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機械の神と救世主  作者: ローランシア
第一章 異世界と救世主
7/38

007 緊急事態と不信

俺が修行を始めてから修行場内時間で百五十年以上が経過していた


体を鍛えるためには、食事をしっかり採り、適切な修行をし、十分な睡眠が必要だとマキナから教わったため

 食事と睡眠の時だけは次元の扉から出て、陛下やソフィアさんたちと一緒に取っている


24238っ!24239っ!24240っ……!

 最後の敵を倒しマキナを呼ぶ


「終了っ!……そろそろ外の世界は夜だろ?戻ってひと眠りしようか」


≪……はいっ≫


マキナがゲートを出してくれる


部屋に戻るとすっかり日が落ち、夜になっていた

 窓からは青色の月光が差し込み、部屋のベッドや机を照らしていた


「……さって、風呂に入ってさっぱりするかぁ」

≪はいっ≫

風呂場に向かおうとすると、マキナがニコニコしながら風呂場前の脱衣所に一緒に入ろうとする

 脱衣所に一歩入った所で止まりマキナに目を向ける


「……あの、マキナさん……?」

≪はい。どうかしました?マスター≫

マキナが不思議そうな顔で俺を見上げる


「俺、今から風呂入るつもりなんだけど……」

≪……はい?ですよね?≫

 意味が解らないというふうに首をかしげながら聞き返される


「……」

 俺はそっとマキナの襟を掴み、猫のようにもちあげそっと脱衣所の前に置く


≪あああ!?マッ! マスター!?何を!?≫

「マキナはそこで待ってるように」

≪えええ!?一緒にお風呂はっ?≫

「じゃあ、先にマキナが入るか?」

≪いえ、それはマスターがお先にどうぞ……。

って! そうじゃなくて! なんで一緒に入ったらダメなんですか!≫


あのね?君、見た目小3女子なんだ

小3女子と一緒にお風呂に入ってるなんて、世間様に知られたら俺社会的に死ぬからね!?

世界が終わる前に俺の社会生活が終わっちまうんだよ!


「うん、ダメ。マキナはそこで待っててくれ」

≪マスター! 私の事使うだけ使って用が済んだらポイですか! 都合のいい女扱いですか!≫

「大声で人聞きの悪い事言うんじゃありません!風呂に入るだけだって!」

≪うう。マスターのお背中流したかったのに……≫


マキナがショボンとした顔で俯き落ち込む


「そんな顔してもダメなもんはダメ。じゃっ」


いいながらドアを閉め、手早く服を脱ぎ風呂場に入る


体を洗い、風呂に浸かる


「はぁ~……いい湯加減だ……。修行の後の風呂は最高だな……」


のんびりしてると頭の中でマキナの声が響く


≪マスター!≫

「んー?どうした……?」

≪街の北東方面と南西方面から魔物の集団が多数接近中です!≫

「なっ……!?」


その言葉に驚きザバっと湯船から立ち上がり、脱衣所に駆け込む


「クッソ!どんだけ物騒なんだよっ!この世界はっ!」


早々に服を着替え脱衣所から飛び出る


「街の様子はっ!?」

≪まだ魔物の接近に気が付いてないようです。街の警報も発令してません≫


確かに見張りが気が付いてるなら警報鳴らして民間人の避難始めさせてなきゃおかしい

ということは、まだ騎士団と警備隊も気が付いてないって事だ!


「マキナ!魔物の数はわかるかっ?」

≪北東方面が340。大型のドラゴン1頭を筆頭にゴブリンとオークを主体にした軍勢が進軍中です。

南西方面はオーガやサイクロプスの大型種の群れ400が確認できます。現在どちらも街から20キロの地点を進軍中です≫


おいおい!?20キロって!すぐそこじゃねえか!この街の周辺に監視塔も立ててないのかよ!?

≪以前監視塔が魔物に壊されて以来、監視はこの街の監視塔だけでやってるみたいですね≫

勘弁してくれよ……、マジで。そんなの最優先で修理するべきものだろ……!

