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Run&Gun&  作者: 楽土 毅
第四章 rack&pinion
102/119

2-40

  *


 選手交代だ。木ノ葉と百合ヶ丘が出て、大翔と彪流が入ってきた。

 紡は自分の心臓がとくんと跳ねるのを感じた。


 ――ついに飛永先輩と、同じコートに……


 しかし感動的な会話など交わしている暇はない。そもそもこんな感傷的な気分になっているのは紡だけで、大翔にとってはいつも通りの練習試合だろう。


 ところがなぜか大翔の方からそばに寄ってきて、耳元で(ささや)いてきた。


「俺が二番に入って、修のサポートをやる。だから紡はオフェンスに専念しろ」


 言われ、思わず大翔の顔をまじまじと見つめてしまった。

 彼はニッと笑ってみせる。


「好きにやってみな。フォローは俺がやる」


 それだけ言って、大翔は自分のポジションへと走って行った。


 ――好きにやれ、フォローは俺がやる、か。今までそんなこと、言われたことなかったなぁ。


 紡は零れそうになる笑みをぐっと押し(こら)え、気合を入れ直した。ここまで言って貰っておいて、期待に応えないわけにはいかない。


 審判が笛を鳴らす。

 紡は審判からボールを受け取った。ポイントガードの修が上がってきたので、彼にスローイン。修は続いて大翔にパスを出した。その最中に逆サイドでは白峰と彪流がスクリーンアウトを使ってディフェンスをかき乱している。さきほどからシュートミス続きの白峰だが、心は折れていない。賢明にシュートチャンスを作り出そうと頑張っている。


 たとえシュートの成功率は悪くとも、相手ディフェンダーはシューターを放置することはできない。


 優れたシューターは、一度シュートを決め始めると、とたんに外さなくなるケースが多々あるからだ。このまま調子を上げさせないためにも、白峰にはしっかりとしたマークマンが張り付くことだろう。


 得点源の木ノ葉と百合ヶ丘が抜けてしまった今、相手の守備には余裕が見える。あの二人がいないのなら、俺たちにもなんとかなるんじゃないかと。そう思われていることだろう。


 ――なめるな。


 二年もの間忘れていた、フォワード魂とでも言えばいいのか。絶対に点を取ってやるという、不屈の熱意が再燃する。体は勝手に動いた。


 フリースローライン付近に立った彪流にボールが渡る。しかし守備の壁は厚かった。彪流はたまらずトップの修にボールを返投。


 その刹那、射るような視線が修から飛んできた。

 フォワードとしての勘が叫んだ。


 ――……来るっ!


 外に出る素振りで紡のマークマンをいったんゴールから離れる方向に引きずり出し、そこから一気にゴール方向へと駆け上がる。その絶妙のタイミングで、修から弾丸のようなパスが飛んできた。


 全身から汗が噴き出るような感覚がした。

 電流かもしれない。


 一瞬のアイコンタクトが通じ、以心伝心、自分の要求通りのパスが飛んでくるのがこんなにも気持ちいいものだったなんて。


 受け取ったボールは手の内で生き物ように動いた。なんて弾圧だ。意識なしではレシーブも覚束ない。しかしそのあまりの弾速に相手守備陣も慌てていた。


 ドリブルなど必要ない。ゴールはすぐそこだ。

 紡はそのままレイアップでシュートを決めた。


 呆気ない。こんなにも簡単に点が取れてしまうなんて。


 いや違う。これは修の力が、他のチームメイトの力があったから決められたシュートだ。


 ――ああ……そうか。


 一人で点を取るのは大変だった。誰のフォローもない。そのことにすっかり慣れてしまっていた。


 ――誰かの力を借りれば、こんなにも簡単に点が取れるんだ。


 紡はチームメイトの存在の偉大さを知った。

 そして守備に戻る途中、修に背中を叩かれる。


「いい動きだ。どんどんパス出すからな。頼むぜ」


「はい!」


 試合はまだ始まったばかりだ。

 自分はこれから、本当の意味で風高のチームの一員になるのだ。


一つ前の「2-39」、同じ話を連投してしまっておりました。失礼しました…

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