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機械の神と救世主  作者: ローランシア
第二章 始まりとやり直し
14/38

014 救世主と提案


 翌日、

 俺は自室で昨日レイザーさんから聞いた話を思い出しながら、

 記憶情報を確認するため以前の記憶をモニターで見せてもらって確認していた


「はい。私はリリア・バルドと言います。

 二年程前、アルザード山脈のふもとにある「フィーネ」という村が「破滅の王」の軍勢の侵攻を受け家族を亡くした孤児です……」


 やっぱりだ。リリアさんの苗字は「バルド」……! もしかしたら…………!


 ……よし。リリアさんのいる孤児院に向かうぞ

≪はいっ≫


 廊下の窓から翼で飛び立ちリリアさんのいる孤児院へ飛ぶ


 空を飛びながら連絡用マジックアイテムをポケットから取り出し魔紋を出現させる、レイザーさんを呼び出す


 トルルルルルル……! トルルルル…………!


「……俺だ。東条か?」

「はい。昨日はどうも。……黒マントには関係ない事なんですが、

 レイザーさんに少し確認したい事がありまして……」

「確認? なんだ?」

「レイザーさんの妹さんの名前を教えて欲しいんですが……」

「……あん? もう死んじまってる妹の名前聞いてどうすんだ…………?」

「あの……? レイザーさんの妹さんって「リリア・バルド」って名前じゃないですか…………?」

「……っ!? なんでお前が俺の妹の名前知ってんだよ!?」

「やはりそうでしたか。以前暴漢を捕まえた事があるんですが……」

「ああ……。オッサンがなんか言ってたな…………」

「はい。その暴漢に襲われていたのがリリア・バルドさんなんです」

「なにぃっ!!? そっ! そりゃ本当かっ!? おい!? ……って事はあいつ! リリアは生きてんのか!? おい! 東条!!?」

「はい。本人がリリア・バルドと名乗っていたので間違いないかと。

 今そのリリアさんのいる孤児院に向かってます。確認して警備隊にお連れしますね」

「おっ、おう! 頼む! いっ! いや!? おっ、俺っ……! 俺もその孤児院に行くぜ! どこの孤児院だ!?」

「……じゃあ、孤児院で待ち合わせと言う事にしましょうか。

 孤児院はノインツェ教会の管理する孤児院です。ユクレス橋のたもとにある石造りの建物です……」

「……あそこか! わかった! すぐ向かうぜ!」

「じゃあ、孤児院の前でお待ちしてますね

「ああ!」


 通信を切り、孤児院に到着する


 タッ……


 孤児院の脇の洗濯物を干す所にリリアさんの姿が見えた


「あ、いたいた! リリアさーん!」

「……? あっ!? 東条さん!」


 タタタ……!


 リリアさんが小走りで近づいてくる


「お久しぶりです! 東条さん! どうなさったんですか? 今日は……」

「確認なんだけどさ。リリアさんってお兄さんいるかな?」

「は、はい。私がまだ小さい頃冒険者になると言って家を飛び出したまま行方不明の兄がいます……。どうしてそれを?」

「やっぱり。……そのおお兄ちゃんって「レイザー・バルド」さんだよね」

「っ!? は! はい! あの! お兄ちゃんを知ってるんですか!? 東条さん!」

「ああ、救世主の仕事を手伝ってもらってるんだ」

「ホントですか!? あの! お兄ちゃんと会わせてください!」

「大丈夫。もうじきここにくるから……」

「えっ!? おっ、お兄ちゃんがここに!? この街にいたんですか!」

「ああ。この間この街にきたらし……」


 ドドドドドドドドド……っ!