≪人手が足りず後回しにしてたみたいですね……≫


「とにかく騎士団の詰め所に知らせに行こう!」

≪はいっ!マスター!≫


まずは騎士団と警備隊に知らせないと!


城内にある王国騎士団の夜間詰め所に着き、ドアを叩く


ドンドンドンドン!!!!


「いますか!? 緊急事態です!」


「……は、はい……。あなたは……?」


「私は救世主としてこの世界に呼ばれて、昨日からこの城でお世話になってる東条司です!

敵襲です!北東と南西方面に魔物の群れが近づいてるんです!

ここから20キロの位置に北東に大型ドラゴン一頭とゴブリンとオーク340の群れが、南西にサイクロプスとオーガの大型種400の群れが近づいてます!

すぐに警報を鳴らして街の門へ防衛線を敷いてください!それから民間人の避難をお願いします!」


「……すみませんが……。ちょっと、いきなりの事で…………ふわぁ~~~……」


クソっ!居眠りでもしてやがったのか!?この騎士団員は!

あんた夜勤の城内警備中だろ!?呑気に欠伸なんてしてる場合じゃねえだろ!この緊急時に危機感ねえのか!


「それに、あなたが救世主……?それを証明できる人はいますか?」


この様子なら……この夜中に陛下の部屋に行ったら、確実にお付きの人に不審がられるな


っ!ここはもういい!


「私は伝えましたからね!?」

「はいはい……」


言いながらまた欠伸をして、ドアを閉める騎士団員


だったら……、あの人なら!警備隊の隊長なら!人を動かせる!


王城の廊下の窓を開け放ち窓の縁に足を掛け飛ぶ


「マキナっ!」

≪はいっ!マスター≫


マキナが漆黒の翼12枚になり俺たちは空に舞い上がる


「警備隊の詰め所まで頼む!」

≪はいっ!≫


警備隊の詰め所に着き、マキナが空中で翼を解除し詰所の前で降りる


タッ……


「なっ!?空から人が……!?あっ……あなたは!!」


やっと俺の事を知ってる人がいてくれた!

これで警備隊に知らせれば……!


「緊急事態です!敵襲です!北東と南西方面20キロの位置に魔物の群れが近づいてるんです!

北東に大型ドラゴン一頭とゴブリンとオーク340の群れが、南西にサイクロプスとオーガの大型種400の群れが近づいてます!」

「なっ!?魔物の軍勢、ですと……!?、しっ、しかし……まだ警報がなっていないようですが……」

「いくら救世主様のお言葉でも……その……確証もないのに警報を鳴らすわけには……」

「……っ!?本当だ!信じてくださいよ!……そっ!そうだ!隊長っ!隊長はっ!?」

「隊長は今日は非番です。ご家族とご実家のある村へおでかけになるそうで、おそらく街にはいないかと……」


なんて最悪なタイミングだよ……!


≪マスター。魔物の群れが15キロの地点に近づきました≫


もう迷ってる時間はない……!


「クソっ!」

マキナ!

≪はいっ! マスター!≫


言いながらマキナが飛行形態になり舞い上がる


マキナ!北門へ向かってくれ!

≪はいっ!万が一のためにくーちゃんを一万羽出して街の警備をさせておきます!≫

えっ?くーちゃん……?わからないけど、とりあえず頼む!

≪はいっ!≫


首都から15キロの位置に敵が進軍してきてるのに、警報すら鳴ってないってこの状況、どう思いますか?専門家のマキナさん!

≪あり得ない程ザルな防衛線ですねー。もはやノーガード戦法と言っても過言ではないでしょう≫

ですよねー!?

≪はい。はっきり言ってかなり危機的状況です。しかも、報告を受けてあの対応はないです。この国の人愚かすぎです≫

客観的に見たらもはやコントだもんなぁ……

≪コントなら絶対笑えるんですけどねぇ。そのコントのサブタイトルは「頭ハッピーセット」ですね≫


そんな事を話しているうちに北門が見えてきた


マキナ!どっちか任せていいか!

