表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械の神と救世主  作者: ローランシア
第二章 始まりとやり直し
31/38

031 セレスティアと救世主


 セレスティア王とディランを無理矢理引きずりながら闘技場に到着する


 マキナー? セレスティア王が逃げないようにワイヤー頼む


≪はいっ≫


 次元の扉が開き陛下をワイヤーで拘束する


「なっ!?なにをする!?」

「あんたが逃げないように縛るだけだよ」


 いつのまにか闘技場は見物に兵士や騎士、街の人達が観客席に大勢来ていて大盛り上がりだった


「……あぁ。そこの騎士さん? ちょっとディラン達に剣を貸してやってくれないかな」

「ハッ! 自分でありますか! 救世主様! ……はいっ! どうぞ! お使いください!」

 騎士が剣をはずし両手で渡してくる


「ありがとう。ちょっと借りるね」

「ハッ!」


 やっぱ相当恨まれてるなこいつら。だーれも味方してくれねーじゃん

≪大分暴君のようですからね。言いがかりをつけられて粛清された兵士や騎士は多いようです≫

 なるほど、こいつらの同僚を殺されてるのね。そりゃ味方したくねーわな


 ディランを引きずっていく


 ディランを闘技場の中央に放り投げ、剣をディランの体に投げてやる


 ドサッ……!


≪マスター。この闘技場にスピーカーを設置しました。マイクをどうぞ≫


 お。サンキューあとこの国の全員が見られるようなスクリーンも出せるか?

≪はいっ。セレスティアの街のどこからでも見られるようにしておきます≫


 ブォン!


≪闘技場と街の周囲と中央に特大スクリーン配置完了しましたっ≫


 闘技場の中央に四方の巨大スクリーンが出現する

 次元の狭間が開き漆黒のマイクが出現し、漆黒のマイクを受け取る


 スクリーンに俺の顔が映し出される


 俺はマイクに向かって話し出す


「みんなー!! 俺は救世主の東条司だ! 今までこの国の王、セレスティア王やその側近、貴族達がやって来た事をしっかり見てくれ!」

 スクリーンに今まで死んでいった救世主たちが凌辱され殺される一部始終が映し出され始める


 足を潰された少女がサイクロプスに股を強引に開かされ凌辱される姿が映し出される


「いやああああああああ!?やめてええええええ!?死んじゃう!?そんな大きいの入らないっ!?」

「いやあああああ! 殺さないで殺さないで!?殺さないでぇっ!?」


「ハハハハハ! あの娘! 魔物の糞を食べておりますぞ!」

「人間の誇りなど捨て去ったか! まるで糞にたかるハエだな! ハハハハハ!」


「いやあ、ディランさん今日の救世主は上玉ですな! たまりませんよ、あの乳!」

「今度、処分する救世主を娼婦として一人いただきたいですな! ハハハハハ!」

「救世主を処分する手段として一考しておきましょう!」

「それはいいが金ははちゃんと払うようにな」

「ええ! もちろんわかっておりますとも! 陛下! ハハハハハ!」


 サイクロプスが両手で少女の両の足をもち股を裂こうとする


「いっ! いやああああ!?裂けるっ!?裂けるぅっ!! 死ぬうっ!」


 バリバリバリバリッ……! !


 サイクロプスに少女が真っ二つに引き裂かれ、闘技場中に赤い鮮血が派手に散らばり、救世主が絶命する

 サイクロプスが少女だった肉片を投げ捨て、牢へ戻っていく


「ハハハハハ!?やはり選ばれた神器を持っていない欠陥品は叫び声にも品がないですな!」

「フン。まったく色気もなにもないわい……」

「しかし、いつになったら当たりを引けるのでしょうなぁ」

「気長に待つしかありますまい。何しろ伝説の神器ですからな、そう簡単に出せる救世主が現れるはずないでしょう」

「そうですな。まぁ、それまでは欠陥品に楽しませてもらいましょうか! ハハハハハハハ!」


 その映像を見た観客席の兵士や騎士達、街の人達がざわざわと騒ぎ出す


 俺は左手を天に掲げマイクにこれから始まるイベントの告知をする


「こうしてこいつらは召喚されて間もない救世主を、巨大なサイクロプスと凌辱させた挙句戦わせ殺していやがった!