 孤児院の向かいの道から土煙と共に、どかどかと誰かの疾走する音が聞こえる


「……おっと。ほら、来たようだよ」

「……あ…………あぁ……! あれ……は……!」

「リリアーーーーーーーーーーーーーッ!」


 リリアさんが土煙に向かって駆けだす

「お兄ちゃんっ……! お兄ちゃん…………!」

「リリア……! リリア…………!」


 リリアさんがレイザーさんの胸に飛び込み、レイザーさんががっちりと受け止める


「リリア……! 生きてたかこの野郎! ハハハハハ!」

「お兄ちゃんっ……! お兄ちゃんっ…………! うんっ! うんっ! 東条さんに助けてもらったの!」


 レイザーさんとリリアさんが涙を浮かべながら抱き合い再会を喜ぶ


「そうか……! お前っ! そうか…………! そうかぁ……! 生きてたかぁ! ハハハハハハハ!」

「お兄ちゃんこそっ! 冒険者になるって言って村を飛び出したから魔物に殺されて食べられたと思って心配したんだからっ」

「ハハハハハッ! 馬っ鹿言うなよ! 俺が簡単に死ぬかってんだ……! お前の兄貴はつえーんだぞ!」


 帰る前にレイザーさんとリリアさんに挨拶ようと歩いて近づく


「……再会出来てよかったですね、レイザーさん、リリアさん。…………じゃあ、レイザーさん? 私はこれで失礼します」

「おっ! おい!? 東条!? お前礼もさせずに帰るつもりかよ!? そうはいかねえぞ!」

「そっ! そうですよっ! 東条さんのおかげでこうしてお兄ちゃんとまた会えたんです! お礼させてください!」

「今日は陛下に謁見する先約があって……すみません。今度、あの酒場で飯でも奢ってください…………」

「……よおし、わかった。じゃあ今度たらふく食わせてやるからな! 覚悟しておけよ! ハハハハハ!」

「ええ。楽しみにしておきます」

「……東条!」

「はい」

「……ありがとよ! お前のおかげでリリアが命拾いした…………! 感謝するぜ……!」

「東条さん! 本当にありがとうございました!」

「……いえ! じゃあこれで失礼します!」


 手を振りながら駆け出し飛び翼を展開し舞い上がる


 ……よし、これでいい。マキナ? 部屋に戻るぞ。

 今日は昼から陛下に謁見の間に来るように呼ばれてるんだ

≪はいっ≫


 時間まで部屋で時間を潰し、謁見の間へ行く


 謁見の間には陛下と貴族達がずらりと並んでいた



「……お久しぶりです。陛下」

「救世主様! お忙しい中わざわざ謁見の間にご足労いただき感謝いたします!」

「いえ、お気になさらず。……陛下? それで今日は私に何か…………?」

「先ほどソフィアから聞きましてな! 救世主様がソフィアをお見初めになったとか!」


 うーわ!? 速攻でお父さんに報告しちゃったの!? ソフィア!?


 ソフィアはエルトのそれも第一王女だ。責任も取る気もない男と付き合わせる親はいないだろう

 これはきっちり話してちゃんと認めてもらってからお付き合いしないと陛下にもソフィアにも失礼だ


 俺はスゥッ……息を吸い吐き。意を決して口を開く


「……はい。私はソフィアさんを愛してます。陛下、どうか私とソフィア様のお付き合いを認めていただけませんでしょうか」


 俺は頭を下げながら陛下に告げる


 公の場で呼び捨ては流石にまずいと思い「さん」呼びで調整を取る

 これなら相手への敬意を失わず、なおかつ近しい間柄という両方にある程度の意味が通るだろう


「ほっほっほ! これはめでたい! 救世主様! ソフィアをよろしくお頼みもうしますぞ!」


 ……えっ? あ、あれ!?

 完全にウェルカムムードですか!?


 パチパチパチパチパチ……!

 その場の貴族たちが一斉に拍手を贈ってくれる


「おめでとうございます! 救世主様! 陛下!」

「いやぁ、これはおめでたい……!」

「今日は良き日ですな! 陛下!」

「ほっほっほ……。皆も喜んでくれるか」

「ええっ! もちろんです! おめでとうございます! 陛下!」

「巷で噂の救世主様と姫様が相思相愛なんて、喜ばしい限りですな! ハハハハハ!」

「いやあ、陛下が羨ましい!」

「この良き日に立ち会えた事、嬉しく思いますぞ!」

「いやあ、我が国の至宝「ソフィア姫」と救世主様が結ばれる日が楽しみですな!」

「陛下! 救世主様と姫様の式の際には我が領土でぜひ……」

「おやおや……? ぬけがけは感心しませんなぁ。ファルヴィス辺境伯…………。そういう大切な事は公平に話し合いで決めなければ」

「あっ……、これはセルヴァン辺境伯…………。ハハハ…………、……バレましたか……?」

「相変わらずファルヴィス辺境伯は抜け目がないですな……? フフフ…………!」陛下の周りの家臣達が祝福の言葉と共に盛大な拍手を贈ってくる



 ……ここまで歓迎ムードで祝福されるとは思わなかった…………

≪マスター? 救世主が自分の娘を好きだと言っているのに拒否する親はこの国にはいないと思いますよ? ≫

 ええ……?


 と、とにかく返事しないと!


