表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第二章 絆の聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/56

31.宿命のカウントダウン

 穢れは人の心から生まれる。

 命あるものが少なからず持っている負の感情。

 そこから捻出される穢れは、やがて世界を滅ぼすかもしれない。

 私たち聖女は大聖堂でそう習った。

 だから私たちは穢れを祓い、人々を、世界を守らなければならないのだと。


 違う。

 そうじゃない。

 私たちが見てきたのは、目に見える穢れだけだった。

 本当の意味で世界を守ってくれていたのは、眠り続ける偉大な聖女様で。

 彼女は今もなお、止まった時間の中で世界を守り続けていた。


 そして――


「いかに彼女の力と言えど限界はある。その限界を世界が察知したから、君という新しい絆の聖女が誕生したんだ。僕はそう思う」


 アレスト様は続けて語る。

 

「君を見つけて、僕は自分の役割を悟ったよ。絆の聖女は他の聖女たちと違う。まずは契約者を見つける所からだ。力や才ある者じゃない。純粋に互いを思い合い、助け合える人物を見つける必要があった」


 話ながらアレスト様はユーリを見る。

 ユーリは彼の話を聞きながら苛立ち、それを耐えるようにぐっと拳を握っていた。

 彼はきっと、私のために怒ってくれている。

 今にも殴り掛かりそうな身体を、必死に震わせながら耐えている。

 だけど、そんな彼を挑発するように、アレスト様は事実を語る。


「でもね、それだけでも足りないんだ。絆の力で能力が覚醒する特性上、ただの仲良しじゃ全然足りない。もっと深く信頼し合うためには試練が必要だった。たとえばそう……欲にまみれた男が、突然婚約者になったりとかね」

「――! それって」


 この時、ユーリのほうからブチッという音が聞こえた。

 唇をかみ切った音だが、それ以外にも彼の中で何かが爆発してしまったんだ。

 鬼のような形相になったユーリは溜まらず駆け出し、アレスト様の胸倉を掴んだ。


「ふざけるなっ!」

「ユーリ!」

「お兄さま!」

「全部あんたの仕業だったのか? もし俺たちが間に合っていなかったらどうなってたと思う? それも全部わかってやったのか!」


 私とラトラが止める隙もなく、ユーリは怒声を響かせる。

 相手は王国最強の剣士、皆が憧れる存在。

 彼自身、アレスト様への憧れはあったはずなのに。

 それすら振り払うほど、気迫迫る形相でアレスト様を睨んでいた。


「……いいね。ちゃんと本気で怒れてる」

「……なんだと?」

「その怒りも一つの繋がりであり思いだ。やっぱり君でよかったよ」


 胸倉を掴まれても平然と話しているアレスト様に、私は一種の狂気を感じる。

 彼はユーリの怒りをもろともしていない。

 実力の問題なのか、それとも人としての感性が鈍いのか。

 どちらにしろ、ユーリの怒りは届いていないように見えた。

 ユーリ自身もそれを感じ取ったのか、表情の中に怒りと困惑が混ざり合う。


「ラトラを唆して穢れを発生させたのもあんたなのか?」

「いいや、それは違う。僕も把握していなかった何者かがいる。現在調査中だよ」

「……本当に」

「違いますお兄さま、この方ではありません」


 ユーリはアレスト様の言葉を信じられない。

 でも、ラトラ本人が否定する。


「顔は覚えていませんが雰囲気はわかります。この方とは全く違います」

「……だとしても、他は事実なんだろ?」

「そうだよ。僕が君たちを迎えに来たのは、君たちの絆が深まったと確信したからだ。そうじゃなければ、新しい試練を与えていただろうね」

「っ……」


 ユーリの手に力が入ったのがわかる。

 本当は殴りたいのかもしれない。

 それをギリギリの所で我慢している気がする。

 きっとそれも、私のことを考えてのこと。

 なら私は……


「大丈夫だよ、ユーリ」

「レナ……」

「私は大丈夫。たとえ全部仕組まれていたことだったとしても、ユーリと出会えて、ラトラとも仲直り出来て、今日まで良いことばっかりだったから」


 せめて精一杯の笑顔で、今が幸せだと伝えよう。

 ユーリが本気で怒ってくれていることも、その幸せの一部だ。

 でも欲を言えば、ユーリには普段通り優しく笑っていてほしいから。


「もう少しちゃんと話を聞いてみようよ」

「……レナがそれで良いなら」

「うん、私はそれで良いよ」


 ユーリが怒ってくれたから、もう十分だよ。

 すると、ユーリはアレスト様から手を離し、一歩二歩と後ずさって私の隣に戻る。


「ありがとうユーリ」


 私は彼にだけ聞こえる小さな声でお礼を言った。

 返事はなかったけど、彼は気の抜けた笑顔を見せてくれた。


「落ち着いてくれたかい?」

「……」

「そう睨まないでくれ。僕だって好きでこんな役割を演じているわけじゃないんだ。だけど、こうでもしないと間に合わない」


 アレスト様はミカエル様が眠る結晶に優しく触れる。


「僕がしていることを知れば、きっと彼女は怒るだろうね……いや、もう夢の中では散々怒られているんだけどさ。それでもやらなくちゃならない。僕を殴りたければ好きにしてくれて良い。ただし全部終わってからだ」

「……それは話がですか?」

「違うよ。世界を救ってからさ。そのために君たちの力がいる。絆の聖女でなければ、世界の穢れは抑制できない。これは絆の聖女の宿命なんだ」

ブクマ、評価はモチベーション維持、向上につながります。

【面白い】、【続きが読みたい】という方は、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです!

【面白くなりそう】と思っった方も、期待を込めて評価してもらえるとやる気がチャージされます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、

上記の☆☆☆☆☆評価欄に

★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!


ブクマもありがとうございます!

カクヨム版リンクはこちら

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻9/25発売です!
322105000739.jpg



第二巻発売中です!
322009000223.jpg

月刊少年ガンガン五月号(4/12)にて特別読切掲載!
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