印籠
摂津国 若江城下 とあるめし処
「おいおい 何やら騒がしいな」「キリシタン狩りだとよ」
「そんなもん どうやってキリシタンを見分けるっていうんだ!?」
「なんでも、奴らの神様が描かれている絵を踏めない者が、信者だとよ」
「なんじゃそりゃ!? 信者だろうがなんだろうが絵を踏みゃいいだろ??」
「ところがキリシタンってのは、絶対に踏めないんだとよ すでに何人かお縄になってるらしいぞ」
「はっ!? なんだそりゃ俺なら母ぁの顔でもなんでも、いくらでも踏むがな!!」
そんな男たちが会話する、隣の席で昼食を摂っていたエヴァ一行
「弥助、貴方はキリシタンですか?」小声で聞く エヴァ
「はい 先祖代々生粋のキリシタンです」
「その、あなた方の神、イエス様が描かれた絵を踏めと言われても踏めないですか?」
「それは、絶対に踏めません!!」
「踏まねば殺されると言われても??」
「はい 信者のほとんどは、死を選ぶと思います」
「それほどですか。。。それは、それで問題だと思いますが 助さん!」
急に名を呼ばれ 飲んでいたお茶に咽る 山本管助
「天女様、なんでしょうか?」
「この国には、信仰の自由というものは無いのでしょうか?」
「それは、非常に繊細な問題なのですが 南蛮人の貿易の条件に布教活動も含まれているのです ですから貿易を続けたい朝廷や旧幕府は、宣教師の布教活動を黙認していたというのが現状です これから将軍·武田信玄公も頭を悩ませる事になるでしょう」
「つまり基本的には、信仰の自由は認められているということですね?」
「そうなのですが。。。各領主に判断を任されているとも言えまして ここは三好義継が収める地なのですが、若江三人衆と呼ばれる家老衆の1人多羅尾綱知というものが大の付くキリシタン嫌いでして、おそらくその者の政策だと思うのですが」
「さすが助さんですね よく勉強されています」
「はっ 真田幸隆様のもと、日々精進しております」
「では、この目で確かめるとしますか」
若江城下の中心地である、若江鏡神社の門前にて踏み絵は行われていた
視覚と聴覚を強化し、離れた場所より、その様子を観察する
小さな女の子を連れた、若い母親が踏み絵の前に引きずり出される
「踏むのだ!! 女!!」
踏み絵に描かれたキリストと女の子を交互に見る母親 その顔には苦悶の表情を浮かべ
跪き女の子を抱きしめ 何度も「ごめんね ごめんね」と繰り返す
そして徐ろに振り返り、踏み絵に口づけをする
「キリシタンだ! この女を引っ捕えよ!!」後ろ手に縛り上げられる母親
その足元にすがり付き、泣き叫ぶ 幼い女の子 その女の子を背後から大きな影が包む
2m近い黒人の大男が胸に大きな十字架を垂らし 気配もなく女の子の後ろに立っていた
一瞬 唖然として立ち尽くす役人達 若い母親に縄をかけていた役人の襟首を持ち後方へと放り投げる 弥助
「無礼者!! 引っ捕えよ!!」10人もの役人が弥助を囲む
「勝さん、助さん、怪我をさせない程度にお相手して差し上げなさい」意地の悪い笑みを浮かべる エヴァ
無手で役人達を地面に叩きつける 弥助と本多忠勝
敵わぬと覚り 加勢を呼びに走る役人が1人 役人の持っていた縄で、動けなくなった役人を縛り上げていく
「お主ら、全員キリシタンじゃな!! 成敗してくれる、そこになおれ!!!!」
30人を超える帯刀した役人が一斉に太刀を抜く
ほど近い、若江城内より駆けつける役人たち
「天女様、あの一番後ろで騎乗しているのが、家老の多羅尾綱知です」
「なるほど、あちらも本気のようですね 勝さん、助さん、殺さない程度にお相手して差し上げなさい」
千切っては投げ、千切っては投げ、動かなくなった役人の山を築いていく 弥助
指弾を飛ばし、額に大きなたん瘤を作り気を失わせていく 本多忠勝
「お主ら、このような事をしてただで済むと思っておるのか!! このわしを誰だと思っておる!!!」 ただ一人残され顔を真っ赤にして喚き散らす 多羅尾綱知
「天女様、今ですか??」菅助が小声で問いかける
「ちょっと待って下さい 皆気を失っています」
独鈷杵を掲げ、気を失っている者等に回復魔法を掛ける
遠巻きに見守っていた民衆にも、近くへ来いと手招きをする エヴァ
『思えば長い道のりでした 旅の最終日にしてようやく。。。この旅の目的の一つが叶うのですね。。。』
「助さん、心の準備が出来ました どうぞ!!!」
青い顔で、忙しなく自分の体をまさぐる 山本菅助
「助さん! 今です!! どうぞ!!!」
「すいません。。。天女様。。。宿に置いてきてしまったようです」
震える声で告げる 山本菅助 その場にうずくまる エヴァ
その後、多羅尾綱知を簀巻きに縛り上げ
若江城内へと殴り込む エヴァ一行
若き城主 三好義継にこんこんと説教をし鬱憤を晴らす エヴァであった
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