「は、はい! 任せてください!」

「救世主様に娘をお任せできるのであれば、親としてこれ程嬉しい事はありません。どうか末永くソフィアをお願い申し上げる」

「こっ! こちらこそ!」

「いやあ、今日は朝から素晴らしい報告を聞けた。……おい、今夜は宴を開くぞ。宴の準備をしてくれるか。ソフィアと救世主様の婚約パーティだ」

「かしこまりました……陛下」

「今日は特別な日だ。酒はアレを頼む」

「ハッ……承知いたしました」


 どうなってんだ……? マジで…………

 いや、反対されないのはありがたいけどさぁ……

≪まぁ、「救世主」ですからねー≫

 救世主つっても、まだ世界救ってないじゃん? 俺

 まだ何もしてないに等しいのに、この対応はおかしくないか?

≪……先日の魔物襲撃時の防衛と、人質救出…………。

 マスターはこの国にとって英雄と見られてもおかしくはないですよ?

 一週間足らずの間にあの二つの大きな事件を解決したんです。

 この国や世界の為に救世主として役割を果たそうとしていると判断するには十分な成果のはずです≫


≪……マスター? もしかして、この国の人達だけであの状況を解決できたと思ってます? ≫

 できると思うけど……

≪いやいや……いやいやいやいや。マスター…………? ≫

 な、なんだよ?

≪あの、魔物襲撃の防衛……、340と400の魔物が北と南からせめて来た時です。

 私達が街へ帰って来た時、北門の前にどれだけ兵士がいたか覚えてます?

 ……王国騎士と警備隊合わせてたぶん3000くらいか? 数えてないからハッキリとはわからないけど。

 それと冒険者らしき人達が何十人かいたな……

≪あの時同じだけ逆側の南門にも配置されていましたけど、少なすぎです≫

 特に南門側なんて大型種の魔物の軍勢でしたから、三倍……、いえ、五倍の兵士がいたとしても対応できたかどうか…………

 仮に私とマスターが逆だったとして、

 マスターならサイクロプスとオーガが400程度いてもたやすく倒せるでしょう?

 そりゃな

 それです。確かにマスターのおっしゃる通り「可能」か「不可能」かで言えば可能です。

 400の大型種の魔物の群れに仮に配備されていた5倍の数1万5000人の兵力で立ち向かったとして、勝つ事自体はできるでしょう。

 しかし、被害がゼロと言うのはまずあり得ません。勝ったしてもそれは多大な被害を払っての「勝ち」です≫

≪マスターが倒した大型ドラゴンだってそうです。の兵士全員で立ち向かって、それでも多大な犠牲を払うはずです。

 あのドラゴン一匹で大型サイクロプス200匹くらいの強さがありましたから≫

 ……あのドラゴンってそんな強いか? あっけなく死んだけど…………。

 それは私達だから言える事です。一般的な兵士の強さってその程度なんです。

 例外としてレイザーさんとイグニスさんは別格で強いですが、南北から攻め入ってくる敵を一人で対応できるかというと否です≫

≪ですから、冒険者ギルドで絡んできた冒険者が「救世主が解決した」と噂程度にしか認識してなかったのも無理はないんです≫

 それを言うなら俺だって一人じゃ無理さ。マキナがいたから対応できたんだよ

≪私はマスターの神器ですから、マスター一人の力として数えてください。私とマスターは二人で一人ですから≫

 確かに世間的には俺らは二人で一人の扱いか

 って、あれ? この国って人間の国の中でも大きな国のはずだよな?

 なんでそれだけしか兵士がいなかったんだ……。

 見る限り騎士団と警備隊と城内警備も合わせたら十万人以上は兵士と騎士っているよな?

