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んざああああああああああああああ「「ああああああああああああああああああああああああああああ―――――っ!」」
昨日までと一転しての土砂降りの雨空を見上げながら、大翔たち一同は悲嘆の声を嗄らした。
合宿、中休み。
一日全休となるこの日を待ちわびていたものは多い。
気の早いものは昨日のうちから水着を準備し、うきわを膨らませ、男たちは女子たちの艶姿に胸を膨らませていた。
それが、この仕打ちだ。確かに悪い予感はしていた。降水確率八十パーセントという悪魔的天気予報を見て見ぬふりしていた自分たちにも非はあるだろう。
しかし、これはあんまりではないだろうか。神も仏もいない。いるのは雫だけだ。
「うう、海水浴楽しみにしてたのに……」
その天使も降り続く雨を目の前に、為すすべなく立ち尽くすだけである。胸の前で抱えられているビーチボールが物悲しくしぼんでいる。
ここは自分が元気づけないと、よし、とりあえず軽く抱きしめとくか、と大翔が危ない考えを巡らせているところへ。
「あれ、紡、どこか行くのか?」
半透明のビニール傘を手に、一年の早坂紡が玄関に姿を見せた。
「あ、はい。ちょっと実家に用がありまして。花都先生には伝えてあります」
なぜか照れたような顔で紡は答える。
そう言えば、彼の実家はこの合宿所から歩いていける場所にあると聞いたところだった。
「実家かぁ。暇だし、俺もついてっていい?」
「あ、あー……はい、いいですよ」
「…………先輩相手だって、嫌なときは嫌って言っていいんだぞ?」
明らかに大翔の申し出を快く思ってない様子の紡の表情を見て、大翔は遠い目でそう言った。
すると紡は慌てたように首を振って、
「いや、そういうじゃないんです! ただ、今うちには厄介なのがいまして」
「厄介なの?」
大翔が尋ねても、紡は曖昧な笑みを返すだけだ。
「退屈はしないと思いますけど、かなり疲れるかと。それでもよければ歓迎します」
「俺は全然いいよ。ここにいても仕方ねぇし」
大翔は自らも傘を取り出し、玄関で広げる。降り注ぐ雨粒が頭上で音を立てる。
「雫、俺ちょっと出かけるな。なんかあったら携帯に電話してくれ」
「うん、わかった。気をつけてね。いってらっしゃい」
今の会話なんか夫婦みたいだな、と大翔は意味もなく顔をにやけさせる。
そして紡に案内してもらいながら、徒歩で彼の家を目指し始めたその矢先。
「お前――なにしてんの?」
見知った一人の少年が、道路沿いに植えられた樹木の下で、傘をさして立っていた。よく見ると、その彼の手にはカエルが乗っている。
「――雨の音聞いてた」
硲下である。彼はまったくの無表情で、雨に濡れる街並みを眺めていた。
「暇ならお前も行かねぇか? 紡ん家」
「……いいの?」
質問を向けたのは紡にだ。
「はい、もちろんです」
「大翔も行くの?」
「俺が誘ってんだ。当たり前だろ」
「……じゃあ行く」
そんなわけで今度は三人並んで歩みを進めていく。