≪はいっ!では私は南西方面を殲滅します≫

じゃあ俺は北東方面の相手をする!頼りにしてるぜ!マキナ!

≪お任せください。マスター≫



タッ……!

北門前に着地し走り出す


よし、二手に分かれるぞ!俺を北門に降ろしたらすぐ向かってくれ!

≪了解しました!すぐに倒してマスターの元へ戻りますねっ≫

おう!頼んだ!

≪はいっ≫


マキナが次元の扉を開き一瞬で消える


俺は街の外に出た後、闇深い森を全力で走り始める


マキナ! この道まっすぐでいいか!?

≪はいっ。その方向へ直進で魔物の群れとぶつかります!≫


暗闇に包まれる森の中をマキナのナビを頼りに進む


ウ―――――――!ウウーーーーーーーー!


走っている途中、街の方角から警報が鳴り響く


やった!

やっと見張りの連中が気が付いたみたいだ!

これで民間人の避難が始まるはずだ!


……けど!警報が鳴ったって事は、敵がそれだけ街に近づいたって事だ!

走る速度をさらにあげ、森の木の枝を踏み台に跳躍しながら魔物の軍勢を目指す


ガサッガサッ……!


……いた!

魔物の群れを発見した俺は


魔物の隊列の中央に数名の女の子が衣服をボロボロにされ周りを魔物に囲まれ連行されていた

その少女達の顔には見覚えがある事に気が付く


ゴブリン達に弄ばれ乱暴されたという事がハッキリわかる

衣服を破かれ薄汚れた布を纏っている大聖堂のシスター達だった──────


「う……うぅ……誰か……助けて……」


魔物たちの隊列を見つけた俺は木の上から様子をうかがう


よし……気が付いていない

ただ、オークは鼻がいいからすぐに見つかるだろう


……最初にすべき事は初手でシスターたちの拘束を解き、自由にして安全な位置に逃がす事だ

こいつらを相手にするだけなら造作もないが、人質を盾に取られると面倒だ


シュン……

魔法で短剣を作り出す


3……2……1……っ!


カウントが0になると同時に木から舞い降りる


着地と同時に一瞬で3台のシスターたちを拘束している縄を切断する、


「えっ……!?きゃっ……!?」

拘束を突然解かれバランスを崩し倒れるシスター達


良かった!全員意識はあったみたいだ!


「ナ……何者ダ!?」


へえ、現実のゴブリンってのは、人間の言葉を喋れるのかよ

マキナが出してくれるゴブリンは言葉なんか話さなかったのに


「ギャギャギャギャギャギャ!!」


叫び声を上げるゴブリンたち


ああ、そうそう。ゴブリンはそうでなくちゃ


「痛ったぁ……何……いきなり……!?」

「えっ?えっ……?」

「な、何……?…………」


シュッ!


瞬時に一番近くのシスターに接近し、お姫様抱っこで担ぎ持ち上げ高く跳び木の上に飛び乗る


「えっ!?きゃっ!?」

「……助けにきた。ここで待っていてくれ」

「あっ!?あなたは……!」

「話は後」


言いながら飛び降り、次のシスターの傍に着地する

着地と同時にゴブリンとオークたちが襲い掛かってくる


「ヤれ!」

「チッ……!」


周辺の木の幹や枝を踏み台にして縦横無尽に跳躍し、攻撃可能範囲に存在する全ての魔物を切り刻む

襲い掛かってきていたゴブリンとオークを一瞬で細切れにすると、バラバラと解体された肉片が血飛沫を上げながら崩れ落ちる。

飛び散った返り血が俺の頬にかかる


恐れを抱いたのかゴブリンとオークがあとずさりをはじめる


シスターを抱き上げ木に跳びながらゴブリンとオーク達に警告を出す

「お前ら、逃げんなよ……?今殺してやるからそこで待ってろ……!!」


「きゅ、救世主……様?救世主様です……よね?」

「話は後だ!っと!」

言いながら飛び降り着地し、歩き出す


タッ……!


