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【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第一章 聖女と騎士

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2.運命の出会い

 大聖堂は王城の敷地内にある。

 敷地はとても広くて、ゆっくり歩いて回ろうと思ったら、一日じゃとても回りきれない。

 中には建物以外にも、森や湖という自然もあったりする。

 とりあえず人があまりいない場所を探して、私は敷地をウロウロと散策した。

 王城の近くは当たり前だけど人が多い。

 大聖堂の近くも同じで、城門付近は出入りが激しい。

 人通りを避けて歩いていくうちに、私は森に入り込んでいた。

 自然にある森には危険がいっぱいあるはずだけど、敷地内の森は手入れもされていて安全だった。

 空気が美味しくて、吹き抜ける風が気持ち良い。


「ここなら……良いかな」


 誰に確認するわけでもなく、ぼそっと呟く。

 森の中でも吹き抜けた場所に出て、周りには人影もないことを確認する。

 何だか悪いことをしている気分になるけど、私はただ静かに練習がしたいだけ。

 緑が生い茂る地面は、太陽の日差しで温かい。

 私はそっと膝を下ろし、目を瞑って両手を組む。


 聖女の力は大きく分けて二つ。

 癒しの力と、穢れを祓い清める力。

 強さや範囲などには個人差があり、死に至る大きな怪我や大病でも簡単に治してしまえる人もいれば、私のように軽い傷が精一杯の人もいる。

 聖女にとって祈りは象徴だ。

 それが人一倍弱い私は、聖女として未熟だということで。


 ズサッ――


「あれ? 珍しいな。ここに人がいるなんて」


 足音がして、その次に声が聞こえて来た。

 男の人の声だ。

 私は祈りを止めて、慌てて後ろを振り向く。

 そこに立っていたのは、黒髪で青い瞳、腰に剣をさした同い年位の男の子だった。


「あぁーごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど……いや、急に後ろから声がしたら驚くよね普通」

「あ、あの……貴方は?」

「俺はユーリ。この格好を見ての通り、そこの養成所に通ってる騎士見習いだよ。君は聖女候補だよね?」

「はい。私はレナリタリー・ペルルです」


 これが彼との出会い。

 運命なのか、それとも偶然なのかはわからない。

 もしかしたら、この出会いをきっかけに私の人生は動き出したのかもしれない。

 何となくの予感でしかないのだけど。


「え、そこの?」

「うん。ほら、ちょっと奥。葉っぱの隙間から騎士団隊舎が見えるでしょ」


 そう言って指をさした方に視線を向ける。

 揺れる葉っぱが邪魔で見えにくいけど、一瞬だけ強い風が吹いた時、空の青と隊舎の白い境界線が見えた。


「ほ、本当だ。じゃあここも、騎士団の管理区域なの?」

「そうだよ。だから驚いたんだ。こんな場所に人がいて、しかも聖女候補だなんて」


 気付かないうちに、聖堂からすごく離れていたらしい。

 騎士団隊舎は、聖堂とは真反対にあるのに。

 別にこれといって規制されているわけじゃないけど、騎士団は男ばかりだからという理由で、聖女候補のみんなは進んで近寄らない。

 それで彼も驚いたと言っている。


「ご、ごめんなさい。勝手に入り込んでしまって」

「別に謝らなくても。さっきの光は聖女の力?」

「え、はい」

「そうなんだ。初めて見たけど凄いね」

「凄い……ですか?」

「うん。あんなに綺麗な光は生まれて初めて見た。聖女の力って、なんていうか神秘的だ」


 凄いとか、綺麗だとか。

 彼の口から、私のことを褒めているような言葉が次々聞こえた。

 単に感想を言っているだけなのかもしれない。

 ただ、私に向ってそんな風に言ってくれた人は、今までいなかった。


「あの、もしかして私のこと……知らないんですか?」

「え? 聖女候補でしょ」

「……」


 この人は、私がなんて呼ばれているのか知らないの?

 それとも惚けているだけ?


「でも何で、こんな場所で聖女の力を使っていたの?」

「それは、練習を」

「練習? じゃあ俺と一緒だ」

「貴方も?」

「ああ。いつもここで剣の稽古をしてるんだ」

「どうしてこんな場所で? 騎士団養成所なら、専用の訓練場がありますよね?」


 私が何気なくした質問に、彼の眉がピクリと動く。

 表情が少しだけ、暗くなったように見える。


「あそこは……なんというか、あんまり居心地よくないんだ」

「そう、なの?」

「ああ」

「でも、剣の稽古なら相手がいたほうが」

「それはそうだけど、残念ながら期待するだけ無駄だ。養成所で俺の相手をしてくれる奴なんていないし」


 今度はあからさまに表情を暗くして、声のトーンも低くなった。

 私は、聞いてはいけないことだったと反省する。

 それと同じくらい、自分に近いものを彼に感じていた。


「……私と同じだね」

「同じ?」


 不意に出た弱い言葉が彼に届いてしまう。

 それから私たちは、無言のまま互いの顔を見つめ合った。

 言葉を交わさず、ただ見つめて、確かめていたんだと思う。

 

「あの――」

「あのさ」


 奇しくも、同じタイミングで声をかけた。

 それが何だかおかしくて、一緒になって笑い合う。

 その後は順番に、自分のことを話した。


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