き、頬を染める おりん
「は。。。はい ありがとうございました おかげて魔力も回復したようです」
おりん以上に、顔を赤くする エヴァ
「あの天女様、おりん様と敬称は辞めて頂けませんでしょうか? 出来ればおりんと」
「あの。。。それは。。。では、おりんちゃんで宜しいですか?」
いつもの巫女の衣装へ着替えると居間へと向かう
「おはようございます あらっお玉様の、その姿は、噂に聞いた美福門院様ですね?
噂通りの美しいお姿ですね」
「ああ 念話で話さなくてもいいし 風呂にも入れるのは有り難いね」
「あの。。。天女殿!! 助けて貰ったうえに、治療までしてくれたそうで 申し訳なかった 礼を言う」大きな体を縮ませて 頭を下げる 大嶽丸
「あんた 天女にさんざん失礼な事を言っていたよね?」
「いや。。。その。。。」額に汗を浮かべ うろたえる
「お玉様、もうその辺で許してあげて下さい なんとか間に合って良かったです」
「この馬鹿はね このくらい言わないとわからないんだよ! あんた天女が居なければ、間違いなく死んでいたんだよ!」
「叔父上 もう無茶は、なされないと約束してください!」
「ああ わかっている 火竜も思った以上に強かったが。。。火竜にとどめを刺そうと
太刀を振り下ろした瞬間 俺様の頭に何者かが侵入しようとしてきたんだ 思い出しただけで気持ちの悪くなる感触だったが、奴の記憶の断片のような物を見る事が出来たぞ」
「あれは、怨霊や悪霊の類いだと思うんだけどね。。。どうなんだい?」
「火竜からは、ネボアと呼ばれているようだ あとは、火竜によく似た幼竜が2匹火山の奥で育てられているな
ネボアの能力だが、生物に憑依して、さらに周りにいる個体を洗脳しやがる 御嶽山の近隣の村で村人に憑依して洗脳した村人を引き連れて御嶽山の火口から身を投げさせ 幼竜どもの餌にしていたようだ なんとも胸糞の悪い能力だ!!」
「あんたが奴の記憶が見えたように 奴もあんたの記憶を盗んでいるんだよ ここも安全とは言えないかもしれないね。。。」
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