鬼蜘蛛
鮮やかな、金色の光に包まれる5重の魔法陣 その中央で、その光により溶け合わされていくように見える【鬼丸】と黒い手甲 やがて弱く小さくなっていく金色の光の中で
一際、その存在を主張するかのように黒光りする一対の手甲。。。
「アラン、手に取ってもいいか?」 静かに頷く アラン
まず1つを手に取り、しげしげと見つめるブルート
「両方とも同じ形状で、どちらが右か左かもわからないんだが?」
それは、湾曲した黒い板状で、留め具も無ければ左右を示す為の指通しも無い
仕方なく、右手の甲に手甲を置いてみると、シュルシュルっとまるで黒い生き物のように触手が伸びていき、たちまちのうちにブルートの右手の肘から手の指までを覆い尽くす
指先が鉤爪のように鋭く伸び、手首から腕に沿って魚類のヒレのような形状のものが肘にまで張り出している
「何処かで見たことがあると思ったら、ルイの部分鬼化に似ているな、僅かだが土蜘蛛の意識も感じ取れる なるほど。。。わかった」
左手をもう一つの手甲に向けると、右手の手甲と同じように触手が伸びていき
左手の肘から指までを覆い尽くす 右手の手甲と異なるのが、手の甲から肘までにヒレのような隆起物が無く、蜘蛛の腹部を模したような円形の蛇腹が小型の盾として存在する
ブルートが軽く右腕を振るうと、シュンッという音と共に、一瞬でヒレのような隆起物から【鬼丸】であったであろう漆黒の刃が現れ 左手の盾を胸の前で翳すと蛇腹の関節部分がギチギチッと蠢く
「「「「「「かっこいい!!!!」」」」」」男の子達から、歓声が飛ぶ
「「ちょっと気持ち悪いです。。。」」女の子には、不評なようだ
「ありがとうアラン これは凄いよ」ブルートが薄く笑い 両手の指を広げる
まるで墨汁でも、ぶちまけたかの様に黒い糸が指の先から噴出され教室全体が己の縄張りだと言わんばかりに、立体的な蜘蛛の巣が張り巡らされる
驚いて動いてしまった 何人かの子供達が絡め取られる
「「「「ブルート先生 助けて下さい!!」」」」
「そうだな。。。錬成の授業中だったが、急遽変更して 魔力で出来た蜘蛛の糸から逃れる実習にしよう!」
そう言い、指を一握りすると、たちまち絡め取られる 子供達
茶々が雷撃を通すが、蜘蛛の糸に吸収され
真田幸村が水刃を飛ばし数本を切断するが、新たな糸が伸び幸村の手足を縛る
伊達政宗の業火が糸を焼き尽くそうと発火するが、粘性の糸の前に容易く鎮火する
しばらくの間、悪戦苦闘する子供達 そんな中、唯一人だけブルートの蜘蛛の巣から逃れたのが大谷屋千代である
誰一人も気づくことなく、アランの横にちょこんと立っていたのである
「えっ!? お千代どうやって逃れたんだ?」目を丸くして驚く ブルート
「あの。。。私にも、良くわからないのです ただこの糸から逃れアラン先生のそばに行きたいと願っただけなのですが。。。」私が聞きたいですと キョトンとした表情の千代
「夢の精霊 サンドマンか、お千代 何が出来るのか、解明していかないとならないな
ちなみに他の人を助けて、抜け出させる事は出来るか?」隣のアランを見る 千代
最初は力任せに糸を引きちぎっていたが、さらなる糸に絡め取られ 今や両足が床から浮いている状態でもがくアラン
「やってみます!!」
それから、しばらくが経ち 教室中が黒い糸で埋め尽くされ お千代もアランを逃がすことは叶わず ブルートがパチンッと指を鳴らすと、なんの痕跡も残さずに霧散する糸
ふぅーと疲れ果て息を吐く 面々
「皆 ありがとう、面白い統計が取れたよ なんの属性に強く、逆に弱いかとかね
千代の夢の精霊サンドマンによる、興味深い事象も見れたしね」
「「「「「「「「ありがとうございました ブルート先生!!!」」」」」」」」
「アランありがとう とても気に入ったよ これには【鬼蜘蛛】と名付けるよ」
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