「……」


道を塞いでいたゴブリンとオークたちが狼狽えた表情で道を空ける


……こっちの部隊にはドラゴンがいるはずだが、姿が見えねえな……


「な……あ……あ……あん、た……なん、で……」

「……」


チッ


ツンデレシスターが一番かわいがられたみたいだな……

めちゃくちゃに弄ばれた後、ボコボコにされたって感じか?

息も絶え絶えで顔色が悪い。暗くてよく見えないが、体に無数に痣が出来ていた


「……お前の助けを呼ぶ声……聞こえたぜ。ちょっと跳ぶぞ」

「え……きゃっ!?」


ツンデレシスターを荷物のように脇に担ぎ上げ、木に跳ぶ

こいつだけお姫様抱っこじゃないのは、ささやかな仕返しだ


「……あ……」

「少しここで待ってろ」


言って木から飛び降りる


このツンデレシスターは、召喚されたばかりの俺を役立たずと罵り、

暴言交じりの煽りを浴びせてくれたいけすかねえ女だ、……が。


それでも……、ここまで酷い仕打ちを受ける程悪い事はしてねえよ……!


初めて、魔物たちに対して怒りを覚えた


ゴブリンとオーク達が距離を取りながら口を開く


「オ、オマエ!コロス!コロしてクッテヤル……」

「ヒャハハハハハ!」

「グルルルルルル!!」

「囲メ!囲メ!囲ンデ殺セ!!

「バカメ!コノ数二勝テルトオモッテルノカ!?」

「コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!」

「コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!」

「コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!コロセ!」

「コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!」

「コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!」

「コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!」


いやらしい笑みを浮かべながら、俺を殺せと大合唱の煽りを入れ、距離を取るゴブリンとオークたち


────殺してやる


「……」


シュッ……

瞬時に自分が移動すべき点を見つけ移動し続け移動の線を空間に刻み込む

地面、木の幹、木の枝空間にあるすべての物を足場にし跳躍し線を引く


俺の周辺を取り囲んでいたゴブリンとオークの群れをバラバラに解体する


生物を殺す為に必要な事は、実は簡単な事だ。


「斬葬」(ざんそう)

俺が修行場で60年かけて会得した。短剣術の奥義の一つだ


この世界に存在する全てのものには「斬起点」という点が無数にある。

この斬起点を繋げ合わせ線を引くとあらゆる物質を容易く切断する事が出来る

試した事はないが軍事用の特殊装甲板ですら容易く切り捨てることができるはずだ


最速で最短の線を引く──────簡単な事だ


317……318……319……!!