≪はい。全て合わせれば約十万の兵士と騎士がいますね。

 あの時残りの騎士達の半数は、貴族や王族の傍で護っていたようです≫

 それ聞くと戦力配分無茶苦茶だな…………指揮する人間がいないとそういう事になるのか…………

≪そうですね。あの時、指揮官のイグニスさんが不在でしたし、

 王族や貴族たちは我先にと城の地下に籠り自分の身を守ろうと兵士や騎士達に守らせたようです

 残りの兵士は民間人の避難の誘導と避難場所を守っていたようです

 でも……全兵士と騎士で10万って少ないな…………よくそれで防衛出来てたな、今まで

≪度重なる破滅の王の軍勢の襲撃で殺され数が減っていったようですね。

 以前は大国だったようですが今やこの国の国力も軍事力も風前の灯のようです。

 今まで防衛出来ていたのはイグニスさんの力が大きいです≫

 兵士が一人前になるって、相当時間がかかるだろうし、戦死する兵士の数に対して育成が間に合ってない感じか……

≪そこへ魔物の軍勢を一人で蹴散らす人が現れたらどうでしょう? まさに国にとっては「救世主」ですよ。

 国王としては何としてもソフィア姫とマスターをくっつけたいと思っているはずですよ≫

 なるほどね。俺的にはそういう政略結婚みたいなのじゃなくて、ちゃんとソフィアさんと恋愛したいけどなぁ

≪まあ、国王や他の人達の思惑はさておき、マスターはソフィアさんが好きなんでしょう? ≫

 ああ、もちろん

≪じゃあ、マスターはマスターでソフィアさんと普通に恋愛すればいいんじゃないかと。私もソフィアさんだったら認めます≫

 ……え。あの…………? 俺が付き合う人ってマキナが見定めするの……?

≪当然です。私はマスターの半身ですから≫


 ……あの、ちなみに…………、レティシアは……?


≪……うーん。あの人、マスターを壁に叩きつけて蹴り入れましたからねぇ。

 ……正直、かなり微妙な気持ちですが…………≫

 レティシア!? 君の過去の業が大きな壁となって立ちはだかっているよ!?

≪あっ、ちなみに、あのツンデレシスターは論外でーす≫


 ……あの子、マキナに完全に嫌われてる…………


≪当然です≫


「……陛下。そして貴族の皆さんに至急お願いしたいことがあります」

「なんでしょう? なんでもお申しつけください。救世主様」

「絶対的に兵士の数が足りていないと感じます。兵士を増員する事を考えていただきたいです。

 この現状では仮に近隣国家や他の街へ破滅の王の軍勢が現れたとしても、街を離れる事自体が難しいです」


「……やはり、気が付かれていましたか。救世主様」

「ええ。この状況では、何か一つでも間違えば全滅もありうると思いご提案させていただきました」

「ぜ、全滅!? そ、それはさすがにいくらなんでも……!」

「ハハハ……、まさか。さすがに救世主様のお言葉でもそれは…………」


 はぁ……、やっぱりそうか

 こういう楽観的に考えている貴族達がいるから、本腰を入れて今まで取り組めてなかったわけか

≪イグニスさんの苦労が目に浮かびますね≫

 まあ、そうじゃないかと思ってたから、俺が口出ししたんだけどな……

 マジでそうだとわかると結構ショックだぜ

≪ホント他人事というかなんというか……≫

 まずそこの意識改革から促して行く必要があるな、このままじゃジリジリと削られて終わっちまう

 どう考えても俺とマキナだけでどうにかなる問題じゃない。


 俺たちがいる間はマキナのくーちゃんで迎撃もできるだろうが、俺だっていずれは元の世界に戻るんだ

 その日の為に今から少しずつでも動き出してもらわないとダメだ。


「……いえ、救世主様のおっしゃる通りです。私も現在の戦力では国を守り切る事は非常に困難と考えております」


 やったぜ! 隊長が援護してくれた

≪すでに何度か言ってみた事はあったみたいですね。当然ですが≫

 そもそも……街の治安すら行き届ききってないなんて論外だ

 確かに俺やマキナ、レイザーさん、隊長がいればある程度の急場はしのげるだろうけど、

 これから先の事を見据えるなら兵士の新規育成と増員は急務なのは明白だ。


「き、騎士団長まで……」

「しかし、育成をすると言っても、それだけの余裕が今この国にあるかと言われると」

「そうだ……。国民から志願兵を募ってはどうでしょう? 志願兵とその家族には税を免除する等すれば…………」

「セクトゥス伯爵、それでは、国庫が揺るぎかねませんぞ……これ以上税が減っては」

「しかし、救世主様や騎士団長の意見はもっともだと思いませぬか? 何か手を考えなければ……!」

「ううむ……それは、そうですが…………しかし……」


 がやがやと貴族たちが話始める


 やった! 貴族達の議論が始まった! 波に乗ってくれた!

 そうです! 考えてください! それを考え議論し決定するのがこの人達の仕事なはずだ!

 ここにいる人達は俺なんかよりこの世界の事や政治や国のお金の事を知っているはずなんだ

 来たばかりの俺が考えるよりここにいる人達が考えてくれればいい案がきっと出るはずだ!


