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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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魔法の種3

“我は汝と契約を結ぶものなり 魔力を司る精霊よ この者に汝の力の欠片を植え与給え”

真田幸村の額に添えられたブルートの右手が仄暗く光り

植物の根のような触肢が幸村の頭部に絡みつく

幸村の体がドクンッと波打ち、雷にでも撃たれたかのように大きく仰反る

真田昌幸が両手を強く握りしめ事態を見守る

武田勝頼の喉がゴクリッと鳴る。。。

仰け反った頭部がゆっくり起き上がり、落ち着いた眼差しで自分の両手を見つめる 幸村

「父上、天女様。。。なんだか不思議な感覚です 力が漲っているような。。。自分の体では無いような」

両足を肩幅に開き、腰を落とす 息をゆっくりと吸い込みながら丹田に留める 両足の爪先から青い光が上がっていき丹田にて渦を巻きながら眩しいほどの輝きを放つ、その輝きを胸の前に付き出した両手へと集め

いつもの要領で光の玉を作ると人の頭部ほどもある水球が胸の前で浮遊する 

波打ち仄かな輝きを放つ水球 驚きに目を見開く 幸村

と同時に水球が崩れ 床にバシャッとこぼれ落ちる

幸村の体が、糸の切れた人形のように力無く崩れ落ちるところをブルートが支える

「魔力切れですね 成功です 彼は、この世界の人間で初めて魔力を行使した人間となりました」

ほっと溜息を吐く一同 ブルートの手から息子を受け取り、その顔を見つめる 真田昌幸

「でかしたぞ 幸村! お前は、我が一族の誇りだ」




虚ろな目を足元にだけ向け、御嶽山の麓の王滝村の西側を抜ける20名ほどの集団

この20名の高齢者ばかりの集団は、王滝村から東に20キロほどの川上村から早朝に出立し、御嶽山の山頂に向け皆が、黙々とただひたすらに歩き続けている

その着衣から、一般の農民のようであり、修験者のそれとは明らかに異なる

腰の高さまでもある下生えを掻き分け、道無き道を歩むが体力が尽きたのだろうか。。。

その場に崩れ落ちる老婆 すぐ後ろを歩む老人は、目を向けることも、崩れ落ちた老婆に手を差し伸べることもなく 当然のように足を前に前にと動かし続ける

太陽が西の稜線に姿を隠し始める頃

老人たちの足では、到底たどり着けるとは思えなかった行程が数人の脱落者を出しながらも終わりを告げる

しかし歩ききった者たちは、道半ばで倒れた者達が自分達よりも遥かに幸せだったと間もなく知ることとなる

御嶽山の山頂より西側に1段下りた噴煙の上がる火口に 先頭を歩いていた 他の者よりも身なりの良い翁が、すぐ後ろを歩いてきた老婆の背中を押す

なんの抵抗をする事もなく、火口へと1人、また1人と滑り落ちていく

はたして、どこで正気を取り戻したのだろうか? 吹き上がる高熱に身を晒した時?

岩棚に身を打ちつけた時? 突起した岩で四肢があらぬ方向へと向いた時だろうか?

火口に向かい響き渡る、聞く者の居ない 絶叫! 断末魔の叫び!!

待ち構えていた火竜が、足元に落ちてきた餌を貪り食らう 岩肌に、ぼろ布のように引っ掛かった肉塊を跳躍し貪る

そして最後の翁が自らの体を火口へと投げる その瞬間、翁の体がぼんやりと光り

赤い靄が老人の頭頂部より上空へと飛び立つ 次の憑依先を探して。。。


実体を持たないベヒーモスの末っ子が有した異能 生物の群れの中で影響力のある者を見分け憑依し、周囲の個体を洗脳するという 生みの親であるベヒーモスに取り憑いた者をも凌駕する異能

今日のように近隣の村で標的を物色、観察し適した者に憑依する そして集団から消えても影響のない者、声を上げて騒ぎ立てる者が居ない者を選別し洗脳していく

自らの親や兄弟の糧とする為に 

それは、決して献身では無い 自らの駒を早く強靭に育てる為の打算であった

この国の生物を根絶やしにするという宿命に向けて




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