 ところがだ! それを問い詰めると「サイクロプスくらい訓練しなくても倒せる」と言い「救世主が死んだのは「事故」だ」と言いやがった!

 救世主が死んだのは戦うのが下手だったからだ」と言いやがった! これはその証拠だ! みんな見てくれ!」


 先ほどのディランとセレスティア王の発言のシーンが再生される


「神器を呼び出してすぐなら当然武器の扱い方すらわかってない状態です。

 扱い方がわかっていない神器はただの武器と変わりません。これはご存じですね?

 つまり、戦闘訓練もしていない人間がただの武器でサイクロプスを倒せると思ってやらせていた、

 しかし予測不能な不幸な事故が起こってしまっている。こういう事ですね?」

「まあ、そういう事になりますな。こう言ってはなんですが、救世主様が戦うのが下手だったのではと思いますが。ハハハ……」

「そっ! そうですよ! 救世主様が戦うのが上手だったら事故は起こっていないはずです! 私達がなぜ責められなきゃいけないんですか!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおお! 何が下手だって!?許せねぇっ! こんなのただのでっちあげじゃねえか!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「こいつらが言うように本当に「戦闘訓練をしてなくてもサイクロプスが倒せる」ものなのか、

 実際にこいつらに戦ってもらって証明してもらおうじゃねえか! みんな! 証人になってくれぇっ!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおっ! 任せてください! 証人になりますよ! 救世主様!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「さぁ! 待たせたな! 今からディランが「訓練してなくてもサイクロプスを倒せる」所を見せてくれるぞ! !」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおお! 待ってたぜぇこの瞬間をよぉ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 ……ガッ


「うっ……ひっ…………!?」

「もうじきサイクロプスが出てくるはずだ。頑張って戦ってくれ」

「ひっ!?……っ!?」


 ガッと剣を胸で抱きながら怯えるディラン


 せめて鞘から抜いて構えろよ


 闘技場の門が開きサイクロプスが出てくる


「ひいいいいいいいいいいい!?」

 尻もちをつきながら股を黄色く汚し後退りしていくディラン


「よっ! ディランさんのっ! ちょっといいとこ見てみたい!」

 兵士の一人が立ち上がり手を広げコールの掛け声を上げる


「行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ!」

「行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ!」

「行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ!」

「行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ! 行っけ!」

 会場中の人達からコールが始まる


 やっべ! セレスティアいい所じゃーん! 俺好きになっちゃうぞ?

≪この一体感! これがライブなんですねっ!≫


 ディランが慌ててサイクロプスから逃げ惑う


「ハハハハハハハハハ! 必死だ! 必死に逃げてるぞ! あいつ! ハハハハハ!」


「お、おい!?本気か!?本気で儂らにやらせる気なのか!?」

「当たり前だろ。お前らは本気でやらせてなかったのか? 冗談のつもりだったのか?」


「ひっ……ひいいいいいい!?やっ! やめっ! やめてえええええええええええ!」


「上手な戦い方見せてくれよー!」


「そうだー! 自分に出来ない事人にやらせてたわけじゃないんでしょー?」

「そっ! それは救世主だからですよおおおおおおお!?」

「救世主つっても超人じゃあるまいし、訓練してなきゃろくに戦えないのは村の子供だって知ってますよ!」

「ディランさーん!?訓練しなくても勝てるんでしょー!?見せてくださいよー!」

「かっこいいとこみせてくださいよー!?口だけじゃない所みせてくださいよー!」

「サイクロプスさんもがんばれー! ハハハハハ! !」


「おっとぉ! ディランがコーナーに追い詰められた! ここから起死回生の一発が出るかぁ!?」


 ドガッ!


 ディランがサイクロプスのこん棒にまともに殴られ壁に激突し地面に落ちる


 ドサッ……!


