表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後のアポカリプス  作者: 阿再相利
4/26

相拳

 空より、夕焼け色より、熱い。

 その熱は、人をかたどっている。

 廊下に、二人。

 銀の髪。金の瞳。そして脈動する鋼の肉。

 銀城(ぎんじょう)鍔裂(つばさ)

「転校生か」

 重く、鋭く響く声。

 だが。

「前置きはいい」

 より重く、低く。

 声というよりは、岩の震える響きであった。

「やろう」

 声が岩なら、肉体は巌である。

 鍔裂は、翼より少し低い。

 だが、学ランに詰め込まれた肉は、鍔裂より厚く、重い。

雄斗(ゆうと)・ホワイトキルヒェ」

 少年が踏み出す。

「銀城鍔裂」

 鍔裂もまた踏み出す。

 熱く、重い肉体の二人。

 だが。

 その歩み。

 柔らかく、静か。

 布の擦れる音だけが響く。

 隠密の歩法(ほほう)ではない。

 肉の起こりを消し、技の機を打つ、武術の歩みである。

 歩みを寄せるごとに、肉の内圧が高まり、空間に満ちる気配が、歪む。

 歪み、そして、

(シャ)ッ!」

(シィ)ッ!」

 一閃。拳撃。

 直突きが、互いの顔面に突きこまれている。

「お前」

 鍔裂が、目を見開く。

 雄斗が嗤う。

「捨て置け」

 己の肉を、引き剥がす響きであった。

「俺の血の色など、お前さんには関わりのない事だ」

「そうか」

 鍔裂が、下がる。跳ぶ。

 左半身を前に。両腕を下げ、微かに人差し指と中指を掌に引き込む。

 抉り込む拳――倒す為ではない、殺す為の拳。

 如何な相手であれ。

 どのような目的であれ。

 己のやる事は変わらない。

 闘う。

 それだけである。

(コゥ)ッ!」

 窓ガラスが揺れる。

 重く、鋭く、鍔裂の喝が響く。鍔裂の瞳が一際輝く。縦に割れ、炎が灯る。

 獣が、滲み出す。

 眼前の戦い以外の全てを遮断する自己暗示。意志力と克己心無くしては成し得る技ではない。

 もはや翼の意志は闘争のみである。

 雄斗のめくれ上がった唇から、覗いた牙。同じ相の瞳。

 もはや考える事はない。

 ただ打ち込む事を考えればいい。

 それで、いい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