旅路2
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備前
山陽道を順調に進む そのあまりの速度と、美しい巫女に2人の侍が付き従う様に
すれ違う者 追い抜かれた者達が怪訝な表情を浮かべる
「悪者が、善良な町人を虐めているような場面に出くわさないものですかね?。。。」
「天女様、平和が一番だと思うのですが。。。」
呆れたように目を見開き山本管助を見る エヴァ
「なんの為に印籠を用意したと思っているのですか!!!」
「どなたか〜お助けください!!」
またしても、強化された聴覚がか弱そうな女の助けを求める声を拾う
「急ぎますよ!!」一斉に駆け出す3人 しばらく行くと街道から片輪を落とし
傾き倒れかけた荷馬車が視界に入る 「勝さん 出番です」
更に速度を上げ 路肩に倒れる寸前の荷車を支える 本多忠勝
「どうやら車軸が折れてしまったようですね 勝さん、もう少し持ち上げてください」
野菜等の荷物の満載された荷車を、何事も無いように持ち上げ片側を浮かす
真ん中でポッキリと折れた鉄製の車軸を、荷車の下に潜り込んだ 山本管助が真っすぐになるように支え、石化の魔法で車軸の周囲を強化する エヴァ
「取り敢えず、応急処置はしておきました、次の町で交換したら良いですよ」
ポカンと目を丸くしたまま、頷くだけの商人とおぼしき初老の男と娘
「では、先を急ぎますので」立ち去ろうとした3人に、はっと我に返り 追いすがる商人
「巫女様、お侍様!! 私は、この先の石山城下で食堂を営んでおります“大森屋”と申します 是非お立ち寄り下さい」
ぴくっと3人の足が止まる 「えっと。。。この辺の名物といえば、なんでしょう?」
「はい 瀬戸の海で揚がった タコや穴子、牡蠣などが今の時期はお薦めです」
「食べたことの無い物ばかりですね。。。急ぐ旅ではありませんので、お言葉に甘えましょう 勝さん荷車をお願いしますね お二人は、その上に乗ってください」
“大森屋”までの道程を砂煙を上げながら疾走する
尋常でない速度で皿を積み上げていく3人
「この穴子の天ぷらも美味しいですが、蒸し焼きという物を、初めて頂きましたが、美味しいですね〜気に入りました」
「これは、是非鳴海城の食堂の、お品書きに加えて頂きたい一品ですな!!」
「あの店主。。。このタコというのですか? 生きているのですが!?」
「はい タコの踊り食いと申します この時期にしか食べられないので是非どうぞ」
手早く盥からタコを取り出し、塩をまぶしゴシゴシとぬめりを落とす
ざっと水で塩を洗い流すと、出刃包丁で足を食べやすい大きさに切っていく
ウネウネと蠢く足を箸で持ち上げ 生姜をおろしたごま油に付け、口に運ぶ
「「「うっっまーーーー」」」
「このコリコリとした食感がたまりません〜」
「この牡蠣というものも癖になる味わいです!!」
「ここに住みたいくらいですな!!」
さらに積み上がっていく皿に、昼時で混み合ってきた店内の客の視線が釘付けになる
それも当然であろう 直視するのも躊躇うほどに美しい巫女が、屈強な侍よりも皿を重ねていくのだから。。。
「混み合ってきたようですので、そろそろお暇致します」
「左様でございますか、こちらは道中でお召し上がりください」吉備団子の包みを手渡される
「これでは、頂きすぎですね」積み上がった皿に目をやる
「とんでもございません、あの時に助けていただけねば、今こうして店を開けることも出来ませんでした」
店の隅を指差し「あそこでしたら邪魔になりませんね?」
「は? はい、何でございましょう??」
「勝さん あそこに冷蔵庫を作ります 何か適当な木箱を作って下さい」
「はい ただいま!!」脱兎の如く駆け出した 本多忠勝が朽ちた牛車の荷台だった木枠を
持って戻る それを金槌とノコギリを借り 底板を外し適当な大きさに補修し扉を付ける
「店主 貴方の商いに役に立つものです」そう言うと、人が一人すっぽりと収まりそうな木箱に手を翳し 石化の魔法で木箱が石箱へと変わる 扉を開け上部に殺生石を嵌め込み
永久凍土の魔法を込める たちまち冷却される石箱内
「この中に食材を入れると、長持ちしますよ」
「えっ!? これは?? このような物を、本当に頂いても宜しいのでしょうか!?」
「永久とは、いきませんが。。。400年お玉様を封じていたのですから、それくらい?」
「有り難く使わせて頂きます これがあれば、鮮度を落とさずに料理を提供できます
また帰路にお立ち寄りください」
山陽道を歩き出す3人
「あの程度の人助けで、あのようなご馳走をいただけるとは、心苦しいですね」
「まさに海老で鯛を釣るですな はっはっは」
「うっま!?」「吉備団子うっまー!?」「あの店主、鳴海城で働いてくれませんかね〜」
3人の道中は、まだまだ続く。。。
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