「があっ!! !?ごひっ」

「あれれ~? おかしいぞぉ? なんで訓練してなくても勝てる敵なのに一方的に負けてるんだ~?」

≪きっと脳内では「できる!」って思って粋がっちゃうタイプなんじゃないですかね≫

 あー、ネットによくいるタイプだ

「あぁ。元の世界にもいたな……」


「助け……」

「助けないよ? お前あの子が「助けて」って言った時助けなかったじゃん?」


 サイクロプスが思い切りディランにこん棒を叩きつける


 ドン! ドン! ズドン! !

 ぐちゃっ! ぐちゃっ! ぐちゃっ!


 ビッッ……! ビシャッッ!


 闘技場の壁や地面にディランの鮮血が飛び散る


「ハハハハハハハ! はぁっはぁっ……! あぁ…………笑い過ぎて腹が痛い……」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ハハハハハハハハハハ! ざまぁ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「いやぁ、哀しい事故が起こってしまいましたねー。じゃあ陛下? 陛下はあんな事にならないでくださいね。ちゃんと倒してくださいね?」

「わ! わかった! 儂が悪かった! 儂が間違っておった!」

「そんな事は聞いてません。ちゃんと倒してくださいね? と聞いてるんです」


 ……マキナ? 今からセレスティア王の顔をスクリーンに映してくれ、みんなに見せたい

≪はいっ!≫

 セレスティア王の顔がスクリーンに映り俺の声も放送されるようだ


「わかった! 認める! あの! 儂は救世主を無理な相手と戦わせて殺して処分しておった! 全ては国の安寧の為じゃ! 許せ!」

「国の安寧? 召喚されて間もない救世主を魔物に凌辱させて殺させる事が国の安寧に繋がるとは思えませんがね?」

「それは催しじゃ! ああしたほうが貴族が喜ぶと思ってやった事じゃ! 儂は悪くない! いい加減許せ!?」


「……状況が悪くなっただけで自供とは……、火サスの犯人かあいつは」

≪火サスでもなかなかないですよ?≫


「グオオオオオオオ!?」


 サイクロプスが俺と陛下の方へズンズンと歩いてくる


「……うるっせえな! 殺すぞ!?」


 俺が全力の殺気を込めサイクロプスを恫喝すると、ビクっと体を揺らした後動きを止め、そこから動かなくなる

 騒がしかった兵士と騎士達までもが闘技場がシンと静まり返る。いや、あんたらは盛り上がっててくれて構わないけど?


「で? それはつまり「召喚の議」をやって、当たりかハズレかを見極めて、ハズレだったら事故に偽装して処分してたって事だよな?」

「そ、そうじゃ!」

「それで? お前らの後ろには何がいる? 破滅の王か?」

「は、破滅の王!?まさか! そんなものとは手を組んでおらん! 儂が手を借りたのは「禍の者」と名乗る者じゃ!」

「……「禍の者」? そいつの特徴は? いつ知り合った!?」

「さ、三年ほど前じゃ! 黒いマントに、気持ち悪い仮面をつけておった……!」

「……!?黒マント仮面!?」


 ガッ


 思わずセレスティア王の胸倉を掴む


「……そいつらの数は…………?」

「儂が知っておるのは一人だけじゃ……」


 マキナ? セレスティア王の脳調べられるか


≪はいっ。マスターの能力が向上したので、セレスティアまで届きますっ!

 すでにセレスティア王の持つデータは全てコピーしてありますっ。ディランのデータもすでに取得済みですっ≫

≪黒マント仮面についてのデータも出てきました!≫

 さっすがマキナちゃんわかってるね!


「で? ……そいつにはどんな事を頼んでいた?」

「そやつは魔物を操る能力を持っていて……辺境の村に追いやった救世主を村ごと襲わせていた…………」


 ……やはり魔物を操る奴が裏でいたか

 けど、なんだ? 破滅の軍勢=「禍の者・魔物を操る奴」じゃないのか……?

 黒マント仮面をつけてるけど「禍の者」って奴は破滅の軍勢の仲間じゃない……?