その場にいたゴブリンとオークの集団を一瞬で細切れに変え全身にオークとゴブリン達の返り血を浴びる


ブシャアアアアアアアア


体の細胞が傷ついたという事を反応するより速く切断しバラバラに解体する


「「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」


森が少し開けた場所に巨大なドラゴンが舞い降りる

ドラゴンがこの惨状に激昂し咆哮が周辺に響く


「ひっ……!」

「……っ! ドッ、ドラゴン……!?」

「ダ、ダメっ……!?あんな大きなドラゴンなんて人間が一人で勝てるわけない……!」

「救世主様っ!?逃げて……!」


シスターたちが少し落ち着いたらしく、論理的な言葉が出せるようになっていた


ドラゴン


ドラゴンは悠久の時を生き、凄まじい力と高い知性を持つ。

加えて高い魔法適正を持ち、ドラゴン種の言語で魔法をも使え、攻撃魔法や防御結界などの魔法を操る

代表的な攻撃方法として、ドラゴンのブレスが有名だ。

その口から吐き出す高熱の炎は全てを焼きつくす程の高熱だという

その高い戦闘能力から地上最強の生物とまで謳われる存在……


その声を背に俺はドラゴンに向かって足を向け歩き始めた


ドラゴンが大きく体を逸らし、俺の体の二回りほど大きな炎の弾を吐き出してくる


後ろにはシスター達がいる……よけるわけにはいかない

それをドラゴンもわかっているのだろう


火の玉が直撃した瞬間、短剣に剣気を込めて振り斬撃を発生させ火の玉を消滅させる


斬空剣


短剣術の奥義の一つだ


剣に剣気を込め振り抜ぬき剣気の斬撃を発生させ飛ばす 

近距離・遠距離両方で使える攻防一体の技


斬撃の剣気は距離により威力が減衰し、20Mほどまでしか届かないがとっさの防御などには重宝する技の一つだ


「……」

炎が直撃したように見えたのだろう、心なしかドラゴンの口角が上がる


「……この程度の炎で俺を殺すつもりだったのか?」


かき消された炎の弾の中から俺が現れドラゴンの表情が驚愕に染まる


俺が無傷でいる事に一瞬たじろいだ後、咆哮あげ前方に魔法陣を展開させ魔法の詠唱を始める

ドラゴンの体を防御結界が張られ、ドラゴンが猛スピードで突進してくる


……防御結界張って突進か。

なるほど、なかなか賢いじゃねえか


「あぶないっ! さっさと逃げなさいよっ!?」

「救世主様っ! 危ないっ……!」

「や、やめてぇっ……!?」


────俺に防御結界なんて意味ないけどな……!


ドラゴンの突進に合わせ、俺もドラゴンに走り出す

ドラゴンにぶち当たる寸前で右斜め前に跳躍し、

すれ違う瞬間、斬葬で防御結界を破壊した後翼を両断する


翼を切断された胴体から血飛沫が上がる


ブシャアアアアアア……!


「グギャアアアアアアア!!!!!!」


ドラゴンの絶叫が周辺に木霊する

ドラゴンがバランスを崩しその場に倒れのたうちまわる


「……え?」

「うそ……」

「えっ……!?」


次は足だ


着地と同時に横一線で足を切断する

ザッ……


これで、もう飛ぶ事も走る事も出来ないだろう


ガッ……


翼をもがれのたうちまわるドラゴンの顔を足で踏みつけると、ドラゴンの目が俺を睨む


「……」


ドスッ……!


首元に短剣を突き立てトドメを刺す


ドラゴンの目から光が失われ絶命した事が確認できる


……ドラゴンだし、首を落として持って帰ろう。討伐したって証にはなるだろ

ゲームとかだと心臓とか翼膜とか価値があったりするんだよな

価値が無かったら捨てればいいし持って帰るか


ドラゴンの首を切断し、心臓を取り出し、両の翼の翼膜をはぎ取る

上着で素材を包む


≪マスター、お待たせしましたっ≫

お?マキナも終わったのか。お疲れ

≪予想より手間がかかりまして、すみません≫

いいさ、ちょうどこっちも終わったところだ


……やっぱり、俺が弱いからマキナに苦労をかけてしまってるな……


もっともっと強くならないと……!


