弥助とバナナ
吉備団子を両手に持ち、口に運びながら、島の中央へとわけ入るエヴァと犬、猿、雉
「鬼は、どちらでしょう?」
「拙者もチラッと見えましたが大きかったですな! 黒鬼でしょうか?」
「天女様〜 あそこに小屋のような物が見えます!! 鬼の住処かもしれませんよ」
「ちょっと覗いてみましょう」 小屋に近づくにつれ、甘くて良い匂いが漂ってくる
「誰も居ないようです また罠があるやも知れません、ここでお待ちください」
扉をそっと開け、するりと中に入っていく 猿 さすが忍者の身のこなしだ
「誰も居りません」扉を開け放つ
中に入ると、簡易な寝台のような物があるだけで奥に長い小屋の手前から奥まで島の
あちらこちらで見かける、緑色の果実のような物が積まれており、奥に行くにしたがい
黄色みを帯びてきて、甘い匂いが強くなっていく
「どうやらここは、この果実を熟成させる為の小屋のようですね」
「するとこれは、食べられるという事ですか。。。」一つの房に20本ほどの湾曲した実が付いており、黄色く熟した実を一本取ってクンクンっと匂いを嗅ぐ 犬飼
「俺が毒味を!」犬飼から黄色い実を取り上げ、皮を剥き齧ってみる 猿
「うっきーーーこれは美味い!!! こんなに美味いもの食ったのは初めてだ!!!!」
「たしかに美味しいわね〜 腹持ちも良さそう」
「うむ 美味いな、土産に数本持って帰るか」
「。。。。。 。。。。んぐっ」すでに4本目を味わっている エヴァ
「天女様〜 助けて下さい〜」山本管助の声が、小屋の裏手から聞こえてくる
「面目無い 一生の不覚」魚編みのような仕掛けに、2人纏めて絡め取られ、樹上でもがけばもがくほど、2人の手足がおかしな方向に絡み合う
ガサッ!! 頭上に気を取られていた一行に、下生えから飛び出してきた黒鬼が棍棒を右手に左手で雉を背後から羽交い締めにする
「きゃっ!!」丸太のように太い腕が、雉の首元に食い込む
「卑怯者め!! 雉を離せ!!」雉を盾にされ、手が出せない 犬と猿
「まさに、鬼に金棒!!」得意顔の本多忠勝
「この状況で、よく言えますね!!」ツッコミに鋭さを増す 山本管助
「&$#@€¥¢ ¥:%∆;"?§!!!!」(この島から出て行け!!)
「∆$#€§%*¢ №€¿⁉¥§$@&」(大丈夫、貴方を捕らえに来たのでは、ありませんよ)「%!! #$†¿№&!!!」(あっ!! 俺のバナナ!!!) エヴァの両手のバナナを指差す
「&%!*;⁉‰±§£€∆№&%℃€〜」(これは、バナナと言うのですか 美味しいですね〜)
「天女様は、鬼の言葉を話せるのですか!?」
「天女様に出来ない事などない!!」樹上で胸を張る 本多忠勝
「痛たたたたっ この状況で、いきなり動かないで下さい!! 本多殿の尻が私の顔に!!!」
ポルトガル語でしばらくの間、会話を交わす エヴァと黒鬼
「*$@¥№℃£€† #@§¢‰」「なるほど、わかりました ちょっと待ってくださいね」
「この方は、アフリカという地域でこのバナナという果実を栽培して生活していたそうですが 3年前にポルトガルの商船に捕らえられ 奴隷として日本に連れて来られ
劣悪な環境でこき使われていたそうです
2年ほど前に、隙きを見て小船を盗み出し、この島に漂着したそうで 唯一の所持品のバナナを栽培して 島で採れる魚とバナナで今日まで生き延びたと あっ!」
黒鬼に常時発動の翻訳魔法を掛ける
「黒鬼さん これで日本語を話せますよ」
「何を言っているのですか それに私は、黒鬼ではありません ヤスケフ·ダ·シルバと言います うん!?」
「ヤスケフさんって言うんだ? その黒い体は、生まれつきですか??」
力の緩んだ腕を、ゴシゴシと擦る 雉
「ああ すまない、アフリカでは、皆が私のように黒い皮膚をしている」
雉を解放する ヤスケフ
「ここにずっと1人で居るつもりですか?」
「乗ってきた小船は、沈没してしまい この島から出る手段が無かった たまに見かける漁船も私が近づくと逃げてしまうし。。。」ちょっと涙ぐむ ヤスケフ
「それでは、私達とこの国の都に行きましょう 貴方とバナナの身の安全は、この私が保証します!!」
「いや このバナナは、寒い地域では栽培できないんだ」
「温室を作りますので大丈夫!! ヤスケフ。。。貴方は、今日から弥助です」
「あの。。。そろそろ降ろして頂けませんでしょうか。。。」
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