 この口ぶりだと関係ないみたいに言ってるよな


「おい、ちょっと待て? なんで、村ごとなんだよ? お前らの国の領地だろうが」

「きっ……、貴族派閥というものがあっての…………。

 政策に反発する貴族が統治する領地に救世主を送って守らせて、

 魔物に襲撃させて滅ぼさせてその場所を統治する貴族と救世主を排除していたんじゃ……」


 なるほどな。政敵の貴族を領地を魔物から守れなかったって因縁をつけて失脚させていたのか。

「白石 希望」の時のアレは邪魔な政敵とハズレ救世主を一度に始末するために利用したって事か


「……なるほどな。やはり…………都合のいいように利用された上に処分されそうだったわけか。私は……!」

 ……約束、守ったぜ? アルテミス

「……ああ。感謝する。…………今すぐセレスティアに向かって、そいつの首をはねてやりたいが……」

 ……俺に任せろ。これは「救世主」の仕事だ

「……すまん、頼む。東条」


 ……ギリッ…………! その村の中には無関係な人間もいたはずだ……

 この危険な世界でそれでも懸命に生きようとしてた人達だっていたはずだ……!

 それをこいつら……マジでドクズだな…………!


 しかし、魔物を操って街や村を襲っていたやつが破滅の王の軍勢に属していないってのが気になる

 そいつがエルトへ魔物を襲撃させて、レティシアを洗脳して救世主を殺してた事は間違いないだろう


 そういえば……レイザーさんの村を襲ったのも黒マント仮面で魔物を引き連れてきたと言っていた、

 あのアルテミスの動画を見た時……! レイザーさんの様子がおかしかった…………

 破滅の王の顔がアップで映った時……、あの人の性格ならきっと「「あの方」の野郎だ!」とか言って画面に食い入るように睨みつけるはずだ

 それなのにあの時何もリアクションはしてなかった……となるとやはり「禍の者」って奴がレイザーさんの村を襲ったやつか


「そいつと連絡を取る方法は……?」

「ない……。あちらから一方的に連絡をしてくるのじゃ……」

「……どんな方法で連絡を取っていた?」

「……ある日、不思議な魔法で儂の心に話かけてきての…………。協力してやると唆されたんじゃ……」


 心に直接話しかけてくる魔法……!?なんだそれ、初めて聞く魔法だぞ…………!


「今は連絡は取れないんだな?」

「ああ……さっぱり声が聞こえなくなっての…………もう一年も話しかけて来ておらん……」

「そいつに関する事をなんでもいい思い出せ……」

「……一年ほど前にフィーネという村を襲うのを手伝ってもらったことがある…………」

「……!」


 アルテミス事件のあった村だ!


「その時村を滅ぼすという約束だったのに、途中でやめたらしいんじゃ。

 そ、それでその後連絡があった時になぜやめたのかと聞いた」

「それで? なんて言った?」

「「都合が悪くなったからやめた」と……」

「……他には?」

「そ、それきり連絡が来なくなったんじゃ」

「で、連絡が来なくなったから村を魔物に襲わせられなくなって、こうして闘技場で殺してたわけか?」

「そ、そうじゃ!」


 ……よし、マキナ? 全部データは取ったんだな?

≪はい。完了してます≫


 じゃあ、もうこいつにもう聞きたい事はない。……改めて見せてもらおうじゃねえか

≪えっ? 見せてもらう? 何をですか?≫


 決まってんじゃん? サイクロプスと戦えるところだよ。セレスティア王の拘束を解いてくれ

≪はいっ! ふふふっ。喋ったから許したのかと思いましたよー≫

 あんな非道が自白しただけで許されるんなら救世主なんていらねーよ。それに話せば許すとか一言も言ってねーし!

≪あははははっ! マスターらしいお言葉ですっ≫

「……東条。…………すまん……」

 ……きっちりカタつけてやるから心配すんな

「……ああ。頼む…………」


 マキナがワイヤーを消す


「あ……ゆ、赦してくれたんじゃな…………?」

「……何をだよ?」

 セレスティア王の首根っこを掴み引きずり始める


 ズリズリズリズリ……!

