あやかしどもが夢の跡2
《大嶽丸は生きているのかい!!》
少し遅れて妖狐が降り立つと同時に叫ぶ
「危険な状態ですが、なんとか生きています」
《あたしは、火竜を追うよ!》
「駄目です! すぐに鈴鹿城に大嶽丸様を運びます」
《あんたも見ただろう! あのベヒーモスとかいう火竜も虫の息だったじゃないか!?》
「お玉様!ここの魔素は瘴気に汚されていて、これだけの深手を治療する事は不可能です しかも火口の中は、数千度を超える高温ですよ。。。わかってください」
《ああ。。。。。。。すまない取り乱してしまったようだね 私の背に乗せて運ぶよ》
そう言うと、小さくなり大嶽丸を動かさないように体の下に潜り込み 徐々にゆっくりと大きくなっていく妖狐 その背にエヴァも飛び乗る
「大丈夫ですか? 重たくないですか??」
《重たいね。。。おりんに妖力を貰っておいて良かったよ 飛ぶよ!》
「はい お願いします この瘴気を抜けたら治療を始めます」
グルルルルルルルッ グルルルルルルッ グルルルルルルッ
子供達の待つ岩棚にドサリッと身を投げる 尾の先端は切断され
身体には数本の槍が残る 雷撃のおさまったその槍を2匹のバハムートの幼竜が器用に抜いてくれる ネボアは無事だろうかと首を巡らせると、少し興奮した様子で飛び跳ね漂う
気配に安堵する ベヒーモス
危なかった。。。己のこの尾を切断した魔力には、覚えがあるが 少しの間に異質な力を取り込んで、より強大になっていた
そして、その後を追ってきていた黒鬼と似た妖力を持った存在 憎悪を剥き出しに叩きつけてきたが、それだけで身が縮んだ この世界にも強者が多々いるという事か。。。
この子達を、より強靭に育て上げねばならない そう心に誓うベヒーモスであった
ネボアは興奮していた 自分の母親に勝るとも劣らない高位の生物の精神に一瞬であるが
侵食したことで、自我が芽生えかけていた
父ともいえる、黒魔術により誕生した怨念の塊で生物に憑依し操る能力を持った怨霊と
母とも言える、異世界で地上最強と謳われた四足獣の間に生まれた 霧の魔獣ネボア
共に生を受けた 2匹の兄弟は、母の特性を強く継いだようだが、自分だけが父の特性
のみを継いでいるようだ 今後どのような進化を遂げるのかは不明だが
この2匹の兄弟を使って、この世界を絶滅するという欲求に従い行動の指針を決めていく
なかば本能で行っていたが、近隣の生物の群れを洗脳して兄弟たちの餌にしていたのも
その一貫だ 大事な駒は、大切に強靭に育て上げなければいけない
そしていずれは、自分の目に見える範囲すべての生物の命を狩ることで怨霊である自分の
本懐を遂げるだろう
この世界に生物が存在しなければ 怨む事が叶わぬのだから、成仏するより無い
つまり怨霊である、自分が成仏する為には、すべての生命を狩り尽くせばよいのだ
その為には、誰に憑依し操れば良いのか。。。もっと見聞を広げねばならない
鈴鹿城
飛行する、妖狐の背で治癒魔法を掛け続ける エヴァ
人間や他の生物と異なり、神に等しい高位の者の治療には、複雑な魔法の構築と時間が必要になる
眼下に鈴鹿城が見え、ゆっくりと下降を始める妖狐
「叔父上!!」
《大丈夫 死んじゃいないよ 天女が居てくれなければ死んでいたけどね。。。》
「このまま治療を続けます 横になれる部屋をお願いします お雪ちゃん、運ぶのを手伝ってくれますか?」
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