ヒッチハイク
薄暗い中、道路に親指を立て続けること数時間。そもそも人通りの少ない山道でヒッチハイクできるかどうかも怪しかった。
半分諦め、半分期待と共に右手を掲げながら歩いていると一台のバンが通りがかった。白いバンは六人がゆうに乗れる大きさだった。
バンは俺の前に停まると運転席の窓が開いた。ニット帽を被り、顎まで髭を生やした中年の男だった。
「兄ちゃんヒッチハイクかい?」
「ええ、東京まで行きたくて・・・途中まででも乗せていってもらえませんか」
「おう、荷物があるから後ろは乗れねえが助手席なら空いてるぜ」
「ありがとうございます」
俺は彼の開けてくれた助手席に座ると足をほぐした。数時間山道を歩いた足は棒のように固まっていた。
「んで、兄ちゃんは何しに東京に?」
車を出してしばらくすると俺に尋ねた。
「まぁ家出の延長ですよ」少しバツが悪くなった。
「そりゃあたまげた」
「運転手さんは何をされている方なんですか?」
これ以上色々聞かれる前に話題を変えることにした。
「一概には言えないなぁ」
彼はそこまで言うと道路沿いの駐車場に車を止めた。
「でもこれを見ればわかるかもな」
そういうと彼はニット帽のように見えていた覆面を顎までずらし、ポケットから拳銃を取り出した。
フロントガラスの向こうには銀行の自動ドアが開いて手招きされていた。