始まりの絆⑤
僕たちにとって聖女ラトアリスは、母親のような存在だった。
きっと僕とミカエルに限った話じゃない。
身寄りのない僕たちを助け出し、待ってくれていた彼女のことを、特別に感じている人は多かったはずだ。
そんな彼女がいなくなった。
大切な人を、指導者を失ってしまった。
けれども戦いは終わらない。
世界中で穢れは増え続けている。
放置すればいずれ滅びるのは僕たちに人間だ。
その運命に抗うため、彼女は立ち上がった。
ならば、残された僕たちのやることは一つだ。
彼女の願いをかなえるため、最後まで戦い続けること。
◇◇◇
「ねぇアレスト、これを見て」
「ん? それって……」
ラトアリスが他界した日の翌日だった。
彼女の遺品を整理していたところ、僕たちは一冊の日記を見つけた。
以前から彼女は毎日日記をつけていたんだ。
少し悪い気持ちにはなったけど、中身が気になった僕たちはこっそりのぞくことにした。
そこには、僕たちのことが書かれていた。
僕たちだけじゃなく、一緒に戦う仲間たちのことが記されていたんだ。
出会いから成長、時には別れまで。
彼女の思いと決意が、使い古された汚れた日記に記されていた。
その中で彼女は私たちのことをこう記していた。
「ミカエルとアレスト、二人は私たちにとっての希望だ。二人がいてくれれば、きっと世界は美しい姿に戻れる。やり直せる日が来る……だって」
「ラトアリス様……そんな風に思ってくれてたんだ」
「うん」
僕たちは絆を紡ぐことで力を増している。
そのことに初めて気づいたのは彼女だった。
日記で僕たちのことを綴る時はいつも、文章のどこかに絆という文字が使われていたんだ。
絆とは思い。
相手を労わり、慈しみ、愛する心。
僕たちは自然と互いを意識して、守り合ってきた。
祈りは穢れと相対するものだ。
故にこそ、穢れを払う唯一の光となる。
中でも僕たちの力は、他の聖女と騎士を遥かに上回っていた。
しかし未だに成長途中だとラトアリスは考えているらしい。
「期待……してくれてたんだね」
「うん」
「応えたいね」
「そうだな」
守ってくれた恩を返したい。
僕たちに期待してくれた思いに応えたい。
彼女が思い描いた未来を、僕たち二人とみんなの力で実現したい。
思いは同じ。
なら、やっていけると確信した。
以後、僕たち二人を中心にして活動を継続した。
その時からだっただろう。
僕たちは絆の聖女と、その騎士を名乗った。
世界中に絆を広め、穢れに打ち勝つために。
そして……
さらに四年の年月が流れた。
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『宮廷を追放された錬金術師、善人ばかりの旅団に拾われ幸せを手に入れる ~私の才能に今さら気付いたってもう遅い! 甘い言葉で利用して『芋臭い没落貴族の娘に興味はない』と言った王子に協力なんてしない!~』
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