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【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第一章 聖女と騎士

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6.穢れとの遭遇

 穢れは本来、普通の人には見えない。

 しかし穢れの力が強まり、一定の線を超えると形を変え、視認できるようになる。

 そして姿は、周囲の人々にとって恐怖の象徴、あるいはもっとおぞましい異形と化す。

 今回の例で言えば、穢れはクマという形で顕現していた。

 クマは大きく、凶暴で、出会ったら少なからず死を予感する。

 辺境の小さな街だからこそ、野生のクマに対する恐怖は大きいものだった。

 その証拠に、穢れが模したクマの姿はおぞましく、見ているだけで背筋が凍りそうになる。


 私はユーリに近づこうと、一歩を踏み出す。


「来るな!」


 そんな私をユーリが止めた。


「こいつ予想以上に強い。ただのクマだと思って油断した……」

「ち、違うよ! 私の力が弱いから」


 ユーリには私の、聖女の加護を与えてある。 

 だから穢れも見えるし、穢れを祓う力も持っている。

 ただ、私の力は弱すぎて、穢れを祓うまでに達していない。

 ユーリは騎士として、剣士としてちゃんと強い。

 近くで稽古を見ていた私が、一番それを知っている。

 だというのに、彼は苦戦を強いられていた。

 それも全て、私の力が弱い所為。

 クマなんかに負けないくらいに強いのに、押されているのがその証拠だ。


「大丈夫だ。ちゃんと効いてる。回数が必要なだけで、倒せるまで斬り続ければいいだけだ」

「で、でも!」

「いいから! 君はそこにいてくれ」

「ユーリ……」

「君は……俺たちは、やっと始まったばかりなんだ。こんな所で終わるわけには……いかないんだよ」


 ユーリは剣を強く握りしめる。

 覚悟を持って、力強く言い放ち、穢れを鋭く睨む。

 そうだ。

 私たちは、この街に来てやっと……やっと少しずつ、毎日を楽しいと思えて来たんだ。

 これからもっと楽しいことがいっぱいあるって、そう思えた。

 だから――


「俺は負け――っ!?」


 油断していた、わけじゃない。

 予想外ではあった。

 穢れがまさか、目の前の敵を無視して、私に襲い掛かってくるなんて。


「あっ」

「レナ!」

「……え?」


 血しぶきが舞う。

 雨のように、降り注ぐ。

 鉄の匂いと、赤い景色が支配する。


「ぐっ、う……」

「いや、いや……ユーリ!」


 私を庇って。

 ユーリのお腹から、ドバドバと赤い血が流れ落ちている。

 どう見ても重症。

 下手をすれば即死もありえる致命傷。

 穢れは目の前にいる。

 それでも私は、我を忘れて彼を癒そうと祈りを捧げる。


「っ……にげ、ろ」

「駄目だよ……嫌だよ。ユーリを置いていくなんて……」

「いい、から……俺は……」


 もう助からない。

 そう言いかけて、言葉すらでなくなっていた。

 私の力じゃ、ユーリの傷は癒せない。

 そんなことはわかっている。

 わかっているけど、諦めきれるはずがない。


「嫌だよ……ユーリ。ユーリがいないと私……」


 一人ぼっちの私に出来た大切な友人。

 私のことを笑わないでくれた……たった一人。

 私を守る騎士。

 彼と出会ってから、世界が鮮やかに色付いたみたいに思った。

 

 私にとって一番――

 

「死なないで……死なないでよ……ユーリ」


 大切な人になった。


 穢れが襲い掛かる。

 ポツリと、涙がこぼれ落ちる。

 頬から落ちて、彼の頬に――


 すると光が、彼の身体を包み込む。


「え?」

「な、何だ……」


 戸惑う私とユーリ。

 穢れは光にあてられ怯み、後退して距離をとる。


「身体が……痛くない」

「傷が!」


 瞬く間に治癒していく。

 その光は紛れもなく、聖女から受けた加護の力。

 初めて見るほど眩くて、とても温かい光。


 彼は徐に立ち上がる。


「ユーリ」

「何だろう? 今なら……何でも出来る気がするよ」



 聖女には個性がある。

 選ばれし乙女の心であり、魂の本質。

 時に自然であり、時に生物であり、時に概念でもある。

 個性がない聖女など存在しない。

 この世に生まれた者であれば誰しもが持つ個性。

 

 故に、気づけなかっただけだ。

 彼女もまた、個性を持っていた。

 文字通り特異で、唯一無二の特性。


 その名は――『絆』。


 絆の聖女。

 心から共にいたいと願う一人と出会い、心を通わせることでその力は何十倍にも膨れ上がる。

 大切な人を守りたい。

 大切な人を失いたくない。

 そんな思いが二人の胸に宿り、炎のように燃え上がる。

 聖女と騎士の間に芽生えた絆が、彼女に力を与えた。

 そして、力は騎士に加護として還元される。


「行くぞ」


 目覚めた聖女の力は、他の聖女のそれを遥かに上回る、

 なぜなら、彼女の力の根源は絆という強い想いだからだ。

 想えば想うほど、どこまでも強くなれる。

 いずれ世界すら、絆の力で救うかもしれない。



「うおおおおおおおおおおおお!」


 ユーリの剣が、穢れを斬り裂いた。

 たった一振りで、大きな身体が消えていく。

 立っているのは勝者のみ。

 彼は剣を鞘に納め、振り返る。


「終わったよ。レナ」

「……うん」


 これは絆の物語。

 一人ぼっちの聖女と、一人ぼっちの騎士。

 才能のあるなしで優劣が決まる世界で、汚れていく世界で。

 二人が出会い、絆を深め、世界に知らしめるまでの――


 ほんの序章である。

短編分はここまでとなります。


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