 セレスティア王が俺に引きずられながら必死に訴えかけてくる


「そ、そんな!?全部喋っただろう!?自白したではないか!」

「……だから?」

「そんな!?頼む! 儂には家族がいるんじゃ! むっ、娘がいるんじゃ!」

「お前が今まで殺してきた救世主にも家族はいただろうよ」

「そっ! そうじゃ!?儂の娘をお前にやる! お前をセレスティアの王にしてやる!」

「いらね」

「儂を味方する者も多いぞ!?その者達から非難や嫌がらせを受ける事になるぞ!?」

「人に嫌われるのが怖くて「救世主」できっかバーカ」

「わっ! わかってないのか!?儂を殺せばお前も困る事になるのだぞ!?」

「俺を一番困らせてるのはお前だ」


 セレスティア王を中央まで引きずって行き投げる


 ドサッ……!


「うっ……!」


 俺は拳を振り上げ、マイクで再開を告知する


「よーし! お前らー! 待たせたなー! いよいよ本日のメインイベント! セレスティア国王によるサイクロプス討伐実演だー! !」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおっ! 待ってましたぁーっ! さすが救世主様ー!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 告知が終わった後、俺は踵を返し端に向かって歩きながら声をかける


「まずはあそこの剣拾いに行ったほうがいいんじゃねえかー?」


「ヒッ……!?ひいいいいいいいいいいいい!?無理! 無理じゃあああああ!?助けてくれえええええ!」

 セレスティア王が俺を追いかけて来ようとする


「その「無理」を今まで救世主達に強要して殺してきたんだろうが……!?」

「ひっ……!?」


 セレスティア王を睨みつけながら恫喝するとセレスティア王が顔面蒼白になり動きが止まる


 陛下が剣のある方へ駆け出し、運動不足だったのか数回転びながら辿り着き剣を拾う


「ハハハハハハハ! いい気味だ! そうだ! あの時の私のように必死に助けを乞え!」


 ガタガタと震えながらズリズリとすり足でサイクロプスと距離を取ろうとする

 端に到着し振り向くとセレスティア王が剣を取るところが見えた


「よーし。剣取ったな? おい!?サイクロプス! あのジジイとお前の勝負だ! お前が勝てば牢に返してやるぞ!」

 俺はセレスティア王を指さしながらサイクロプスに命令し、腕を組んで見守る


 サイクロプスが俺の言葉に嬉しそうな顔になり、ウッキウッキの表情でズンズンと歩きながら陛下に近づいていく


「ひいいいいいっ! 問題っ! そうだ! 問題になるぞ!?いいのか!?」


 セレスティア王が必死に立ち上がり必死の形相でふらつきながら走り出す


「何度も言わせるなよ。これはお前のサイクロプス討伐の実演だ。ただの実演。問題になるわけねーだろ。

 さっきのディランは実演で「哀しい事故」が起こっただけだ。お前らがいつも言ってる事だろうが」

「じ、事故!?ふざけるな! 何を馬鹿な事を! こんなの儂を殺そうとしてるとしか思えんぞ!」

「俺もさっきの状況はそう見えたし、お前らの言ってた事もそう聞こえたよ。でも、違うんだろ?

 訓練してなくてもサイクロプスくらい楽勝なんだろ? いいからやってみせろ」

「はぁはぁ……っ! そ、そんな!?自白したではないか! 死ぬとわかっていてやらせていたと! こんなの処刑じゃ! いい加減にしろ!」

「……はぁ? …………処刑? ……俺はそんな気は全くないぜ? 俺はお前なら出来ると信じてる! 頑張れ!」

「儂の話を聞け!?頼む! 処刑だけはやめてくれ! 命だけは助けてくれ!」

「処刑じゃないっての。じゃあ、この場のみんなに聞いてみようか」

「は……? 聞く? 何を…………」


「……おーい! お前らー!?これはただのセレスティア王によるサイクロプス討伐の実演だよなぁ!?」

 俺は拳を掲げ観客に語り掛ける


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はいっ! これは陛下のサイクロプス討伐の実演でーす!」」」」」」」」」」」」」」」」」