「ふむ、なるほど。承知しました、救世主様。実は以前から騎士団長から防衛の強化を提案されていましてな。

 それも含めて兵士の増強考えて参ります。騎士団長? 後で騎士団長の意見を聞かせてもらえるかね?」

「ありがとうございます。陛下」

「ハッ! 承知しました……!」


 隊長が俺に少しだけ頭を下げてくれる

 俺も返すように頭を下げて応える


 顔を上げた隊長の表情はまるで「後は私に任せてください」と言っているようで頼もしく感じた


「しかしですよ? 現実的な話、兵士を育成だ、増強だと言っても先立つ物がなければ何とも……。先日、監視塔の修理を初めたばかりですし…………」

「それは我々も援助をすればよいのでは……」

「いやぁ。今のうちにはそれだけの援助ができる力は……」

「陛下。もし金が問題でしたら、私が全て用意しますよ」

「アルザード公爵……。どういう風の吹き回しですかな…………? アルザード商会の会長とは思えぬ発言ですな」

「……先日の人質救出の時…………。私の娘が人質の中にいましてね……」


 ……! あの中に娘さんがいたのか


「救世主様。その節は本当にありがとうございました。アルザード家を代表して最大の感謝を申し上げます……」

「いえ。お嬢さんを助けられたようでよかったです」

「もっと早くに救世主様にお礼に伺おうとしたのですが、

 伺った時ご不在のようでしたので……お礼を申し上げるのが遅くなってしまいました。申し訳ありません」

「来られていたんですね。申し訳ありません。修行や調査のために不在にしていたようです……」

「いえいえ。それは致し方のないことです。救世主様。娘の体調が戻り次第、改めて娘と共にお礼へ伺わせていただきます……」

「お嬢さんにお大事にとお伝えください……」

「ありがとうございます。救世主様」

「私は救世主様のこの提案に全面的に協力させていただきますよ。

 これから娘のように理不尽に傷つけられる人が減るのならこの出費は必要なお金だと考えます」

「……やれやれ。アルザード商会の会長にそう言われては、我々が出資しないわけにいきませんな…………」

「そうですな……。ここで出し渋りをしては家の器を疑われかねないですね」

「……おやおや、私が全て出しても構わないんですよ?」

「アルザード公爵……。そういう意地の悪い事を言うのはやめましょうよ…………。

 私さっきの発言を今激しく後悔してるところなんですから。ハハハ……」

「さて、うちの奴をどう説得するか考えなければ……」

「あぁ。うちもです。どう言えば納得するか……」

「フフフ……、では皆さん? こう考えてはいかがでしょうか? 確かに兵士の増強、そして国の防衛強化を援助をするのは決して安い出費ではないでしょう。

 しかし、家族が安心して日々を過ごせる「安心を買う」と思えば決して高い出費とも言えないのではないでしょうか」

「安心を買う……ですか。ふむ…………」

「……確かに、そうとも考えられますな…………」

「……ふむ。安心を買う、か。なるほど。さすがアルザード公爵は商売がお上手ですな? いいでしょう。私は買いますよ、その「安心」」

「ふうむ……確かにそういう考え方もできますな。よしっ! うちも乗らせてくださいその話。

 うちの娘が夜に不安な顔をしなくていいような警備にしてください!」

「う、む……。安心か…………」

「ふふ。うちの子達も外を出歩くのが怖いと言っていたわね? あなた……」

「……うむ。美術品より価値がありそうだ。うちも買うか」

「ふふふっ……! 私貴方のそういうところが好きよ? うちも出資いたしますわ、陛下、騎士団長」


 ……上手い。次々に出資を申し出る声が次々と上がり出した…………!

「防衛強化のために必要な資金」「兵士の増強」という言い方をすると遠い存在に感じ、

 ぶっちゃけ国の安全がどうのとご高説を垂れられても誰もが無関心だろう。

 だがそれを家族の安全、安心という身近なものに置き換える事で金を出すメリットを見出させた


 人は買い物をする時、まず言い訳を考え自分を納得させる理由が無ければ買うという事はしない

 それがたとえ安い物であっても不必要だと感じる物は買わない。逆に価値があると必要だと思うものには高くても金は出す

 俺には理解できない世界だが、美術品や絵画の類がそれだと思う


「それでは陛下、皆さん。警備強化、兵士増員の件よろしくお願いします」

「承知しました。救世主様……」


 その後貴族たちが色々と提案を出し合い話し合う中、使用人さんたちが慌ただしくパーティの準備に取り掛かり始めた


 ここから先はお任せしましたよ! 皆さん!



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