「マキナ?この荷物とそこのドラゴンの頭も次元の狭間に収納しておいてくれるか」

≪はいっ≫

んじゃ頼むな。俺はシスター達降ろしてくるわ

≪シスター達……?≫


木に跳び、シスターの前に立つ


「お疲れ、終わったぞ?」

「あ……あなたは一体……?ドラゴンを……それにゴブリンやオークだってあんなにたくさんいたのに……」

「君らが「救世主」って呼ぶ男、かな。……とりあえず、降りるぞ。よっと……、捕まってろよ?」


「あ……」

シスターをお姫様抱っこで抱きかかえ飛び降り、地上に降ろすと

緊張が解けたのかへなへなとその場に座り込む


≪マスター、私も手伝いますっ≫

荷物を収納し終わったのかマキナが近くに来ていた

「じゃあ、あっちの子頼む。木の上にいるから降ろしてここに連れて来てやってくれ」

≪はいっ!≫


俺はツンデレシスターを下ろした木の上に跳ぶ


こいつが、一番酷い目に遭ってるんだよな……


「……お疲れ。大変だったな」

「あ、あんた……何者よ……?」

「……んで……」

「あん?」

「なんで……、助けてくれたの?私の事……、嫌いでしょ……?」

「……確かに、あんたは口は悪いし、態度は横柄だし、素直じゃないし、おまけに胸も小さい」

「胸は関係ないでしょ!? 単なる悪口よね!ソレ!」

「……さ、降りるぞ」


ツンデレシスターをお姫様抱っこで抱きかかえる


「あっ!?ちょっ!ちょっと!」

「しっかり捕まってろよ?」

「う、うん……」


木から飛び降り、シスターたちの所へ運び、降ろしてやる


「よし……。これで全部か?」

「あっ……! あの! 救世主様! 助けてくださってありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

「あの……、あ……ありがと……」


マキナ?

怪我を治してやってくれるか。

ツンデレシスターの怪我が一番酷い一番先に治療してやってくれ

≪はいっ≫


「今から怪我の治療をマキナがしてくれる。じっとしてろよ」


「え……。あ……」


他の二人はさほど怪我らしい怪我はしてなさそうだ

多少擦り傷程度はあるが……


マキナがツンデレシスターに手のひらを向け緑の光を当て始める


「あ……ありがとう……」


「あの!救世主様! まっ、まだ捕まっている街の人やシスター達がいるんです!」

「何……?」

周りを見渡すがそれらしい影はない


マキナ?近くに敵はいるか?

≪半径20キロ圏内に魔物の反応はありません≫


「私達、魔物の巣みたいな所に捕まって……、まだ何人かそこに捕まっているはずです!」

「……そうか、わかった。とりあえず街へ帰ろうか。今日はゆっくり休んだほうがいい」


俺達とシスター達は歩いて街へ戻った。

街の門前に到着すると警備兵と騎士団や冒険者が、街の門の前で陣形を組み護りを固めていた


「っ……!?あれは……!」

「シスター達だ!?ボロボロじゃないか……一体……!?」


街の門前に着いた事で緊張糸が切れたのか、その場に座り込み、大声で泣き出した

ボロボロ衣服のシスター達の姿を見て兵士が声を上げる


兵士達がシスター達を取り囲み何があったのかと、事情を聞いたり、怪我をしていないか等確認する

その横を通り過ぎ俺たちは王城の部屋に戻る


部屋に戻って風呂に入った後、ベッドに横になるとマキナに話かけられる



≪マスター?≫

≪今回の襲撃で、不審な点が見つかりました≫

……やっぱり、マキナも気が付いたか

≪……気が付かれていたんですね。さすがです≫

さすがって程でもないだろ。今回の襲撃はおかしい点ばかりだし……

≪はい……≫

ああ、そうだ。マキナ?

≪はい≫

この街の人間を調べた時さ?おかしな人物がいたんじゃないか?

≪っ!どうしてそれを……?はい。いました一人……≫

ああ、やっぱり……。たぶん、その人が今回の黒幕だ

≪やはり、そうですか。……私自身がまだ本調子ではないのかもと思ってたんですが≫

マキナのスキャンは脳の信号を読み取って、記憶を探るんだよな?

≪はい≫

なのに、妨害のような効果が働いているか、情報が偽装がされていて、ちゃんと調べられなかった……だろ?

≪っ!どうしてそれをっ?≫

やっぱりか

それより、マキナが調べられない相手がいるって事が気がかりだ

そうですよね。そこもおかしいですよね……≫

≪……あの?マスター?≫

んー?

≪どうして、あの人がおかしいって思ったんです?私、マスターに言ってませんよね≫

だって、あんな事……普通は言わないだろ?

≪……あぁ~……。えっ?それだけでですか!?≫

他にも不審な点はあるからだけどな。特におかしいと思ったのはアレだ

俺の仮定が正しかったら……、おかしい点が急に線で繋がっておかしくなくなるんだよ。


……できれば、こんな最低最悪な仮定は外れていてほしい……


とりあえず、明日は捕まっているシスターたちの救出に行く。今日はもう寝よう

≪はい。おやすみなさい。マスター≫

ああ、おやすみ……マキナ……


こうして、俺の異世界での三日目が幕を閉じた


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