表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
117/487

天女堂

「天女様! 京より文が届いております!!」

エヴァ達が朝食を摂る食堂へと小さく折りたたまれた文を手に駆け込んで来る 本多忠勝

「京へと来て欲しいそうです、もう少し子供達を見ていたかったのですが。。。しょうがありませんね 今日の午後の天女堂での礼拝が終わり次第 出立しましょう

アランとお雪ちゃんは、子供達の指導をお願いしますね お供は、忠勝殿にお願いします」

「喜んで!!」


鳴海城 東曲輪

武田信玄の政策により、周辺領土の関所が取り払われた事と あらゆる病を治すと天女の奇跡が知れ渡り

回を重ねるごとに、増えていく礼拝者

入り口に備えられた寄付箱、供え物置き場には、尋常でない寄付金と供え物が山のように積まれていく

それに伴い、城下の宿屋や食堂では北曲輪の無料昼食で減少した客足を、遥かに上回る売り上げを記録していく

楽市楽座の導入により、新たな移住者や飲食業を営む者も増え この未曾有の好景気をいつしか人々は、天女景気と呼ぶようになる


供え物置き場の横を抜け、重厚な扉を押し開けると半円状の大広間が現れ、吹き抜けの二階部分には、まだこの時代では珍しい色の付いたビードロの嵌め込まれた窓が並び、幻想的な雰囲気を醸し出している そして正面には、等身大天女像が据え置かれ

その足元には、殺生石より削り出し磨き抜かれた“天女珠“が置かれている

この“天女珠”には、治癒魔法が込められており軽い病や外傷であれば患部を翳すだけで癒やす効果が確認されている

その珠に触れようと参拝者達が大広間の内壁に沿って、行儀良く列を作り順番を待つ

列に加わらない者は、中央に並べられた長椅子に腰掛け静かに天女の登壇を待つ

お昼を回った頃 巫女の装束をまとった侍女が現れる

「まもなく天女様がいらっしゃいます 席について、お静かにお待ちください」

しばらくすると緋袴姿に長い黒髪を一つに束ねた天女が現れる

一斉に手を合わせ息を殺し 天女を迎える 

そして天女は、優しい笑みを浮かべ 静かに口を開く

「この空間では、身分の差も年の差も性別も関係なく平等です 出来る事でしたら

ここを出た後も、家族を愛し、隣人を愛し、飢えた者がいれば食べ物を与え 傷ついた者がいれば介抱してやり この国のすべての民を愛せる人になってくださるよう心より祈ります 皆さんに天女の加護を」

独鈷杵を右から左へと大きく振る

暖かい光が大広間中を包む あちらこちらから嗚咽が聞こえる 座席より滑り落ち膝を付き、さらに強く両手を組み祈りを捧げる人々

天女が退室した後も延々と祈り続ける 家族の隣人のすべての民の幸せを願って


「忠勝殿、急ぎ向かいますよ 着いて来れなければ

下鴨神社で落ち合いましょう」

「命に掛けても着いていきます!!」

「では、夕食には間に合うように飛ばしますね」

風のように鳴海城を後にする2人


下鴨神社 葵生殿

苛立ちを隠せずに、落ち着きなく狭い居室内を歩き回る 武田信玄

「お館様、少し落ち着かれたらいかがでしょう 天女様も明日には到着されます」

「幸隆よ あの上杉謙信は、どこまで行っても、わしとは相容れぬ存在という事よのう」

「朝廷より再度、書状を送って頂いたらいかがでしょうか?」

「あの男は、一度決めた信念は曲げん わしが、一番わかっておる」

少し寂しそうに、ようやく真田幸隆の対面に腰を下ろす


「天女様が到着されました」従者が告げる

「そうか すぐにお通ししてくれ」天女を迎えようと廊下へと出る 真田幸隆

「天女様、急なお呼び出しにも関わらず このように早いお越し恐れ入ります」

「いえ 向こうで随分とゆっくりさせて頂きましたので そろそろ戻ろうかと思っていたところです」

「お館様ですが、少々苛ついておりますが、ご容赦ください とにかく中へ」





ブックマーク、星で評価して頂けると嬉しいです

お願いしますm(_ _;)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