 観客全員が俺と同じように拳を振り上げながら答える


「ほーら? これだけ多くの人たちが実演だって言ってるぞ? いいからやれ」

「そんな!?」


 そんな事に話してる内にサイクロプスはズンズンとセレスティア王に近づいていく


「ひっ!?ひいいいいいいいい!?」

 腰を抜かし黄色く股を濡らしながら怯え、四つん這いで逃げようとするセレスティア陛下


「ハハハハハ! 陛下!?どうされたんですか!?早くサイクロプス討伐お願いしますよ!」

「訓練もなしに勝てるなんてよく言えるよなぁ……ホント…………」

「俺らがどんだけ傷だらけになってやってるかわかってねえんだろうな」

「まぁ、俺らは凡人だからなぁ。陛下みたいな選ばれたお人はできるんだろうよ! ハハハハハ!」

「そうだな! 見せてもらおうぜ! ハハハハハハハ! おい? 今日……行くか?」

「行くに決まってんだろ! こんなの酒の肴にしないでどうすんだよ! ハハハハハーーー!」

「だよな! 今夜は宴だぞぉ!!! ハハハハハハハ!」

「俺も行くぞ! 今夜は呑むぞーーー!」

「今夜は美味い酒が呑めそうだ! ハハハハ!」

「そうだ、みんなで酒持ってケントの奴に報告行こうぜ!」

「……ああ。そうだな…………。ケント。今日は良い日になりそうだぞ……」


「たっ!?助け……!?」

「お前、さっきあの子が「助けて」って言った時なんて言った……?

「救世主様。そのお力で試練を乗り越えてください」って言ったよな?」

「そ、それは!?おぶっ!?」


 サイクロプスがこん棒を振り回し陛下の横っ面を殴りつける


 セレスティア国王が地面に叩きつけられ地面を鮮血で染める


 ビチャッ……!

 ドシャァ……! !


 うつ伏せに倒れたセレスティア王が苦痛に顔を歪め叫びだす

「痛い!?ぐあああああああああ!?し、死ぬう……!?」


「陛下。そのお力で試練を乗り越えてください」

≪あははははっ! マスターっ! 棒読みですっ≫


「ひっ!?や、やめ……ああああ!?」

 自分に近づくサイクロプスに顔面蒼白にしながら見上げるセレスティア王


 サイクロプスが地面に叩きつけられたセレスティア王の足にこん棒を振り下ろし足を叩き潰す


 ガッ……!


 グチャッ……


「があああ!?? いっ! 痛い! っ!?あっ足!?儂の足いいいいいい!?っ!?やっ! やめろ!?来るな!?来るなああああ!! !?」


 足を潰され動けずにいるセレスティア王がうつ伏せで体を起こし叫ぶ


 意外としぶといな


「あ……あぁ…………! あああああああああ……!?」


 ズンズン……!

 サイクロプスが二歩歩き距離を調整しこん棒を叩きつける


 ……ドン! ドン! ドン…………! ドーン!

 メキッ……! バキッ! ミチッ…………ギチッ!

 グッチャビチャァッ……ニチャッ…………!

「おっ”……!?おぉ…………お……」


 セレスティア王の苦悶の声と骨が砕け肉が潰れる気色のいい音が闘技場に広がる


 サイクロプスが最後に思い切り力を貯め、全力で振り下ろす


 グッシャア……

 ビッッ……!


≪「ミラクルクラッシュが決まったぁ! !」≫


 セレスティア王の鮮血が派手に闘技場に飛び散りセレスティア王が動かなくなる

 サイクロプスがこちらを伺うように顔を向ける


 頭が完全に潰れていた為絶命したはずだ、が……俺は用心深い性格なんだ。死んだふりをしているかもしれない

 ここから馬鹿な事をすればどういう事になるか見せしめのパフォーマンスを行う事にする


「……おい! サイクロプス! そいつらをバラバラにしろ! 首、腕、胴体、脚! 何から何まで引きちぎれ! 完全に死んだと思うまで手を緩めんな!?」

「グオ! オオオ……!」

 サイクロプスがセレスティア王がピクリと動く


 この処刑は完全に死んだとはっきりわかる状況になるまでやって、はっきり見せねえと意味がない


 ブチっ……ミチミチッ…………!

