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Run&Gun&  作者: 楽土 毅
第一章 風は吹けども
3/119

 今日大翔たちが臨むのは県大会の準決勝だ。それに勝てばさらに決勝があり、負けたとしても三位決定戦が待ち受けている。


 そして今日の準決勝で当たる相手は、春に徳島を制した雑賀東(さいがひがし)高校。

 今年はこの雑賀東の一強だと言われ、全国へと駒を進めるのは間違いなくこのチームだとも言われていた。

 この度四強に残った残りの矢継早(やつぎばや)農業高校、月見酒高校、そして大翔たち風見鶏高校も、ここまで勝ち進んできただけあって底力のあるいいチーム揃いだが、それでも雑賀東を前にしてはその実力も霞んでしまう。前回大会――春の大会の決勝戦で、雑賀東は月見酒高校に三十点以上の点差をつけて大勝した。他のチームの誰もが心の奥底では、全国への道を半ば諦めてしまっていた。


 しかし、今大会は少し事情が違った。

 雑賀東の主力の一人が怪我をしてしまったのだ。


 その怪我により、その選手は今大会での試合出場はもう無いとされている。これは大翔たちにとって、絶望色の闇に降り注いだ一片の希望の光だった。



「あ、女子がアップしてる」


 その声の主である修の視線の先を追ってみると、会場の傍の広場でお揃いの練習着を着た、とある女子チームが試合前のウォーミングアップをしていた。


 で、そのとある女子チームというのが、大翔たちと同じ風見鶏高校の女子チームだったりする。


(しずく)ちゃんもいるぜ。おい大翔、なんか言ってやれよ」

「え、な、なんで俺が」


 不意に大翔へと視線が集まる。全員がニタっという悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


「みなまで言わす気か。これから試合なんだから一言くらい――」

「いーや、絶対ヤダ」

「つまんねー」


 風見鶏女子も大翔たち男子チーム同様、準決勝まで上り詰めてきていた。

 しかも彼女らには決勝へと勝ち進める可能性も、少なくとも男子よりは十分にある。恐らくモチベーションもかなり高いはずである。


「いいじゃないか、そっとしといてやれ。どうせここに来る前に家でいろいろやってきたに決まってんだ。コイツはおぼこっぽく見えて、やるべきことはやってんの」


 言われ、大翔は目を白黒させる。声が人知れず上擦る。


「な、なななな何言ってんだよ、あいつは俺の従妹だぞ!」

「おやおやぁ大翔さん、お顔が赤いですぞ?」

「こ、これは暑いからだよ! すんません修のお父様! 恐縮ながらクーラーをつけて頂いてもよろしいでしょうか!」


 そうやって頼んでみるけれど、肝心の修の父親は、ニタニタと粘っこい笑みを浮かべているだけだった。


 もうなんか色々と筒抜けになっているご様子。

 大翔はなるべく雫――天野雫たち女子チームのいる方に視線を向けないようにした。


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