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【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第一章 聖女と騎士

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7.この街の聖女

 聖女の力で穢れが祓われる光景を、間近で見たのはこれが初めてだった。

 何よりも自分の力で成し遂げたことが信じられなくて、他人事のように眺め続けた。


「私……なのかな」

「ん?」


 不意に漏れた声をユーリが拾い上げる。

 信じられない私は、気の抜けた声で彼に尋ねる。


「穢れを祓えた……でもこれ、私の力で合ってるのかなって」


 ここに聖女は私しかいない。

 私の力を、加護を受けているユーリが穢れを倒した。

 その事実だけでも明らかなのに、どうしても腑に落ちない。

 きっと今までのことがあるから。

 長い間、自分は落ちこぼれで役に立たないと思い続けていたからだ。


「何言ってるんだよ」


 そんな私の話を聞いて、ユーリは呆れて笑う。

 やれやれと前振りをして、穢れが祓われた場所を見つめる。


「俺は誰の騎士だ? 誰の加護を受けてたんだ?」

「それは……」

「君だよ、聖女レナリタリー。俺は君の騎士で、君の力で戦ったんだ」


 彼は力強くそう言った。

 不安で、自分を信じられない私に、彼は教えてくれる。


「君が力を貸してくれなかったら俺は死んでいたよ。こうして生きているのは、君の力に守られたからなんだ」

「ち、違うよ! それはユーリが強いからで」

「強いだけじゃ穢れには勝てない。実際に戦って痛感したよ。あれは……強さだけでどうにかできるものじゃない。もっとこう、淀んだ重い何か。対峙してる時、自分の身体が沼に沈んでいくような気がしたんだ」

「沼?」


 ユーリはこくりと頷く。

 腰の剣に触れ、戦いの最中に感じたものを思い返しながら。


「身体に泥がこびりついて、動きづらくなって……呼吸も苦しかった。これが穢れなんだと実感するのに、そう時間はかからなかったよ」


 直接剣を交え、穢れに触れた者しかわからない感覚。

 穢れは負の感情を根源に生まれた力。

 それに触れるということは、悪意や敵意に直接触れることと同じ。


「そんな感覚も、君の力が強まってなくなった。どうして急に強くなったのかは知らないけど、お陰で助けられた。紛れもなく君の力だよ」

「そう……なのかな」

「うん。その証拠にほら」


 ユーリが私の後ろに視線を向ける。

 その視線に誘導され、私もくるりと振り向いた。

 するとそこには、街の人たちが大勢集まっていた。

 なぜか手には、クワや斧を持っている。


「皆さん、どうして」

「すみません、聖女様たちが心配で勝手に出てきてしまいました」


 もしかして……私たちを助けに来てくれたの?

 だから武器を持って、穢れに立ち向かおうとして。


「実はレナが来る前にも、みんなが加勢しようとしてくれたんだ。危ないからって止めたけどさ」

「そうだったんだ」


 危ないのは一目瞭然なのに……


 そこへ一人の男の子が駆け寄る。

 穢れが消え、安全になってはしゃぎながら私に言う。


「ねぇねぇ聖女様! あのおっきなクマ! 聖女様が倒してくれたの?」

「え、そ、それは――」

「そうだよ」

「ユーリ!」


 私の言葉を遮って、ユーリが勝手に答えてしまった。

 倒したのはユーリだよと言うつもりだったのに。

 ユーリはニコッと笑いながら、駆け寄ってきた子供に言う。


「聖女様はすごいんだぞ~ 彼女がこの街に来てくれてよかったな」

「うん! 聖女様!」


 子供が私に顔を向ける。

 そうして、満面の笑みで――


「ありがとう!」


 実感し、震える。

 ただの言葉でしかない。

 それでも心が、思いが籠っているとわかるから。


 ああ、そうか。

 私は……この街の聖女なんだ。

 そう思ったら、不思議と身体が軽くなって、思わず微笑んでしまった。


「どういたしまして」


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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になります
[一言] 中盤位の街の人セリフから、文章が重複してる所があります。
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