 ブシャアアッ……


 サイクロプスがセレスティア王達の体を引きちぎるたびに闘技場に派手に血がまき散らされる


 サイクロプスがディラン達の足、腕、首、胴体をバラバラにしていく


 一通りバラバラにし終わり、サイクロプスがディラン達の頭部を踏み潰す

 サイクロプスが「これでいいの?」という表情でこちらを向く


 セレスティア王だった肉片等が闘技場にまき散らされ、闘技場に一瞬の静寂が訪れた後……闘技場が歓喜の声で包まれる


「ハハハハハ! やった! やったああああ! !」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「やったああああああああああ! ハハハハハハハ! やった! やったぞおおおおおおお!」」」」」」」」」」」」」」」」


「いやー。セレスティア王のサイクロプス討伐実演中に哀しい事故が起こってしまいましたー」


「はははは! いやぁ、哀しい事故でしたねー! 救世主様!」

「正直スカッとしました……! 私」

「あのスケベジジイざまぁないわ……! 救世主様ー! ありがとー! 今度うちのお店に来てねー!」

「レヴァルド……お前を冤罪で追い詰め殺した元凶は死んだぞ…………! うぅっ……! ありがとうございま……す……救世主様……!」

「サイクロプス君ナイスファイトだー! よくやったぞー! ハハハハハ!」

「ホントいい仕事したわぁ! あのサイクロプス!」


 ……一応念押ししとくか


「……なぁ、みんなー!?今日は「セレスティア王とディランがサイクロプス討伐の実演中に事故で亡くなった」だけだよなー?」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい! 今日は陛下とディラン氏がサイクロプス討伐の実演中に事故で亡くなっただけでーす!」」」」」」」」」」」」」」」」


 観客全員が口を揃え今日起こった事を言う


 俺は念押しの確認をし、その返事を聞き口角を上げる


 ニッ……!


「……おい、サイクロプス? いつまでいるんだ? さっさと牢に戻れ!」

「グオオ……!?オオオ~……」


 そそくさとサイクロプスが出てきた扉に戻って行く


 さーて、残るは後始末だな

 俺はさっき騎士に借りた剣を拾い。騎士の所へ歩いて行く


「この剣助かったよ。ありがとう」

「いえ! お役に立てて光栄です! 救世主様!」

「ああ、それと、ちょっと頼みがあるんだけどいいかな」

「はい! 何か……?」

「悪いんだが、掃除とか後始末頼めるか?」

「ハッ! お任せください! 救世主様!」

「ありがとう、じゃあ頼むな。……それから、あいつらに殺されそうになってた救世主は俺が保護する事にした。構わないな?」

「ハイッ! それがよろしいかと思います!」

「そうか。じゃあ俺らは帰るから後は頼む。後はみんなで国を盛り上げてくれ」

「はい! ありがとうございます! お疲れ様でした救世主様!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ありがとうございました! 救世主様!」」」」」」」」」」」」」」」」


「……え?」


 その声量に驚き振り返ると、いつの間にか観客席には人が溢れそうになるほどの人が居た

 一斉に感謝の言葉の雨が降り注ぐ


「最高だぜ! あんちゃーん! よくやってくれたー!」

「救世主様素敵ー!」

「救世主様ー! ありがとう! 本当にありがとう!」

「救世主のおにーちゃーん! ありがとーっ!」

「きゃああ! 救世主様ー! こっち向いてー」

「救世主様ー! 愛してるー! 結婚してー!」

「救世主様ー! いつでもセレスティアに遊びに来てくださいよー!」


 ハッ……! セレスティアの人達、最高かよ!


 ……ニッ!


 俺は口角を上げ……拳を掲げながら叫ぶ


「みんなー! これから良い国作っていけよー!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」」」」」」」」」」」」」



 俺のその言葉にセレスティア中から盛大な喝采と大歓声が巻き起こった────────




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